moonlight 新一×快斗

アナグラム（新一＆キッド）
※『奇術愛好家殺人事件』パロのショート。新一視点。
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「あなたが〝魔法使いの弟子〟さんですか。はじめまして、僕は〝レッドへリング〟───土井塔克樹です」

階段から降りてきたのは、にこやかに笑うスラリとしたイケメンだった。さっきまではしゃいでいた園子は、彼を見るとポーッとなって蘭の後ろに隠れてしまった。

「工藤くんが熱を出したと聞いて持ってきました。これ、飲むと良いですよ。僕は医学生なので、いろいろ持ち歩くのが習慣になってしまって」

「土井塔さん、ありがとうございます。お水持ってくるね、新一」

「…蘭、園子も連れてけ」

「え、なんで？ わたしはここにいるわよ。土井塔さんがせっかく───」

「着替えんだよ。オレのハダカ見たいならいてもいいけど」


アッカンベをした園子が蘭と一緒に部屋を出て行く。

オレと二人になると、土井塔の気配が変わった。優しく穏やかな好青年〝土井塔克樹〟のものから、覚えのある怜悧なヤツの気配に。

「…〝レッドへリング〟か。ちょろちょろ妙な動きをしやがって」

「何のことかな。ぼくがここに来たのは死んだはずの〝イカサマ童子〟が通信し続けているのを不審に思ったからで、君たちを惑わすつもりはなかった。〝イカサマ童子〟は春井風伝のデビュー当時のステージネームだったからね」

「田中さんが春井風伝の孫娘だと、知っていたのか」

「会うのは初めてだが、一目見てわかったよ。しかし、まさか彼女が殺人を計画していたとは」

「感情的な性質は、時に推理を妨げ真実を遠ざける…」

「しかたないさ。ぼくは探偵ではないし、工藤くんは熱を出していた。未遂で思いとどまらせることが出来たのは、蘭さんや園子さんの明るさが思い詰めていた田中さんの心を癒やしたからだろう」

オレがベッドから起き上がろうとすると、土井塔は手でオレの肩をそっと抑えた。

「風邪薬は本物だよ。それを飲んでおとなしくしていたまえ。朝になれば捜査一課の刑事たちが駆け付けるだろう」

爆音が響いていた。近くにヘリがいる。

「それにしても、ぼくのこと見抜いていたとはさすがだね。探偵くん」

「気付くのが少し遅かったがな…。簡単なアナグラムだ。〝ど・い・と・う・か・つ・き〟───」


窓が開き、外の冷気が中に舞い込む。
怪盗の姿に戻りベランダに出たヤツの白いマントが風に大きく膨らんだ。

部屋に戻ってきた蘭と園子が、あっと驚く。

「か、怪盗キッド！ どうしてここに？！」

「また逢いましょう、お嬢さん方。そして名探偵。世紀末を告げる鐘の音が鳴り止まぬうちに……」


怪盗が飛び去ってしまったあとも、園子の興奮はなかなか収まらなかった。
オレは蘭が持ってきた水でヤツに渡された薬を飲んで、布団にもぐりなおした。
実はオレも園子に負けないくらい興奮していたのだ。

『そっかあ～ド・イ・ト・ウ・カ・ツ・キを並べ替えると、カイトウキッドになるんだね！』と蘭と園子が騒ぐ声を聞きながら、オレは目を閉じた。

ヤツの言うとおりだ。悲しい殺人事件を止めることが出来たのは、オレがここへ戻ったからでも、キッドが牽制したからでもない。

マジックを素直に楽しむ心を持った蘭と園子が、怒りに囚われていた田中さんを救ったのだ。
心を動かす感動という〝アナグラム〟で…。





20141210
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※〝世紀末～〟のセリフはカッコイイのでそのまま引用です。『新一＋イケメン土井塔克樹さん＋殺人未遂』の超ざっくり短縮省略パラレルでした。 お粗末様でした～(*_*;

★拍手御礼
「Love cuffs」「未明の道」「ルパン三世vs怪盗キッド」「ぶるーぱろっと」「リバース」へ、拍手ありがとうございました(^^)/


   

[7回]