朧月(おぼろづき)《2/2》
新一×キッド (R18)
※再アップしました。(*_*;
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広いベッド。妙に明るい部屋。
名探偵の部屋じゃない。なんか……変だ。
まさか……。
「ど……どこだよ、ここ」
「ラブホテル」
「ら…」
らぶほーー????!!!
俺は頭を抱えた。どんだけ強引なんだ。
「…なんてとこに連れ込むんだよ」
「さっきおまえを捕まえたのがここの屋上だったんだよ。おまえも狙ってたんじゃねぇのか」
「ばっ……ばばばバカ言え! 俺はラブホの屋上なんかに降りてねえっ」
「まぁいいじゃねーか。泊まりにしといたから、慌てなくても時間はあるぜ」
ポタリ。ポタリ。
シャワーの滴が落ちる音。
――なにやってんだか、俺。
押し切られた自分が情けない。
バスタブに浸かって、自分の優柔不断さに溜息をついた。
言われるまま怪盗の衣装を脱いで裸になって。そんで風呂入って。なすがままじゃねーか。
いや…でも肌を重ね合うのなら、そりゃあ清潔な方がいいに決まってる。いやいや、だからなんでアタマん中やるの同意しちゃってんだよ。
――ポタリ。
ああ。分かってるさ。
とっくに気付いてる。
あの時…俺は探偵に初体験を奪われて――それどころか、気が遠くなるほどの快楽を知らされた。
抗えないその時の高まりの記憶が、俺を篭の鳥にしている。
認めたくなくても……そうなのだ。
つまりは俺も欲してる。
ドンドン!
「な、なんだよ!」
バスタブに慌てて首まで浸かった。
『早く来いよ』
「…………」
『中でやるか?』
「や、や。もう出る!」
曇りガラスの向こうの探偵が笑った。
思いの外、探偵は優しかった。
俺は素直になれずにそっぽを向いていたが、それでも抱き締められ互いの熱を感じると自然と吐息が漏れた。
まだ濡れてる髪に探偵が指を通す。
頭を捉えられ唇が重なると、抑えは利かなくなった。
体が――思い出す。感じ始める。
あの時の、探偵に初めて貫かれた時の衝動が甦り、反応してしまう。自分が自分でなくなる。
(ああっ…)
ヌルヌルした感触が肌を伝う。もっとも羞恥を覚える場所に――徐々に近づく。
竦んだ窄まりを柔やわと圧される感覚に唇を噛んで俯いた。
(あっ!)
探偵が俺の脚を両腕に引っかけてぐいと大きく開いた。体が強張る。
その時、真上にいる探偵が俺に問いかけた。
「キッド……おまえの本当の、名は?」
(え?)
はぁはぁと荒く息を吐くことしか出来ない俺に、探偵が重ねて問う。
「おまえの名前は?」
なに……言ってんだ、この探偵。
「言えよ」
言えるかっ。
「ウアッ、ア!」
探偵が後ろに侵入してくる。
潤滑剤のぬめりのせいで奥まで一気に押し進められた。急激に体内を拓かれ、圧迫される苦痛に汗が噴き出す。
やめろ。これ以上俺を狂わせるな――!
「キッド」
「た、探偵なら…っ、自分で……、ああ!」
「調べたさ、散々」
ゆらゆらと揺さぶられ、同時に張りつめた部分を撫でられて、抱えられた脚がビクビクと跳ねてしまう。探偵を含んだ後ろが――熱い。熱くてたまらない。
苦しい。叫び出しそうだ。
噛み締めた奥歯の力を少しでも緩めたら、とんでもない声が溢れてしまうに違いない。
「……黒羽」
ハッと目を見開いた。
探偵の眼差しが俺をじっと見詰めている。
「盗一…が、初代キッドだ」
「…………」
探偵から目を逸らした。
きたねぇ。こんな時に。
こんな格好させられて。貫かれ、揺さぶられ、弄ばれて――意識が散らばって、とてもポーカーフェイスなんて作ってられねぇ……!
「おまえは……」
――― く ろ ば か い と なのか?
あ。ああ…………!!
――― 俺は、奈落に…堕ちた。
(…………)
柔らかいものが額に押し当てられる感覚に、ぼんやり目を開けた。
間接照明に炙り出された天井の装飾が見える。
体が……重い。
重いはずだ。
探偵が俺の上に覆い被さっている。
目が合うと、そのまま唇が重ねられ、ふうと息が吹き込まれた。
―――目が覚めた。
「……」
「やっと起きたか。もっといろいろ聞き出そうと思ってたのに」
どういう意味だ。
俺は……喋ってしまったんだろうか? 自分の――正体を。
「おぼろげには掴めたが、まだまだ知りたい事がたくさんある」
「なにを……」
「おまえの謎。手に入りそうで入らない。今も。体は繋いでも、おまえの心は迷ったままだ。俺にはまだ掴めてない」
「…………」
「次はまた俺の部屋に来いよな」
「…………」
誰が行くか。誰がオモチャにされにわざわざ。
「こういうトコのが好みならそれでもいいけど」
「ざ、ざけんなっ。誰がっ!」
顔を背けた俺の耳元で探偵が囁いた。
「んじゃ、待ってるぜ。キッド」
最後に探偵は俺を〝キッド〟と呼んだ。
だが、今さらだがよく考えたら素っ裸の俺は、全然〝キッド〟じゃなかった。
俺は自分自身(黒羽快斗)が探偵の手に堕ちつつあるのを自覚した。
いつか――打ち明ける日が来るだろうか。俺のこと。俺の全てを探偵に明かす、そんな日が。
いつもの探偵と怪盗に戻ると、振り向かずに俺は部屋を出て、屋上から夜明けの空へ飛び立った。
昨夜探偵と対峙したのが本当にこのビルだったのかどうか、よく分からなかった。もし本当にそうだったらマジ恥ずかしいから、よく見なかった。
20120117
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うああ、実はいったんアップしたのが内容あまりにヘンテコだったので全面変更しての再アップです。ムリクリまとめ??ました~(@_@);
[17回]