白衣でドッキリ《2/2》
※タイトル変でスミマセン(^^;)。
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「名探偵、意外とちゃんと小学一年生してんのな」
聞き覚えのある声。固まるオレの背中でポン!と音が弾けた。
漂う薄紫の煙とラベンダーの香り…これって、ま…まさかっ!!?
くるりと椅子が回される。
そこにいたのは白衣の女医先生じゃなかった。白衣は白衣でも────
「か…、か、怪盗キッド!!」
モノクルの飾りを揺らし、キッドが笑う。
「かわいいねぇ名探偵。このままずっとお医者さんごっこしてたいよ」
「なっ、なんで、てめえが?!」
「しい~静かに。誰かに見つかったら大変だろ、怪盗と二人きりなんて」
人差し指を唇に当て、キッドが囁く。
「ふざけんな! いったいいつから変装してたんだよ!?」
「初めからさ。校医の爺ちゃんが今日は急用で休むって聞いたから。それにしてもたまんないね~。名探偵の肌、柔らかくってスベスベ♪」
ええ? 最初から? それじゃ…昼間の健診の時もコイツだったの!?
「ひゃっ! よせ、バカッ」
キッドの指が脇腹をなぞる。呆気にとられて捲り上げたままだったシャツを、オレは慌てて引っ張りおろした。
「ちえっ」
キッドが白い手袋を取り出して両手にはめる。
ふぁさっ。
?
〝ちゅっ〟
・・・エッ。
なに…? いまの。
どくん、と鼓動が膨らんだ。
衣擦れの音がして…キッドが床に跪いたと思ったら、一瞬目の前が暗くなって。
キッドの睫毛が近付いて……唇に、柔らかな…何かが────。
「うわあ」
仰け反って椅子から落ちそうになり、オレは素早く伸びたキッドの両手に支えられた。
「じっとして、名探偵」
「キ、キッド?」
「不思議だな。ここが小学校だからかな。いつもの手強い名探偵とは思えないよ。…可愛くて、放せない」
「………」
カワイイだと? フザケンナ!
言い返そうと思うのに、声が出ない。
ドキドキ脈打つ体を包むように抱き締められて…温かくて、守られているようで、言いようのない安堵感を覚えてしまう…。
とか言ってる場合じゃないっ!
「こ、こらキッド! 帝丹小に何しに来たんだ!?」
「決まってるだろ」
「なにが!」
「名探偵を奪いにきたのさ」
「はあ?」
意味が判らない。
「オレを誘拐する気か!?」
「違うよ。声が大きいし。口塞いじゃうよ? チューッてしちゃうよ?」
「えええ?!」
口調とは裏腹にキッドの瞳はやたら真っ直ぐで、深い色をして。オレをじっと見詰めている。
熱い。バクバクする。
心臓がもたね~っ(>_<);;!
コンコン。────ノックの音。
『あのー小林です。入りますよ~』
オレはハッと我に返った。扉が開く。
「こ、小林先生っ!」
「コナンくん、いるの? 失礼しま~す」
衝立の向こうから、小林先生がひょいと顔を出した。
「あらあ、熱があるのね。顔が真っ赤っかよ。保健室だってみんなに聞いたから来てみたんだけど」
「あ、あの、あの、これは…っ」
「ええ、検診の時から熱っぽかったから。でもたいした事はないみたい」
あ…れ?
オレは混乱状態のまま恐る恐る前を見直した。
「無理しないでね、江戸川くん。お家に帰ったら温かくしてすぐお布団で寝るのよ」
「あ………ハイ…」
椅子に腰掛けた女医先生がにっこり笑ってオレを見ていた。
頭が完全にショートしてしまったオレは、カクカク頷くのがやっとだった。
「小林先生、ありがと。ひとりで帰れるよ」
「そう? 気をつけてね。フフフ」
「な、なあに?」
校門まで付いてきてくれた小林先生が、オレにウィンクする。
「あの女医さん、いい匂いだったわね」
「えっ」
「ラベンダーの香りかな。一日だけのピンチヒッターで男性の先生方も残念がってたわ。コナンくんもキレイな先生に診てもらって、ちょっとドキドキしちゃったんでしょ?」
「一日だけ? しばらくあの女医先生だって…」
「そう聞いてたんだけどね。校医のおじいちゃん先生から、明日は出てくるって連絡があったそうよ」
オレはランドセルをしょい直し、一人とぼとぼ下校した。
歩きながら小石を蹴飛ばす。
頬を撫でる風に、間近に感じたキッドの吐息を思い出して赤面した。
小林先生と話をする女医先生は落ち着いていて、どこから見てもちゃんとした大人の女の人だった。怪盗キッドの変装だなんて、突拍子なさ過ぎて言い出せなかったんだ。
それに────オレは気付いたんだ。
女医先生を見た時に感じたドキドキが、〝アイツ〟と出逢った時に感じたドキドキと同じだったってことに。
ぶんぶんと頭を振ると、くらくらがまた強くなった。
くそう、キッドの奴め。わざわざオレをからかいに来やがって。覚えてろ!
・・・・・・・・・・・・・・
帰って行くコナンくんの小さな背を見ながら、俺はため息を付いた。
俺としたことが、舞い上がって言い損ねちまったぜ。
名探偵を奪いに…じゃなくて、〝名探偵のハートを盗みに〟って言いたかったんだよな、ホントは。
次こそちゃんと伝えて、ちゃんと盗み出すぜ、名探偵。覚悟しとけよ。
名探偵の胸に眠る光り輝く最強のダイヤモンドをな!
20140513
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※うひー。改題しようか迷いましたが、このままにしときます…(*_*;
●拍手御礼!
「朧月」「白衣でドッキリ《1/2》」「嘲弄」へ拍手ありがとうございました…!
[12回]