moonlight 新一×快斗

邪魔（新一×快斗）
※お手軽ショート、昴さん視点
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喧嘩するほど仲が良い、とはよく耳にする言葉だ。

私と零くんの事ではない。

高校生の彼ら。工藤新一と黒羽快斗、あの二人の事だ。

この家に厄介になり始め、初めて会った黒羽くんは背格好から顔立ちまでボウヤ(新一くん)にそっくりで、ついボウヤ本人と間違えて話し掛けてしまった。

だが一言言葉を交わしたら、漠然とだがはっきりと──妙な表現ではあるが──別人だということが解った。

漠然と。

どう言えばいいのだろう。

工藤くんは探偵だ。
真実を追い求めることに躊躇がない。てらいなく輝く瞳と真っ直ぐな眼差し。常に先を見ながらも物事を省みることも怠らない。

一方、黒羽くんという少年は。
一見は天真爛漫な普通の男子高校生そのものだ。しかし観察していると、ふと黙した瞬間に垣間覗く靄(もや)のような曖昧さを覚える。
そもそも素性がはっきりしない。
いや、もちろん黒羽快斗という名が本名で、彼が江古田高校二年生であるのは間違いないのだろうが…おそらく、それだけではない。

二人はどうして出会ったのだろう。

彼は、もしかしたら。

ドア越しだが、私も声を聞いたことがある。

もしかしたら…工藤くんはすでに捕まえていたのか？

あの噂の、神出鬼没の───。




〝ガタン！ バン！ ドタドタ！〟




私の思惑は突然響いた物音で吹き飛んだ。

エントランスの方からだ。
家主のご帰還か。
この騒々しさからすると一人ではない。誰かを連れてきたようだ。


───いいだろ、たまにはさせてくれたって！

───やだね。オレはおまえを見下ろすのが好きなんだ。

───ヒデェ！ なんだよそれ。俺だって傲慢なクソ探偵を見下ろしてやりてーよ！

───だめだ。この話はおしまい。快斗、声でか過ぎ。

───工藤がズリィからだろ！ 勝手に話終わりにすん

「な！！」

ガチャッと音がして制服姿の二人（ボウヤと黒羽くん）がリビングになだれ込んできた。

諍いのように聞こえたが、姿を見ると見つめ合い笑い合いわちゃわちゃと楽しげにくっつき合って、私が大変なお邪魔虫であるのが一目瞭然という状況だった。
二人は私に気付き、互いの服を掴んだまま立ち尽くして固まっている。

「あっ…！ 昴さん、ここにいたの」

真っ赤になった名探偵も可愛らしい。

「出掛けるところですよ。今夜は懐かしい映画のレイトショーを観るので戻りません。失礼、ではごゆっくり」

リビングのドアのところで二人と擦れ違う。チラと見ると黒羽くんも赤い顔をしていた。
赤い顔をしながら、小さく私にベーッをした。

黒羽くんの小さな舌先を目に焼き付け、私は工藤邸を後にした。



さて、どうするか。
つい適当な事を言ってそのまま出てきてしまったが、ポケットにはスマホしかない。

こんなときは、とりあえずポアロに行くに限る。
零くんのシフトはどうだったか。突発的な事件が起こらないことを祈りながら、私は空を見上げた。
月と金星と木星が宵待空に浮かんでいた。





20180619
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※これもカテゴリに少々困りましたが、一応通常新快枠にて(汗)。


●拍手御礼
「嘘と嫉妬」「密室」、カテゴリ★インターセプト 各話へ 拍手ありがとうございました(^_^)ﾉ

拍手コメント御礼●新快派ぽこ様
御礼が遅くなり失礼しました。毎回ぽこ様の鋭い先読みにヤヴァイ！となるので、『密室』では後編をupするまで、あえてぽこ様のコメントを読まずにいたんですよ～。up後にすぐ読ませていただいて、その手もあったか…などと反省(？)したりニヤニヤしたりしておりました！

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