Third time lucky《3/3》(新一×キッド)R18
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やっぱりコイツはゴーマン野郎だった。
俺を見下ろし、本当にぞっとするほど愉しげに――哄いやがった。
「やっと来たな……。遅いぜ。おかげで溜まりに溜まってんだ」
「えげつねんだよ言い方がっ。だから」
「だから?」
――来たくなかったんだ。こんなヤツに。どうして。なんで…俺は。
「なんだよ。言えよ。キッド。それとも〝くろば〟?」
「……好きに呼べよ。俺が誰だって構わないんだろ」
俺がそう言うと、探偵は俺の顎を持って顔を自分に向けさせた。
「分かってねーな。鈍感奥手にも程があるぜ、キッド」
「キッドじゃねぇよ……今は」
「好きに呼べって、おまえが言ったんだろうが」
会話はそこまでだった。
息苦しくなるまでキスされる。
キス。キス。またキス―――。
翻弄されて気が遠くなる。
一枚ずつ身に付けたものを剥がれ、その合間にもキス責めにあって何がなんだか分からぬうちに裸にされた。熱い。
今度はこっちから攻めて探偵を驚かし、少しでもやり返してやろうと思っていたのに……ダメだ。俺にはできない。
俺には相手を凌駕するような愛し方はできない。とても無理だ。
どんなに自分に言い訳しても――こうなるとおそらく自分でも分かっていた。熱に浮かされて苦痛すら快感に変わる瞬間。
望んでいた。求められ貫かれて、探偵とこうして一つになることを。
(ああっ!!)
探偵の裸の背にしがみついて、抑えられない声が溢れる。
一つになって揺さぶられ、深い苦痛と、裏腹に湧き上がる快感に交互に突き上げられて、叫ぶ以外に堪える方法がない。手を噛んで悲鳴を隠そうとすると、すぐさま探偵に腕をつかんで引き剥がされる。
穿たれながら探偵に唇を塞がれ、息苦しくてたまらずに喘ぐ。もがけば中にいる探偵を締め付けることになり、さらに追い討ちをかけるように体を打ち付けられて、衝撃に跳ね上がった。
もうやめてくれと頼んだが聞き入れられない。
痺れた体をひっくり返され腰を掴んで引き寄せられた。
背後から奥を覗かれるような屈辱的な姿勢に体が強張る。恐怖すら覚えて逃れようと体が思わず前に動いたが、赦されず一気に押し貫かれた。
頭の芯まで響くような振動に襲われる。何度も何度も奥深くを撃たれ、体の中に探偵がいることをこれでもかと覚えさせられ――ただシーツを握り締めて堪えるしかなかった。
俺の背に口付けた探偵が……何か言った。
え………。
いま、なん、て―――?
『す き だ 』
『お ま え が』
『ほ か の だ れ で も な い……』
『お ま え が …す き だ ――――』
・・・・・・・・・・・・・・・・・
動けなかった。
宣言された通り、意識が飛ぶほど何度もめちゃくちゃやられて、とても動けない。
目も重い。唇も痺れてる。きっとひどい顔をしてるに違いない。
あまり見たくないが隣で眠る探偵の様子を窺った。どうせ自分だけスッキリした顔して寝てやがるんだろう……、俺をこんなになぶっておいて。
「よう。気がついたか」
「………………」
「わかったかよ、俺の気持ち」
「………………」
「告ったの聞こえなかったか」
「………………」
俺は首を振った。
「なんだよ……。じゃあもう一回言うか」
「言わなくていい」
「なんだよ、それ」
こんなんされて、素直に聞けるか。
まともに聞いたら――憎めなくなる。
だいたい、男に告られて嬉しいもんか。
「次は優しくしてやるからまた来いよな。あんまり待たせんなよ。焦らすと今日みたいなことになるぜ」
脅しかよ。
「なんとか言えよ。……黒羽」
「…………」
「否定しないんだな。やっぱりおまえは黒羽快斗だ」
「…証拠は」
「証拠なんて必要ねぇさ」
キスされた。
唇が痛い。キスされすぎて、たぶん腫れてるんだ。
「怪盗キッドを好きになったと思ってたけど、違った」
「……どういう意味だよ」
「俺が好きなのは黒羽快斗だ。黒羽快斗だからこそ、キッドが好きなんだ」
「………………」
コノヤロウ。
殺し文句だ。真顔でよく言うぜ。
「……いいのかよ。怪盗といえば探偵の敵役だぜ。それなのに」
「その〝怪盗〟と〝探偵〟っての、よせよ」
「…………」
「俺は工藤新一さ。おまえが黒羽快斗であるように」
本当に気を許したわけじゃない。
次に探偵と対峙する時、俺はキッドなのだろうか。それとも黒羽快斗なのだろうか。
自分にも分からない。
ただ、今さらだが三度目の正直で解ったことがある。
俺も本当は――こうして捕まる前から、たぶん工藤に惹かれていたんだ……。
そうでなければ、あの日工藤のもとを訪れるわけがなかった。
こんなゴーマンなヤツだったとは、その時思ってもいなかったけど。
20120305
[18回]