★2013-2014・新快年越しhappy-SP ラスト★
ハッピー・スウィート・ニュー・イヤー《2/3》(新一×快斗)R18
※《1-A》《1-B 》どちらを読んでもこの《2/3》につながります;;
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怪盗キッド。
月光降り注ぐ夜空を、白い翼で駆け抜ける大胆不敵な謎のマジシャン。
オレが好きになったのは、その〝怪盗キッド〟のはずだった。
オレは怪盗キッドが世に登場したパリの事件からその詳細を調べ直し、二代目と思しき現在のキッドの正体にアタリを付けた。
八年前に不慮の事故で亡くなった天才マジシャン・黒羽盗一が初代キッド。だとすれば、やはりマジシャンを目指しているというその息子〝黒羽快斗〟が二代目である可能性はかなり高い。予想より若いが、オレと同い歳なら印象として外れてはいない。
たどり着いた推論を確かめるため、オレは探りを入れに黒羽の通う江古田高校へ向かった。
しかしそこで見たのは、キッドのイメージとは大きくかけ離れた快斗の姿だった。
明るく溌剌と校庭を走り回り、大声で仲間たちとじゃれ合うような天真爛漫な素顔。キッドとは結び付けようがない。真剣に自分の推理ミスかと思ったほどだ。
帰り道の快斗を呼び止めた時、すっとオレを振り向いた快斗の眼差しに、オレはキッドを重ねた。と同時に快斗の大きな瞳に、オレはあっと言う間に惹きこまれた。
初めて覚える感情の波に浚われ、自分が快斗の元を訪れた理由を忘れた。
オレは黒羽快斗に恋をした。
それは快斗が〝怪盗キッドだから〟だとその時は思っていた。
だけど、そうじゃなかった。
キッドだから好きになったんじゃない。黒羽快斗を好きになったら、そいつが怪盗キッドだったんだ─────。
《ばん!》
音がして、いったん温まった空気がサッと冷えた。
ハッと顔を上げたら、裸の工藤が目の前に立っていた。真剣な目をして。
焦って手からシャワーヘッドを取り落とす。
ゴン、シャワワーーーッ!!
「わあ」
「なにやってんだよ」
「だ、だって、イキナリ入ってくっから…!」
「最後だ。一緒にはいろうぜ」
「……………」
工藤の言葉にちくりと胸を刺される。
ああ、そうか。
…そうだよな。
きっと工藤は俺がいつ消えるか不安だったんだろう。そしてたぶん、心を決めた。
拾ったシャワーヘッドを工藤が持って自分と俺の体に湯を浴びせかける。
バスルームがさっきまでより暑くなった。
濡れた体を寄せ合うと、肌と肌がくっついた。頬に工藤の唇が触れる。俺が顔を向けると、すぐに唇と唇が重なった。
シャワーがまたフロアに転がって、夢中でキスを交わす俺たちの頭から噴水のように降り注いだ。
「すげえ泡だな。そんなん、どこで修行した?」
洗面器で湯とボディソープを手のひら全体でかき混ぜて山盛り泡立てると、工藤がジト目で俺を見てきた。
「べつにヤバイ技じゃねーよ。エステティシャンに変装した時に」
「ホントか」
「ホントだって」
なに考えてんだ、工藤のヤツ。まぁ、〝他の業種〟でも確かに使えそうだけど。
「ほら」
両手で掬って工藤の背に泡を盛る。
「前も」
視線がつい下にいった。こっち向いて腰掛けに座り直した工藤のが上向いてる。
「・・・・」
知らん顔して流すか、フツーにしゃべったらいいのか躊躇してしまい、さらにおかしな間が出来た。
「・・・(◎◎;)っ」
うああ、フォロー不可能な気まずさ!!
「快斗。おめーもなってるぜ」
「えっ」
えっ、えっ?
えええええええええええええええええええええええええええええ、えーーーーーっっっ?!!!
「わあっ」
「わあ、じゃねえ。泡よこせ」
残りの泡を工藤が右手で掬い取り、向かい合った俺の背に腕を回して塗り付ける。
「乗って」
「え?」
「乗って。跨いで」
有無を言わせない工藤の熱を持った瞳。
きっと俺も、ビビりながらも火照った顔をしてるに違いない。
迷うより先に体が動いてしまっていた。なんかもう、熱に浮かされてる。羞恥と期待と怖れと愛おしさとがごっちゃになって。
でも嫌だとは決して思っていない。それはもちろん、相手が工藤だからだ。
腰掛けに座って浴槽に寄りかかった工藤の両脚を跨ぐように向かい合って座り込む。…なんつースタイル! めちゃめちゃ密着する。てか、当たる!
「…ひゃっ」
工藤の指先が腰から尻に滑り降りてきて、変な声が出てしまった。バスルームに反響して恥ずかしくて体が竦む。だけど熱くて。
ますます自分が変化してゆくのを自覚して、居たたまれなくて工藤にしがみついた。
何か言うかと思ったが、工藤は何も言わず俺の耳にちゅ、とキスをした。
湯に浸かって温まり柔らかくなった肌はボディソープの泡のおかげでするする滑って、工藤の指先はびっくりするほど抵抗なく俺の奥へと忍び込んできた。
『────うあ!』
声に出したらエラい大声がバスルームに反響しただろう。かろうじて呑み込んだが、工藤の中指だか人差し指だかが俺の中で蠢く感覚に、肌が一気に粟立つ。
「やっ…、ばか、動かすな…!」
懸命に抗議するが、さらにぐっと力が加えられて、俺は工藤にしがみついたまま反射的に伸び上がるように背を反らした。それが余計に工藤を締め付けている感覚を強めて、どうしようもなくなる。
力を抜いて身を任せれば、工藤はさらに俺を拓こうと指を蠢かせるだろう。だけどこのままなのもつらい。
「く、工藤、まっ…、待って。俺、やっぱ無理…!」
「ふふ」
─────エ?
俺が涙目でギブを訴えているのに、なんという嬉しそうな笑み! かくんと力が抜ける。じわっと下肢が痺れて、奥の感覚がさらに深まる。
工藤の指が、たぶん二つに増えていた。
「く、工藤っ」
「もっと…力抜いて」
「む、む、」無理だって言ってんだろーっ!!
「快斗…」
耳に付けられた工藤の唇から吐息が吹き込まれる。ぞくんぞくんと震えが走り、俺は工藤に縋り付いた。『しがみつく』から『すがりつく』に進展してる。
もーだめだ。受け入れるっきゃない。
だって、俺も。
俺も工藤と繋がりたいと、心の底では思ってるんだから。
抗えるわけない。
俺の好きな。名探偵…。
「く、ど…、う────!!」
ハッピー・スウィート・ニュー・イヤー《3/3》へつづく
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※回数表記 変則的ですが《1-A》《1-B 》どちらを読んでもこの《2/3》につながるというワケで…(@@);;
●拍手御礼
「ハッピー・スウィート・ニュー・イヤー《1-A・1-B》」へ、拍手ありがとうございました!!
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