港のヒメゴト(コナン&キッド)
※映画『世紀末の魔術師』より場面引用の軽~い妄想パラレルです(汗)。
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スケボーから飛び降りる。
お宝の箱は埠頭に落ちていた。
すぐ脇には傷付いて飛べなくなった白い鳩と、割れたモノクル────。
鳩をハンカチにくるみ、オレは辺りを見回した。
キッドの姿がない。
まさか撃たれて海に墜ちたんじゃないだろうな…?
「!」
視界の隅を、何かが掠めた。
「待てっ!」
キッドか? 無事だったのか!?
2ブロック先の角まで走って、いったん止まる。そうっと先を覗き込んだ。
「…………」
息を吐く。何もない。
誰もいなかった。
なあんだ。ガク。
「おかしいな。何か動いたと思ったんだけど…、わあっ?」
ぱっと両脇に手を入れられ、高く持ち上げられた。
「イナイイナイ、ばぁ~っ!」
「だ、誰だっ!キッドか?! ふざけんな、てめえ!」
「お子様のくせに口が悪いねえ」
「うるせっ、降ろせ!!」
背中向きに持ち上げられて、ジタバタしながら確かめようとするが、キャップを被って黒い服を着ていることしか判らない。
「おっと探偵くん、振り向くとロクな事になんねえぜ」
「脅す気か。素顔なんだな、キッド」
「まあね。見たろ、モノクル。まさかこんなとこで狙撃してくるとはなぁ」
「何者だ、さっきのは」
「俺が訊きたいよ。探偵くんに依頼するぜ。俺を撃ちやがって、大事な鳩に怪我させたヤツを、とっ捕まえてくれ」
「うわっ」
放り投げられた。空中でくるりと体を返した瞬間、オレをトランプ銃で狙う黒衣の少年の姿が目に飛び込む。だが、腕時計型麻酔銃を構える余裕はなかった。
────キッド…!?
パシュ。
キッドが放った麻酔の煙幕に撒かれ、オレは目を閉じた。
どさり。アスファルトに叩きつけられる前に、オレは抱き留められた。少年の腕に。
怪盗、キッド…。
懸命に目を開いて顔を確かめようとするが、視界がどんどんぼやけて見えなくなる。
チクショ……ずりぃぞ、キッド…。
オレを見下ろす少年のシルエットと、波止場の光を映して光る大きな瞳だけ。
それだけ憶えるのが、精一杯だった。
やれやれ。
油断も隙もねーな、探偵くん。どうせなら海に墜ちたと見せかけて、このあと動きやすくしようと思ったのに。
…てか、俺が自分で姿を現しちゃったのか。
なんでかな。
気になるんだ。小さいくせに、やたら鋭い眼差しの、この探偵くんが。
俺は小さな探偵を膝に乗せたまま、モノクルを拾い上げた。
探偵くんのポケットから携帯電話を拝借し、履歴を見て服部平次にコールした。
すぐに繋がる。
『もしもしっ、工藤か?! キッドはどないしたっ』
「…………」
工藤。江戸川コナンの携帯からの着信に…?
「初めまして。西の高校生探偵・服部平次くんですね」
『な、なんや…?! まさか、おまえキッドか?! 工藤…いや、メガネのちびはどないした!!』
「少々眠ってもらいましたが無事ですよ。それより至急港のXX倉庫まで来て下さい。そこにチビ探偵くんがいますから。頼みましたよ」
待たんかい、コラ! と叫んでる服部の声を聞きながら、俺は電話を切った。
腕の中で眠っている小さな探偵を見つめる。
まさか────これが工藤…?
この小さな探偵くんが、時計台で俺の邪魔をした〝東の名探偵・工藤新一〟だというのか。
パトカーのサイレンが聞こえてきた。服部がさっそく警察に連絡したのだろう。長居は無用だ。
すやすや眠る幼い横顔に、俺はそっとキスをした。探偵くんの寝顔があまりに可愛いかったから。
俺はお宝の横に探偵くんをそっと下ろした。
またな、探偵くん。お宝と鳩はいったん預けるぜ。大事に扱ってくれよ…。勝負はこれから。それと、さっきの俺の依頼、忘れんなよな。
俺が渡したヒント、君なら気付いてくれるだろう。
〝世紀末の魔術師〟
このワードが謎の鍵となる事を────。
20130219
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※ひとりごと的いいわけなあとがき
ひーすみません(+_+)。だってだって、映画の中だと撃たれた後は変装してばかりでキッド様のお姿が見られないんですもんっ、欲求不満になりますよ~!
映画版でキッド様がコナンくん=工藤新一と知ったのが、この『世紀末の魔術師』だというのが定説らしいので、物語前半のこの港のシーンでは、まだキッド様がコナンくんの正体を知らない感じにしておきました。そして〝名探偵〟ではなく〝探偵くん〟と呼ばせてみました!
これ以後対決を繰り返し、やがて愛を込めて〝名探偵〟と呼ぶようになるのねえ…うっとり。はっ、また妄想入っちゃった~(^^;)。
というわけで、まとまりませんが本日はこれにて…(*_*;
次こそ久しぶり?に、新快いちゃラブ・めちゃ甘を書きたいなーと思ってます♪
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