拘束LOVE《3/3》(新一×キッド)R18
──────────────────
謎めいた怪盗。
その衣装を剥ぎ取ってしまえば、密かに抱いてきた一種の憧憬は消える──と思っていた。
だが妄想を現実にしてもなお怪盗は繊細で美しく、オレを魅了してやまない。
オレは怪盗を手に入れるために計画を立てた。少しずつ距離を縮め、言葉を交わし。近付いた一瞬の隙を逃さず口付けた。
最初は吃驚した様子の怪盗だったが、クールに微笑みオレの無礼を赦してくれた。そして某事件の脱出の際にはオレを抱きかかえ、空を飛んでくれた…。
オレの妄想は膨らんだ。
モノクルに半分隠れた蒼い瞳は間近で見ると無垢と表現したくなるほど煌めいて、並んで見る笑顔は時にハッとするほど幼い。
酷い事件を目の当たりにし、謎解きの過程で思い知る荒んだ人間の性(さが)にオレが少しずつ心を壊してきたのとは逆に、怪盗は常にピーターパンのように軽やかで明るかった。
憧憬というより羨望、あるいは嫉妬に近いのだろう。怪盗に対する覚えたことのない感情が内からオレを浸蝕していった。
だからすべて剥いで確かめることにしたのだ。
解けない謎はない。
何処までも暴いて、露わにし、追い詰めて、堪えきれなくなった怪盗が最後に現す真の貌を───それを覗き見る瞬間をオレは待っている。
「…い、痛たっ!」
胸の両方の突起をソレ用のクリップで挟んで引っ張ると、怪盗は顔を歪めて悲鳴を上げた。
「気持ちイイか」
「耳が遠いんですか…ッ、イタイって言ってるんです!」
「声が掠れてきたな。なんか飲ませてやろう。水より白湯がいいかな」
口移しで白湯を飲ませてやると、細い喉がコクリと動き、鎖骨が汗で光った。
スレンダーでしなやかな怪盗の肢体は目の保養に良いことこの上ない。扇情的な拘束具が敏感な素肌を彩り、見ているだけで溜息が出てしまう。
一度イかせた後は央芯も専用具で拘束し、後ろにはまた違う調教用電動具を挿してあるから、感じれば感じるほど疼くだろう。
「あ、…ああっ」
「ふ。ずっと見ていたいが、さすがにオレも保たなくなってきた。そんな色っぽい声出されちゃな」
「名探偵…、じゃなくて、実はヤクザでしょう!ヤクザ!」
「はっはは」
罵る言葉もこの期に及んで妙にコミカルで可愛い。口の拘束具も用意してあるが、勿体なくてこれでは使えない。
「アアッ…」
戒めた上から芯を嬲る。ギシギシと両手の拘束具を鳴らして怪盗が切なく首を振る。堪らない眺めだ。
「やめて…、触ら…ないでっ…!」
「そろそろいくか」
オレ自身で怪盗を貫く。
もっと時間をかけるつもりだったが残念ながらもう保たない。すでに自分でも分かるほど呼吸が速くなっている。
「十分ほぐしたから痛くはないはずだ。そのまま、力抜いとけよ」
「え…っ? あ!」
半分朦朧としていた怪盗が閉じていた目を瞬き、一瞬体を硬直させた。しかしすぐ息を吐き出すとオレが腿を担いで両脚の間に深く陣取るのを大人しく黙って堪えている。
「ちょっとくらい抵抗しろよ」
「こんなカッコで抵抗したって、名探偵がヨロコブだけでしょうが!」
「よく分かってるな」
白い内腿に噛みつくようにキスをした。
朱くなった痕が気に入ったので、もう片方の腿にも同じ様にキスを施す。
怪盗の肌は熱く細かく震え、胸元を摘まんだ両方のクリップに繋がる細い鎖は呼吸の度に肌の上で蠢いて、さらに異様な感覚を呼び覚ます。
顔を近付け、怪盗の瞳を覗き込んだ。
オレを見上げる眦(まなじり)から涙が伝い落ちる。
しかしこれだけ弄んでいても蒼い瞳の透き通るような煌めきは変わらない。
〝可愛さ余って憎さ百倍〟…そんな台詞が古いミステリ小説にあったのを思い出す。
愛おしさが募るほどそれを打ち壊したくなる理不尽な人の感情。その不条理を解読するのは不可能なのか。
それとも、今夜オレはオレ自身が抱える不条理を解くとこができるのか。
「こっちを見ろ、キッド。いくぜ」
「………」
目が合ったのを合図に、オレは勢い良く怪盗の体を最深まで貫き通した。
十分に熱が満ち、うねりに包み込まれる感覚。
仰け反った怪盗の悲鳴と、胸から伝う細い鎖がシャラシャラと動く音、そしてギシギシと鳴る革の拘束具が奏でる三重奏が素晴らしくハモっていた。
たぶん大声で叫んだと思う。何度も。
散々嬲られた箇所は熱くて熱くて堪らなかったし、前は前で封じられているから苦しくて文字通り悶えずにはいられなかった。
そこへ深く強く荒ぶるような楔を一気に穿たれたのだ。名探偵と結ばれたその衝撃に、俺は恥辱よりもハッキリと歓びを憶えていた。
こんな酷い目に遭わされてるのに、自分を嬲り倒している相手への好意を自覚するなんて…。
これじゃ本当に本当の〝masochist〟だ。
名探偵がドが付く超〝sadist〟なのは間違いないけど!!
最深部への激しい打撃に悲鳴をあげながら、頬にかかる吐息に気付いて俺はうっすら目を開けた。
吃驚するほど近くに名探偵の瞳があった。強い意志を持つ強い光が眩しくてすぐにまた目を閉じる。
「あっ!…あっ、ああっ、アアアッ!」
名探偵の勢いは凄まじく、衝かれる度に脳天から足の指先まで痺れが走る。
焦らされ続けた体の奥が名探偵によって埋められ尽くす充足感。
苦しくて、切なくて。もがき足りないほど感じている。
できるなら俺も名探偵を抱き締めたかった。自分を覆い尽くし、躍動している名探偵を。
…すると願いが通じたのか、不意に肩が軽くなった。
手の拘束が外れたのだ。右も、左も。
痺れて痛くてなかなか動かせなかったが、頑張って腕を回し、俺は名探偵の背中に掌を置いた。
少しだけ力を入れて、一緒に揺れている名探偵の背中をギュッと抱いた。
すると突然名探偵の動きが止まった。
奥はジンジンと熟れたように痺れ、前は戒めがきつくてズキンズキンと脈打っている。
繋がったまま名探偵が上体を起こす。手が離れ、パタリと体の脇に落ちた。拘束が外れていることに気付かれたと思い、次に何をされるか怖くて俺は顔を背けた。
「キッド」
「………」
「凄く良いぜ。こっちを向けよ」
優しい声。
していることは最低なのに、良いと褒められて素直に嬉しくなる馬鹿な俺。
怖々顔を向けると、名探偵は微笑んでいた。だが悪魔のように狡猾な名探偵が今浮かべている微笑みは、どこか哀しげにも見えた。
説明の付かない愛おしさが込み上げてきて苦しくなる。名探偵のこんな笑顔を知るのは自分だけなのだと悟ったから。
ああ…痺れる。
どうしようもなく、感じている。
名探偵に見つめられている。
恥ずかしい姿をこれでもかと晒している。
こんな目に遭わされても、好きなんだ。
状況なんか、もうどうでもいい。
(…?)
じわり、と前の感覚が変わった。
戒めが解かれたのだ。
ちら見すると可哀相に俺の分身はきつく縛られていたせいで赤いミミズ腫れが交錯していた。
そして圧迫され続けていたためか、フリーになっても爆ぜることが出来ない。
名探偵はまた白い歯を見せると透明な滴が伝う俺に手を添え、もう片方の手先で先端をぐるぐると撫で回した。
閃光が目を覆った。
チカチカと炸裂して、気が遠くなる。
達したのだと、数秒遅れで気が付いた。
こんなに激しい感覚はこの先もう得られないかも──というくらい激しい快感だった。
どうしてくれる。
やっぱりヤクザだ。
名探偵ヤクザ。
経験浅い(てかほぼない)俺を、こんな滅茶苦茶になるまで責めやがって。
「…アッ、アア!」
俺がぐったり体をベッドに沈めて呼吸もままならず喘いでいるのに、名探偵はまるで意に介さず奥への打撃を再開した。
名探偵、まだやるかっ。
もう容赦がない。
言葉もなく、ただただ荒々しく、衝いて衝いて衝かれまくる。
泣いてるんだか叫んでるんだか自分でも判らない。
判っているのは、秘かな深い喪失感を名探偵がどれだけ埋めたがっているかということ。
名探偵が俺に望むものが僅かだが解った気がしていた。
気がしただけかも…だけど。
一晩中、目が覚めると穿たれ、気が付くと弄ばれていた。
怪しい機材が次から次へと出てきて、麻痺しないのが不思議なくらい俺は立て続けにイってしまった。
手の拘束は外れていたが、逃げ出す気力はとっくになくしていた。
窓の外が白む頃、疲れ切って体を縮こませた俺の肩を名探偵は優しく抱いて───泣けるくらい静かに慈しむようなキスをしてくれた。
二度と経験したくない、でも絶対フラッシュバックして俺を苦しめるだろう恐ろしく激しすぎる一夜の経験だった。
・・・ ・・・・ ・・・
目が覚めると一人だった。
昨夜の客間の、昨夜のままのヤバいベッド。
どんだけ暴れたのかというほどシーツがクシャクシャに乱れている。
上着もシャツも脱がされて素っ裸だったが、嵌められていた拘束具は全部外されていた。
辺りを伺う。名探偵の気配はない。
今なら逃げられる…。
(わっ)
ズデッ。やっぱり転んだ。
下肢がまだ痺れてて感覚が鈍い。膝がガクガクしたが、ベッドと壁に縋って何とか体を起こした。
「起きられたのか」
「うわっ」
ガチャと音がして名探偵が部屋に入ってきた。
バスローブ姿に洗い立ての髪から湯気が昇っている。
「あーーっズルイ!自分だけ風呂入ってさっぱりしてる!」
「なんだよ。誘ったのに動けないからいいって自分で断ったんだろ」
「帰ります」
「風呂入っていけよ。いまちょうどいい湯だぜ」
「…え…、っと…」
お風呂には入りたい。だけど。
「出たらまたなんか仕掛けて待ってるんじゃないでしょうね」
シーツをひっつかんで体に巻き付けた。一歩脚を踏み出し、歩けることを確認してホッとする。
『もう今日は解放してやるよ』という名探偵の言葉に半信半疑ながら気が変わらないうちにと俺はギクシャクしながら風呂へと向かった。
背後で名探偵が嬉しそうに笑っているのに気付かず…。
風呂で温まり身も心も清めた俺は、脱衣所に立った。
しかし持ってきたはずの怪盗の衣装一式がない。
脱衣かごに入っていたのは名探偵の制服。
なんで…??!
部屋に戻りたくなかったが怪盗の衣装を取り返さなければならない。
嫌な予感は山盛りしたが、どんな罠があっても冷静に対処すればなんとかなると自分を鼓舞し、俺は客間に戻った。
もの凄くドキドキする。怖いからドキドキしてるのであって、ワクワクドキドキしているわけでは決してない。
えいっと扉を開けた。
「………」
カーテンが開けられ陽が高く昇っているのが判る。時間の感覚が完全に狂ってしまっているが、どうやら午後にさしかかっているようだ。
気配がないのでそのまま部屋に足を踏み入れた。ベッドが綺麗に整えられている。ヤバイ空気は完全に払拭され、何事も無かったかのように静謐な室内だった。
───バタン。
ギクッとして振り向いた。
そして俺は真っ青になった。
そこにいたのは。
「か、怪盗キッド!!!」
シルクハットに長いマント、白のスーツにモノクルを付け、クールに微笑む怪盗キッド───の衣装を身に着けた、アクマでやくざな名探偵はその場でくるりと一回転してみせた。
「これはハマるな! Ladies&Gentlemen!!」
「ちょっ、何してんですか名探偵っ、おふざけが過ぎます!」
「いいだろ、一度着てみたかったんだコレ♪」
「いい加減にして下さい!早く脱いで!!」
「オレが怪盗キッドで、おまえが工藤新一なんだぞ、いま」
「は?」
「鏡、見ろよ」
「………うーん・・・」
不思議な感覚。
隣にいるのは名探偵なのに怪盗キッド。
そして俺は怪盗なのに工藤新一。
「楽しいな! それじゃ交代だ。このカッコでまた始めるぞ!」
「ええ?! またって、またぁ??」
そうだと肯くキッドの姿の名探偵の唇にケチャップが付いていた。またまたズルイ。自分だけ腹拵えしてる!
「おまえの分もちゃんとあるよ。だけどその前に軽くやろう。今度は逆だから」
いろいろ納得いかないが〝逆〟という言葉に俺は(ん?)となった。
そうか…じゃあ今度は俺が怪盗の姿の名探偵をがんがんヤれるわけだ。それならやってやろうじゃないかと向き直ったらガチャリと金属音がした。手首が冷たい。手錠だ。
「え…? えええっ(@@);??」
「今度は〝怪盗〟が〝探偵〟をヤるんだよ。興奮するだろ?!」
「ちょっと待てっ、それって…また俺がヤられるってことかよ?」
怪盗の姿をした名探偵は当たり前だと肯いた。
解らない!
てか倒錯し過ぎ!
未成年には無理な世界過ぎ!!
必死に抗おうとしたけど、一晩かけて開発されて弱い所バレまくっている俺はあえなく怪盗の姿をした名探偵に組み伏せられた。
ガチャリと手錠の片方がベッドの支柱に嵌められる。
「酷い…なるべく傷付けないって最初に言ったのに」
「だって革の拘束具、途中で外しただろ」
「自然に抜けたんですよ!」
「怪盗は縄抜の訓練してるから関節が軟らかいんだろうな…だから今度はこれだ。文句言うな」
血も涙もない。
少しでも名探偵が失った何かを埋めることが出来るならと身を捧げたつもりでいた俺は、また一からヤられる立場になったのだ。酷すぎる。
「さあ、ショーの始まりだ!」
高らかに宣言する怪盗の姿をした名探偵の表情から、何故か闇の気配が消えていた。
陽が当たっているからだろうか。
俺も指をさして「真実はいつも一つ!」と言ってやろうとしたが、振り上げた手は手袋をした怪盗の姿の名探偵に阻まれた。
どちらともなく吹き出して笑いながらキスを交わすと、本当の恋人同士になったような気がした。
この手錠と空腹感がなければ。
トホホ。
食事にありつけるのは何時だろうと朧に考えたのが最後だった。
怪盗の姿とした名探偵と、名探偵の姿をした俺は、互いをこれ以上ない最適なパートナーだと心と体でより強く確かめ合うのだ。
さらなる拘束を求めて。
愛を求めて。
20180108
──────────────────
※収拾つかなくなりました(汗)。最後もう一度ヤンデレ名探偵視点にすべきところ端折ったので消化不良ですみません。まぁあまり説明臭くなっても…勢いなので (言い訳)!
キッド様、こんな年明けでごめんね~(*_*;
●拍手御礼
「確率」「名探偵参上」「除夜の鐘」「拘束LOVE1. 2」へ 拍手ありがとうございました(^_^)ノ
●拍手コメント御礼
あかね様、こきどう様、ご声援ありがとうございます。やりたい気持ち先行で終始してしまいました(-.-;) こんな新年でしたが今年もよろしくお願いします。
ぽこ様、嫌われそう~と心配してましたが「除夜の鐘」にコメントありがとうございました。こんな調子ですが(汗)細々今年も継続予定です。こちらこそよろしくお願いいたします!
[12回]