業火妄想《新一×快斗編》
カテゴリ★業火の向日葵パラレル
※劇場版『業火の向日葵』より、新快パラレル(汗)。
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「く、工藤くん??」
「何故、うぬがここに!?」
園子の声に振り返った鈴木財閥相談役が、オレに気付いて目を見開く。
「怪盗キッドが『向日葵』を狙っていると聞いたものですから。いま飛び出したのは十中八九ダミーでしょう。念のため追跡はすべきですが、それよりビル内から不審者を逃さないよう、一刻も早く出入り口を固めた方がいい」
「相談役、この少年は?」
ホルスターに拳銃を収めたチャーリー警部が、訝しげな目でオレを睨む。
「はっはっ、こやつは工藤新一、日本を代表する探偵じゃ。わしは〝キッド・キラー〟と呼んでおる!」
───あのう、どういたしますか。
通路の隅にいたビルの職員らしき男が控えめに指示を仰ぐと、チャーリー警部は部下たちを率い、無言で駆け去っていった。
───この区域は立ち入り禁止だ、表示板を持って来い!
警備員たちもそれぞれに散ってゆき、鈴木相談役も園子に促され会見場へ戻っていった。
あとには、さっきの職員とオレだけが残った。
スーツ姿のその男は、オレと目が合うと困惑した様子で半歩後ずさった。
「どういうおつもりでしょう」
「何のことだ」
「───しらばっくれんなっ」
オレが歩み寄ろうとすると、大人しそうに見えた男の気配が一変した。
ボワン!
煙幕の中からトランプ銃が突き出され、照準がオレの眉間に向けられる。
斜に構えて立っているのは黒衣姿の少年。
「快斗…!」
「このアホ探偵。ニューヨークまで来て邪魔する気か」
「むしろ逃げやすくなったと思うが」
「どこがだよ。付いてくんな!」
会話しながら油断なく視線を巡らせていた快斗は、突然くるりと向きを変えると足音もたてず駆け出した。
「待て、快斗」
「呼ぶなバカ! 誰が待つかっ」
「いいから、こっちだ」
え?と怪訝な顔で脚を緩めた快斗の腕を捕り、オレは予め調べておいた非常口前のスタッフルームへ快斗を引っ張り込んだ。
「な、なんだよ、ここ」
オレの手を振り解こうとする快斗を引き寄せて口付けた。
うむむと抗議してもがく快斗を放さず、ぶつかるように壁に背を押し付ける。
「な…ばか、くど──…」
柔らかな唇の隙間を縫う。互いの熱が溶け合うのを覚え、陶然とする。
今夜、目の前であんなシーンが見られるとは思っていなかった。
黒衣姿で会見場に歩み出た快斗は、チャーリー警部の威嚇に動ずることなく軽い笑みさえ浮かべていた。
そして悠然と向き直るとワイヤーを射出し、あっという間に吹き抜けの天井へと舞い上がったのだ。
現れた白い怪盗が縦横無尽に会場を舞う。
辺りに響く怪盗の不敵な笑い声───。
ゾクゾクした。
あの怪盗を、オレは追い続けているのだ。これまでも。これからも。
ガツッ!
「痛てぇっ」
快斗の頭突き。久々に目に星が飛んだ。
「調子にのんな、バカ工藤っ」
落ちたキャップを快斗が拾い上げる間に、オレは扉の前に立ちふさがった。
快斗が再びトランプ銃を構える。
「それで俺を逃がさないようにしてるつもりかよ、工藤」
「一つだけ教えろ」
「やだね」
「まだ訊いてねえ。今夜落札された幻のゴッホの向日葵、本当は誰が狙ってるのか知っているのか」
「……テメーはどこまで知ってんだ」
「怪盗キッドに妙な依頼が舞い込んだらしい、ってのが、ある筋からオレに入った情報だ」
〝ある筋〟と聞いた快斗が小さく舌打ちする。
「どの筋だか知らねえが、これ以上余計な首突っ込むと周囲(まわり)を巻き込むことになるぞ」
「だから自分一人で守る気なのか、快斗」
「勝手に推理してろ。探偵の力は借りねえ」
「勘違いするな。オレは怪盗キッドを追ってるんだ。キッドが何かする気なら、おれはそれを阻止してやる」
「おもしれー。やってみろよ。できるもんならな」
〝コン、コン〟
ノックの音。
オレはハッと背にした扉を振り向いた。
〝おい、誰か中にいるのか───?!〟
快斗から目を離したオレの負けだった。
それが快斗のフェイク(腹話術)だと気付いた時は、もう遅かった。
白閃。
ホワイトアウトに包まれる。
「くそっ、行くな、快斗───!!」
〝あばよ、名探偵。次は頭突きくらいじゃすまねーぜ〟
「……快斗」
痛む目を擦ってようやく視界を取り戻した時には、すでに快斗の気配は完全に消えていた。
快斗…、逃がさない。絶対におまえを捕まえてやる。おまえだけ危険に晒して、あとから出て行くだけなんて御免なんだ。
探偵(オレ)がただの批評家だなんて、二度と言わせない。
だから、無茶はするな。
自分一人だと思うな。
快斗…。
怪盗キッド。
20150528
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※うう、お粗末さまです。伝わりにくい描写があったかと思いますが…当ブログにおいての快斗くんは〝頭突き〟が必殺技?なのです~(汗)。ちなみに〝ある筋〟とは千影さん~優作さんラインを想定してます(汗汗)。当初R18へ持っていこうと思ってたのですが、無理あるかー?と修正してこんなんなりました。スミマセン…_| ̄|○
『業火妄想』、とりあえず一段落としますが、いずれまた別パラレルを書くかもです。その時は『カテゴリ★業火妄想』を増設してまとめようかと思います。いつになるか不明ですが…(^^;)
●拍手御礼
「確率」「フェアリーナイト」「桜舞う宵」「明けの明星」「迷い鳥」「真贋」「囚人」「黒の鎖」「未明の道」「憤怒」「身代わり」「成功報酬」「寄り道」「誤解」、そしてカテゴリ★闇に棲む蜘蛛、カテゴリ★交錯、さらに「業火妄想」各編へ、拍手ありがとうございました!!
★今宵は匿名にて 様
同意ありがとうございます! そうなんです…予告編で思い切りキッド様フューチャーへの期待膨らんでいたので、見終わって物足りな感がどうしても拭えず(泣)。贅沢な不満なんですけどね(^-^;
★ザッキー様
拍手コメありがとうございました!! 新Kもがんばりますね~(^^;)
キッド様はあまり砕けない口調の方が私は好みなんですが、ザッキー様はいかがですか。よろしければ是非またお訪ねください~(^^)/(^^)/
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