moonlight 新一×快斗

punishment day《2/4》（新一×快斗）
※新一視点より
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怪盗をこの手で捕まえた──と思ったのは、たぶんオレの一方的で一時的な満足感による錯覚だったんだろう。

小さかったコナンから、やっと元の高校生の姿に戻ってオレは晴れて〝怪盗を手に入れた〟と思っていた。

正体を突き止め、想いを告げ、その心をも手に入れたと──思っていたんだ。

だが。

オレの想いなんか、当の快斗はドコ吹く風で。

オレがどれだけ懸命になって、どんなに必死になって快斗を見つけ出し、たどり着いたか。その意味なんて少しも汲もうとしやがらない。

真面目に伝えようとしてんのに、オレの言葉はいつもはぐらかされて〝冗談〟にされちまう。

目を離せば消える。

呼んでも来ない。

来たと思ったらすぐ逃げる。

あの夜の──探偵と怪盗としての、あの邂逅の瞬間から──ずっとオレが溜め込んできた想いを伝えるためには。

本当に快斗に届かせるためには、ただ抱き締めるだけじゃダメなんだ。
快斗を捕まえたい。
快斗の真実を。







「工藤、あの…、ほ、ほんと、言うこと聞くから。部屋に、部屋に行こうよ！」

両手の手錠の片方をそれぞれ階段の手摺に繋がれながら、俺は真剣に工藤にお願いした。

本気で逃げようと思えば、本当に嫌だったら、逃げられた。
でも俺はビビりながらもどこかで工藤を甘く見てたんだ。
好きなんだから、素直になれば許してくれるんじゃないかって。

だって、俺たち、こう見えても〝恋人同士〟なんだから。


工藤に告られた時は、ポーカーフェイスを保つのがシンドイほどマジで嬉しかった。

俺も高校生に戻った工藤に逢いたかったんだ、ずっと。
ホントは俺も名探偵のことが好きだったんだって…言いたかった。

だけど照れくさくて。苦手なんだよ、本音言うのって。

つい、目が合うと逸らしちゃうんだ。

面と向かって話しかけられると、顔赤くなるのが恥ずかしくて。

つい、煙幕張っちゃったり。

煙幕張ると、怪盗の性(さが)で、つい逃げ出しちゃう。

ふざけてるんじゃないんだ。

工藤の側から離れられなくなるのが怖いんだ…。

ずっと独りだったから。

工藤の側にいることに慣れるのが、怖い。

好きすぎて、怖いって思っちゃうんだ。

ゾッコンなのは俺の方なのに、それを知られるのが怖い。

今だって、実はかなりドキドキしてるんだ。
工藤が真剣に俺を捕まえるって言ってくれるの、嫌なわけないじゃん。

さすがに今日のコレは怖すぎだけど───。


「…あっ！」


乱暴にシャツを引っ張られて、ビリッと音がした。

思わず声をあげたらビックリするほど吹き抜けに反響して、一気に恥ずかしくて堪らなくなる。

「工藤、ま、待って。音の反響すごいよ、ココ」

「ああ。そうだな」

え…と、気のせい？
なんだか…工藤がちょっと嬉しそう…。

「いい声が撮れそうだ」

カタリと音がして俺の顔の脇の階段に置かれたのは、工藤が捜査の時に使ってる手のひらサイズのレコーダーだった。

え…？

な、なんで？

なにを、どうする気…？

工藤の意図を把握するのに0.5秒かかった。

エ、エエエ・・・？！！！

まさか、声を撮ろうっての？？

俺の…声を？

「は…、ア…ッ…」

たくし上げられたシャツの裾から工藤が手を入れてくる。目の前で俺の顔をじっと見つめながら。
工藤の指が、何かを確かめるように俺の腹や胸をするサワサワと移動する。

くすぐったい！

変な声が出そうだ。
だけど声出したら反響する。めっちゃ響く。録音される！

食いしばって我慢する。金縛りにあったように、ただただ身体を強張らせて。

「？！」

不意に胸を摘ままれた。

や、やめてよ。なにすん……。

「快斗」

「工藤、や、い…痛いのは───」

「リクエストか」


（（ ギリッ！ ））


イ！！！

イッ、痛ッテェェェェーーッ！！！

違がーーーうーーーーーっ！！！！！


抑えられる痛さじゃなかった。

何千ボルトもの電気ショックを、針で一ヶ所に集中されたような。

俺の悲鳴はエントランスのみならず、工藤邸の敷地いっぱいに響き渡った事だろう。

隣近所にまで聞こえてたらどうしよう───なんて、このときはまだ考える余裕があった。

このときまでは。






punishment day《3/4》へつづく
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《拍手御礼》
彩さま●拍手コメントありがとうございました！
思いのほか進みませんでした。次はR18となります～(..;)。

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