名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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マロニエに吹く風
カテゴリ★インターセプト2
※2013.4.15up「パリの灯」に続き千影さん視点です。
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ふっと風を感じて顔を上げた。背後の気配に驚いて息を呑む。

だってここはパリの真ん中。凱旋門を臨むシャンゼリゼ。

そっと横のショーウィンドウを見ると、黒い帽子を目深に被った少年が立っていた。

「よっ、千影さん。元気そうでなにより」

「快斗… あなた!」

「振り向かないで。そのまま前を見ててよ」

「どういうことよ?! 寺井が慌てて連絡してきたから、まさかと思ったけど」

「俺が来るかもって思った?」

「日本に帰る準備をしてたのよ、私は」

「だめ。千影さんはここから動かないで」

短くだが、きっぱりと快斗は私にそう言った。

観光客の姿が多い通りでは、私と快斗が日本語で会話をしていても特段目立つことはない。
自分を落ち着かせるために一度深呼吸をしてから、私は後ろに立つ息子に問いかけた。

「あなた……何しに来たの」

「千影さんに質問があって」

「電話かメールですむでしょ。わざわざ来なくたって」

「パリは素敵よー、あなたも来てみなさいよ♪ って言ってたの自分だろ」

「あのね、快斗」

「父さんがパンドラを追ってた理由、千影さんは知ってるの?」

日常の親子の会話となんら変わらぬ調子で快斗は問いかけてきた。

「……それは」

「パンドラのこと、千影さんはどこまで知ってるの? 全部教えてよ」


ああ、やはり。
この子はとうとう〝踏み込む〟決意をしてしまったのか。
私の答えは決まっている。こうなるだろうと考え始めた時から。

「千影さん」

「知らないわ。もし知っていたとしても、あなたには教えない」

「なんでだよ」

あなたを失うわけにはいかない。
盗一の時だって、もっともっと私が気遣っていれば結果は違ったかもしれない。
眩暈を覚えながらあの人の声を思い出す。


─────不老不死など禍(わざわい)を為すのみ。その魔力を永久に封じ込めんがために、パンドラを見つけ出すと約束したのです……私の生涯の恩人に。


いやよ。約束がなによ…!
〝永遠の命〟なんて儚い伝説の代償に、あなたと同じ運命を快斗に辿らせるなんて、そんなの絶対に許さない。

「快斗…私が悪かったわ。あなたが怪盗を継いだと知った時、すぐにやめさせるべきだった。放っておきなさい、パンドラなんて。伝説なんて大嘘よ」

「かもな。だけどその大嘘のために親父は殺された」

「無駄に危険を冒して何が得られるというの? いいこと、もう〝怪盗〟はおしまい。父さんの仇なんてやめてちょうだい」

「残念ですが─────事はそう簡単に済む話ではなくなっているのです」

囁かれた声音にハッとする。
背後で微笑む快斗の気配は、〝子供〟だと思っていた息子のものではなかった。それは…。
怪盗キッド!

「パンドラを見つけ出し、パンドラを壊してしまえばよいと、私も思っていたのですが」

「どういうこと?」

「新たにパンドラ争奪に関わってきた者がいるようなのです」

「でも、だからってあなたが」

「パンドラの真の姿を、私は確かめたい。そして守りたいのです…私と対を成す者の命を」

「え…?」

「手出しは無用です。私を思いやって下さると言うなら、どうか」

〝どうか私のためにも…貴女こそ何より御身を大切に〟

吹き抜けた一陣の風が私の髪を乱してゆく。
そんなはずがないのに、後ろにいるのは盗一ではないかと、そんな気さえしてくる。

だって…この気配はあの人と同じ。
あの人の声と同じ。
私の後ろに立っているのは誰? 快斗なの?

それとも…盗一…?


「だからさ、引退して何年経つと思ってんの? 怪盗淑女さん」

「快斗…」

「母さんこそ大人しくしててくれよな、頼むから」

「ちょっと、待ちなさい、快斗!」

私は振り向いた。

いつもと変わらぬ華やいだシャンゼリゼ。
けれどたった今まで私の真後ろにいたはずの快斗の姿は、どこにもなかった。

「快斗?!」

いない。

「快斗!!」

何度も名を呼んでマロニエの並木道を必死に見渡したけれど、快斗の気配は完全に消えていた。
行き過ぎる人々の楽しげな声がやけに遠い。

「ずるいわよ…快斗」

こんな時に私を〝母さん〟と呼ぶなんて。

私は自分の無力さに茫然と立ち尽くすしかなかった。




20130715

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