四つ葉のクローバー(3/4組)
※お気楽系、ノリだけで書いてます(^^;)。
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「よお黒羽、遊びに来たったでぇ!」
「は、服部?! 工藤…!」
校庭の屋外ステージ裏に控えていた俺は、ニカリと笑ってキャップのつばを前に回しながら歩いてくる服部に、嫌~な予感を覚えた。
「あのー…、なんでキャップ回すの? 事件ないけど」
「ワハハ。事件やのうても本気と書いてマジと読む時はこうせなアカンねん!」
「…オイ白馬、まさかおまえが呼んだんじゃ」
「この件、工藤くんに話したのは黒羽くんでしょう。君が呼んだも同然ですよ。服部くんも来ると、僕は事前に工藤くんに聞いていましたが」
「なにィ?! 工藤っ」
「よお」
コイツ。なに片手上げて楽しそうにしてんだよ。
「テメーかっ、服部まで呼んだのは」
「いいだろ。学園祭だぜ? ウチの時にも来てくれたんだよな、服部」
「おう」
そーゆう次元かよ。……かなぁ。ううん。
────おおーい、快斗! 白馬! メンバー揃ったのか? そろそろこっち来てくれ!!
「わかりました~」
白馬が裏方に返事をしている。
えっ?
いまの、聞き間違いでなければ〝メンバー揃ったのか〟って言ったような。
ま…まさかっ (* *;??
「白馬!! 二人でエアバンドすんじゃなかったのかよ?!」
「やだなぁ本気にしてたんですか? 二人じゃいくらエアでもカッコつかないでしょう。もっとも、僕はきちんとキーボードの特訓してきましたから、なんならエアでなくてもいけますよ」
「そーいや黒羽、なんやおまえんとこの演劇、えろう盛況だったらしいやないか。そっちも観たかったで~!!」
「思い出させんな。スゲー大恥かいたんだから」
「そんな事ありませんよ黒羽くん、大喝采だったじゃないですか」
「オマエは黙ってろ。…なんで付いてくんだ工藤っ」
「いま呼ばれただろ。もう出番なんじゃないのか」
肩を白馬に抱かれる。
「な、なんだよ」
「相談の結果、工藤くんがリードギターで服部くんがドラムスをやってくれることになってます」
「えっ? 俺がリードだぞ!」
は、しまった。
四人で出るのナニゲに認めちゃったカンジ…(@@)??
「黒羽くんは器用だし、ぶっつけでもベースの弾き真似出来るでしょう? 歌いながらだから、むしろその方が」
「快斗、オレもざっとだけどギターのエア練してきたから!! 任せろ!」
工藤と白馬と服部の飛びっきりのトリプルスマイル。
こいつら……。
さては最初っから三人で俺を嵌める気で、黙って準備していやがったなぁああああーっ!!
「言うとくが、俺は叩くでマジドラム。エアなんぞ姑息なこと出来るかい」
服部が言うと、白馬が顎に手を当てた。
「でも…それやるとドラムは目立つなぁ。放送と被ってしまいますよ」
「ほっとき! 屋外やし、わかりゃせんって。後夜祭なんて楽しけりゃええねん!!」
「そうですね」
「…………」
そろそろ反論する気もなくなってきた。もうどーにでもなれ。とほほ(T_T)。
「エアってことで、前のバンドに頼んで機材と楽器そのまま使わせて貰うことになってます。大事な楽器に傷だけは付けないでくださいね!」
言いながら白馬が先頭を切ってステージ袖に上がって行く。
「よっしゃあ、俺らもいくでェ、工藤、黒羽!」
司会がマイクを握って壇上脇に立つ。
──────さあ皆さん、後夜祭もいよいよこのステージが最後!! お待ちかね、奇跡のエアバンド『クローバー』登場です!!
──────メンバーは2年B組 白馬探くん、黒羽快斗くん、さらに強力ユニットメンバーの服部平次くん、工藤新一くんの四人です!!
司会のバンド紹介に、てんでに校庭に散らばってざわめいていた生徒たちが、一瞬静まり返った。
そこからの騒ぎがすごかった。
エーッ??、キャーッ!、ワアアーッ!! と悲鳴と怒号が混ざったような大歓声があがり、生徒たちが一斉にステージ前に集まってくる。思わずこっちがゾクゾクしてくるほどだ。
白馬に背を押されてステージに飛び出した。うわ、ほんとにすごい騒ぎ。工藤と服部のネームバリューすげえ。
こうなったら前振りなしだっ。俺が振り向くと、白馬、服部、工藤も頷いた。
「〝Miss Mystery〟〝ミッシングリンク〟二曲続けていきまぁーす!!」
「やだ! 青子、本物だよ!! 高校生探偵が三人も! カッコイイーーーッ、キャアアアーー!!」
「う、うん…」
叫んでる恵子に肩を揺さぶられながら、なんだか私までポーッとなる。
快斗もカッコイイ…。探偵たちに、負けてない。
ちらと横を見ると、少し離れたところに紅子ちゃんが見えた。
紅子ちゃん…、やっぱり紅子ちゃんも両手を前で握って恋する女子モードに入っちゃってる!
〝いきまーす!! 〟という、マイク越しの快斗の声。
あとは私も夢中になった。どこまでエアでどこが演奏か、混じってるみたいでよくわからなかったけど、快斗の歌声は本物だった。
快斗、素敵。快斗、どうしよう。
歌ってる快斗、ほんとに…本当にカッコイイ……!!
俺たち即席エアバンド『クローバー』は、ノリノリの生徒たちの熱気に押されて予想以上に盛り上がって演奏できた。服部のドラム、けっこう様になってたし、工藤も小憎たらしいけどクールなリードギター似合ってた。白馬ももしかして本当に弾いてるのかな、と思うほど動きが曲に合ってた。
結局アンコール+アンコールで、持ち歌二曲を二回ずつ、本番と併せて計四曲歌った。張り切りすぎて俺は最後声が掠れちまった(汗)。
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「でな、来週が俺んとこの学園祭やねん。今度は真っ昼間、体育館での演奏や。泊まるとこ、なんなら俺んちでええで。その方がバンド合宿らしいてええかな!」
「じゃ、そうさせてもらうか」
「よろしくお願いします、服部くん」
「おう! 黒羽も遠慮せんと、待っとるで!」
話が勝手に進んでる。だけど喉が掠れてるし、反論したところで聞いて貰える訳ないし、俺は黙ってため息を付いた。
「ほんじゃな! 見送りご苦労!!」
服部が乗った新幹線が遠ざかって行く。工藤が俺を振り向いた。
「これからどうする?」
「帰って寝るよ…。昼は演劇、後夜祭はバンドでもう疲れた」
「あっ」
「どうした、白馬」
「Twitterで『江古田高校・クローバー』けっこう呟かれてますよ。来週の大阪公演も、この様子だと盛り上がりそうですね」
なんだよ〝大阪公演〟て…(--#)。
「もしかしてYouTubeとかニコ動に誰かアップするかもな」
「可能性は十分ありますね」
こいつら、なにマジ顔で話してんだ。俺は動画が世に流れるかもと想像しただけで恥ずかしくて熱が出そうだ。
「もー帰るっ、あばよ!!」
俺は二人を置いて駆け出した。
「黒羽くん、送らなくて大丈夫ですか?」
「快斗お疲れ! 気をつけて帰れよー!」
階段を駆け下りた。
来週、ほんとに大阪に行ってまた歌う羽目になるんだろうか…。
恥ずかしさと共に、何ともいえない高揚感を思い出してカアーと体が熱くなる。
アイツらのことだ。どうせ俺が何を言ってもやるったらやるんだろう。照れはあるけど、俺も大阪に行くことになるんだろうな…きっと。
クラスの演劇が終わってホッとしたのも束の間だった。とんだ延長戦だ。
だけど、高校生探偵に嵌められたままじゃ怪盗の名がすたる。少なくとも今夜よりマシなステージにしないとな。
ひとつ大きく深呼吸をしてから、俺は自分の家へ向かう電車のホームを登り始めた。
20130307
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※二曲ともコナンくん主題歌から持ってくるべきところ、一つは TIGAR&BUNNYから持って来ちゃいました。ノリがよくてとてもカッコイイ曲なんで…(^^;)。
※あえてカップリングは全面に出さずに?書きました。でもこっそり新快前提のつもりではあります~。
[14回]