拍手御礼 「遅い時間に昇る月」「黒の鎖」「月光リフレクション」へ拍手下さった皆様、ありがとうございました !!(*^^*)!!
白平同盟(3/4組)
※ノリ優先展開です(^^;)。
────────────────────────────────
駅前のロータリーに出て辺りを見渡すと、白馬ここやあ! と大きく服部が手を振っているのに気が付いた。
「すみません、お待たせしました」
「かまへん、まだ三分前や。自分セッカチやから、待ち合わせにはいっつも10分前には着てもうてん」
「セッカチなのに、相手を待っていてイライラしないのですか?」
「そらまあ5分以上遅れてきよったらムカつくけどな。約束より10分以上遅れるような相手とは、二度と待ち合わせせえへんし」
「うふふ」
「なに笑ろうてんねん」
「いえ、はっきりしていて服部くんらしいと」
「けっ。ほれ、頼まれとった資料や」
「ありがとうございます。わあ、けっこうかさばってますね。あ、CDも。受け取りに来てよかった」
「コッチの劇場の警備システムなんぞ知ってどうすんねん」
「それはまあ…、でも僕が問い合わせても教えてもらえなかった警備会社の情報まで、助かります」
「警視総監の息子といえど、手に入らん資料もあるんやな」
「その〝肩書き〟が逆効果になる場合の方が多いですよ。自分では言いませんし」
「そらそやな…俺かて自分から言うことあらへんし。親の肩書きなんぞムカつくだけや」
「そうですよ」
服部はそこで初めて僕に目線をくれながらニィッと笑った。
「んで? 新幹線でトンボ返りかいな」
「はあ、でも一服しようかと…お腹も空きましたし」
「すぐそこに上手い豆腐料理の店があるで。リーズナブルで学生さんにもオススメや」
「お豆腐? 服部くんは肉肉肉かと思ってました」
「うるさいわ。ただ喰えばええっちゅうもんやない。体調管理が推理力を高めるんやで」
「ごもっともです」
「豆腐行くんか行かへんのか」
「ご馳走になります」
ダぁほっ! 割り勘や!! と大声で言うと、服部は僕の背中をバシンと叩いた。
「女性ばかりですね、お客さん」
「そやなぁ。俺も前に一回連れられて入っただけやねん。ま、気にせんとき」
おそらくポニーテールの彼女にだろう。
「ほんでな白馬。滅多にない機会やさけ訊くんやけど…」
「は?」
なんだろう。
「工藤と黒羽ってマジで付き合うとんの?」
「…………」
「アラ? その顔どういうコト?」
思わず憮然と口を結んでしまった僕を見て、服部が可笑しそうに笑う。
「僕に訊いても仕方ないでしょう。工藤くんに直接…」
「それがなァ、アイツこういうことになると、ホンット煮え切らんねん」
「…恋愛に関して?」
「せや。だが今回は照れてんのとちゃうねん。どーも俺に黒羽の事を知られとうないみたいなんや」
「なにを根拠に」
「アレかなぁ。少し前、工藤んち行った時、黒羽が熱出してフラフラしながら工藤を訪ねてきたんや。せやけど工藤は出掛けとって、たまたまいた俺が代わりに黒羽の面倒看たったんや」
「…………………どんな風に」
「そらあ手取り足取り♪」
「服部くん!! 君は、まさかっ」
「おっ、なに慌てて立ち上がっとんねん。座らんかい、ランチの皆さん驚いて視線集中やで」
「……君はまさか、黒羽くんに」
「なんやねん白馬まで。えらい苦しそうやったから、ちぃと添い寝して黒羽の背中撫でてやっただけやで」
「添い寝(@@)?? どういう事ですっ!!」
「ああーうるそうしてスンマセン~。このあとカラオケなんで発声練習するゆうてこいつ、アホちゃうかい! アハハ。もう静かにしますよって~」
「カラオケはしませんよ」
「周りと俺に迷惑かけんなや」
「…それで?!」
「まあ、帰ってきた工藤が勝手に勘違いして? 俺に二度と家くんなって。アッタマくるやろ」
「明らかに警戒されてるじゃないですか」
「黒羽、カワエエよなぁ」
「…………」
「さっきからなんでその目やねん。もしかして白馬、おまえ黒羽に」
「個人的な問題に触れられたくありませんし、君に話すつもりもありません」
「ノリがワルいのう」
「海苔とか関係ないですから!」
「うはは。今のなんや?ノリつっこみ?」
「君こそ気のないふりして、どちらなんです」
「は?!」
「てっきり工藤くんだとばかり思っていましたが、まさか君は……」
「なんの話やねん、なんで俺が。工藤は探偵仲間でライバルで、親友やで」
「この話を持ち出したのは君ですよ」
「ん? そうやったかな」
「白々しい。…でもまあ、僕が見るところ彼らは付き合い始めてまだ日が浅い。打つ手はあると思ってます」
「どんな手や?!」
「どうしてそれをここで言わなきゃならないんですか。しかも君は自分の意思表示をしていない。フェアじゃありません。この話はお終いです」
「白馬かてはっきり言うてへんやんか」
「ほっといてください。ほら、食事が来ました。いただきましょう」
「おお…、んじゃま、もらおっか!」
・・・・・・・
「ここでよいですよ。服部くん、食事につき合ってもらって…それから資料も、ありがとうございました」
「まあ、貸しイチや。こっちもなんぞ頼む機会があるかもしれんし」
「僕に出来ることでしたら」
「よろしゅう。俺らでこっそり同盟組んどったら、いざっつー時に工藤のやつをギャフンと言わせてやれるで」
「ふふ。そうですね。怪盗キッドも驚くでしょう」
「…にしても、わざわざご苦労やったな。宅配で簡単に送れるゆうのに」
「いえ。服部くんにも会ってお話ししたかったですし」
「俺のことコケにしとったんちゃうんか」
「とんでもありません。君こそ僕を嫌っていたはずでは? 依頼を引き受けてもらって正直驚いていたんです」
「ま…おまえが追ってる件については、チラッと耳に入ってるさかい」
「そうでしたか…」
「怪盗キッドを助けるためかい」
「捕まえるためです」
「ふん。そうや、な、俺ら付き合う事になったてウソ言うて、工藤と黒羽を驚かせてやらんか」
「ええ?」
「陽動作戦や。工藤の奴、なんかあれば俺に頼って手伝いさせよって、ちいっとびびらしたる」
「そんなことで陽動になりますかねえ?」
「このまま指を咥えてあの2人の仲が進展するのを見とれっちゅうんかい」
「……では」
またお会いしましょう、と言って僕は混雑する駅の改札脇で服部をハグした。
わっはは、なんならキスしてもええで白馬! と服部が笑う。
僕は服部の顎を持ち上げた。
たぶんこれが〝ノリつっこみ〟というやつだ。
キスしようとして、んなわけあるかい、と自らに突っこむ。
しかしその時、ハッと服部が固まるのが判った。
黒い瞳が僕を見ている。
─────ちゅ。
服部が目を見開いたまま後ずさる。
僕はつい、ノリのまま服部にキスをしてしまったのだ。
きゃあ、と行き過ぎる中から僕らのキスを目撃したらしい人の声が聞こえた。
「なっ、な、…何すんねん、白馬!!」
「服部くんが言ったんでしょう、キスしてよいと。感謝とお別れの挨拶ですよ」
「アホかっ、こんな人混みで」
「人目がなければよいのですか」
「かあっ、ウルサいわ、もうさっさと去ぬれ、どアホ!!」
僕は赤面している服部に手を振り、改札を入った。振り向くと、服部は背を向けて走って行ってしまうところだった。やれやれ。
─────どうして僕はキスをしたのだろう?
成り行きではあるが…「ふり」だけのつもりだったのに。
間近で目が合った時の服部の黒い瞳に、つい魅入られてしまったのだろうか。
座席についてほっと目を閉じた。
工藤と黒羽と服部と僕。
たぶん、これからも互いに凌ぎ合い、謀り合い、そして助け合う機会があるだろう。
個人的な感情が、そこに絡む余地はあるだろうか?
僕は目を閉じた。
少し眠ろう…。
打てば響くような服部との会話は、楽しかった。内容はともかく。
また会おう…服部くん。
20130523
────────────────────────────────
※うああ…どうオチをつけようか考えてたらこんなんなっちゃいましたっ、スススミマセン!(@@);;
※そして、なんとなくですが 2011.10.29~30up「恋患い」を今回の話の下敷きっぽく使っています…。
[5回]