袋小路の〝名探偵〟(XX→快斗)
※快斗くん視点の小咄デス…(*_*;
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にいちゃん、何してんだい。
「え…」
複数の気配に振り向くと、いかにもなダークスーツに開襟シャツの〝その道〟な連中が立っていた。
「あ、あの…迷っちゃって……駅に」
慌てて向き直る。
いけねえなァ、終電過ぎてるぜ。見ねえ顔だな。大学生? 高校生か…? 未成年だろ、にいちゃん。
繁華街の袋小路。ビルの向こうには眩いほどに極彩色のネオンが輝いている。しかし今いる場所には暗く湿った夜の空気が澱んでいた。
俺に声をかけた男と、左右に一人ずつ、全部で三人。
退路のない状況に、無用な危険に近付いてしまった自分の迂闊さに舌打ちした。
男の声はあくまで優しげだが、胡散臭そうに俺を見る目は常人のものではない。
「バイト始めたばかりで…慣れなくて。でも、もう帰るんで」
男達の脇をすり抜けようとした。だが、そう簡単には行かなかった。
腕を捕られて振り向かされる。
へええ、バイトってなんの? 二丁目の新人の情報はたいてい入ってくるけどな。
ハハハ、と別の男が笑う。
「!」
被っていたキャップを弾かれ、顔を覗き込まれる。
ほー。可愛い顔してんじゃねえか。どこでバイトしてんだよ。贔屓にしてやるから、店教えな。
「す、すみません…勘弁して下さい」
マジで焦る。嫌な感じだ。早く抜け出さないと─────でも。
「あっ」
ぐいっと引っ張られ、バランスを崩した。
ビルの壁に押し付けられて囲まれる。
若い男達ふたりに左右から腕と肩を抑えられ、正面にさっきの男が立つ。
にいちゃんよ、ここいらじゃ最近ヨソもんが増えてトラブル急増中なんだ。だからおれ達は〝頼まれて〟パトロールしてるんだ。
店の売り上げくすねたり、余計な面倒持ち込んでシマ荒らしたりする不届きモンに、お仕置きして追い出すのがシゴトってわけよ。
解るだろ…にいちゃん。可愛いからって、はいそれじゃ気をつけてって見逃してちゃあ、職務怠慢になっちまうんだよ!
「うあっ」
腹に一発入れられた。的確だ。苦しい。汗が噴き出す。やばい。動けない。
さっき躊躇せずに閃光弾を使っていれば…。
なあ、バイトなんて嘘だろ? 店の名前言ってみな。言えねえなら、二度とここいらへ近付きたくなくなるようにしてやるぜ。
シャツを掴んで持ち上げられ、喉元を絞られる。
頭の中に、先刻まで彷徨いていた繁華街のネオンが過ぎった。
「───── 鍵…あな、〝名探偵〟」
男が首を傾げる。
通りで見た看板に出ていた本当の店名だ。鍵穴から覗いてプレイがなんとか。
にいちゃん、嘘だったらただじゃすまないぜ。問い合わせるから名前言いな。
憮然とした顔の男が携帯電話を取り出した。
「…シンイチ」
キャップを被りなおし、走ってネオンの洪水から遠ざかった。
ボディに喰らったのが効いてる。
大通りに出て、やっと歩調を落とした。
「うう、トンデモねー目に遭った」
今夜の逃走経路の下調べは失敗だった。
いくら人が多くて紛れやすい場所でもだめだ。健全な青少年に、深夜の繁華街は絶対NG!
交差点のガードレールに腰掛けて腹を抑えた。
でも、良かった…。
とっさに思い出した店名『鍵穴 名探偵』に、『シンイチ』って源氏名のバイトがホントにいてくれて。
いそうだなって思ったけど、本当にいたなんて…。
助かった。そしてありがとう。さらに大爆笑!!
いてて。笑うと打たれた腹が痛い。
まあ、工藤には内緒にしておこう。すごく言いたいけど、内緒にしておこう。
今夜の事は秘密だ、絶対。
知れたら怒られる。いろんな意味で。
だけどまた助けられたな〝名探偵〟に…。なんちゃって。ぷっ。
アいてて~。
20130506
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※うわぁお、お粗末様です(*_*;
そして名探偵ファンの皆様、ひんしゅくネタでごめんなさい~m(__)m
※展開として(1)ほんとに襲われちゃう(2)襲われかけたところに新一が助けに現れる(3)助けた新一が怒って快斗くんにお仕置きする…等も考えたんですが、結局小咄的にマトメちゃいました…。
《ひとりごと》
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