怪盗 VS 暗殺者《1/2》
カテゴリ★インターセプト2
※快斗くん視点。
※原作設定とは似て非なる別物です。ご承知おきください。
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まるで鮫だ。なんの感情も読み取れない褪めた色の瞳をした男。
長い髪に黒の服。腕の一部のように手に馴染んだサイレンサーを躊躇いなく突き出した。
工藤を腕に抱きワイヤーで窓際まで移動した。閃光弾が炸裂する中、続けざまに背後から狙撃される。
割れた窓から飛び出そうとした時、灼けるような衝撃が胸を貫いた。
口から生温かい血が吐き出るのが解った。
堕ちてゆく。工藤を抱いたまま。
闇の底へ─────。
「起きたかよ、快斗」
「………く…どう」
「大丈夫か? あまりいい夢じゃなかったようだけど」
「俺…なんか言った?」
「いや」
ガバッと飛び起きた。
工藤が出しておいてくれた大きめのタオルを腰に巻く。
「どうすんだ?」
「シャワー」
「オレも」
「すぐに出るから待ってろ」
「照れんなよ、今さら」
「別に照れてねーし、今さらは余計だ!」
「じゃあ、いいだろ」
「時間ねえの。今日は急ぐんだ」
「襲わねーから」
「どうだか」
「自意識過剰だろ、それ」
「とにかく付いてくんなっつの!」
もう返事は聞かずに部屋を出てバタンとドアを閉めた。
なんつー夢。 撃たれて死ぬ夢なんて。しかも工藤まで道連れだ。
やっぱり工藤の影響を受けているんだろうか。あの男……工藤が言う〝ジン〟が夢に出てくるなんて。
─────あのとき背を掠めた一発。
屈んでいなければ胸を撃ち抜かれていた。
俺はぶんぶんと頭を降った。
さっさと切り替えなきゃ。今日はシゴトの準備で忙しいんだ。
工藤邸のバスルームに入って、俺はシャワーの栓を捻った。
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前回ヘリで襲われてから、どうやら俺までおかしくなっちまった。工藤のことをとやかく言えない。
それにしてもパンドラを狙う連中の実態は相変わらず見えてこない。寺井ちゃんや千影さんや、そのツテであちこち調べてもらっているにも関わらず。
寺井ちゃんも千影さんも……たぶん俺を深入りさせたくないというのが本音なんだろう。だけどパンドラを〝ヤツら 〟より先に手にするためにも、情報はやはり欲しい。
パンドラ。命の石。親父が何かを賭けて追い求め、そのために〝ヤツら〟に陥れられた……俺にとっては呪いのビッグジュエル。
くだらねえ欲望を叶えるために他者を踏みにじることを厭わない連中。そんな連中に〝命〟を渡してたまるか。
「…………」
工藤の方はCIAやらFBIやら絡んでいて、それなりに情報を集めて包囲を始めているようだけど…。
ぶんぶん! また頭を降った。今日何度目だ? やっぱり工藤に毒されてる。
俺は俺だ!
まずは次のお宝奪取に集中しなけりゃ。
海沿いのY地区にある地元の豪家が数年前にオークションで手に入れたという〝妖虹のビッグダイヤ〟。そいつが次のお宝だ。
つい最近になって所蔵が公表された。どうやら自宅近くに新設する個人美術館に、これまで金に飽かせて買い漁った多くの美術品ともに展示し、その目玉にするつもりらしい。
俺は残りの手筈を整え、翌週までに必要な仕込みをし、持ち主と警察に暗号文を届けてもらうよう裏方の寺井ちゃんに頼んだ。
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風はやや強いが、よく晴れた深夜。
お誂え向きに数日後には満月となる月明かりが燦々と降り注いでいる。
美術館の主は最新式警備を過信し、ヘリの出動は無し、中森警部の説得にも耳を貸さず警察を敷地にすら入れていなかった。当然工藤や白馬も蚊帳の外。
閉館前に一般客に紛れて美術館を訪れ、遠巻きにする警察を楽勝で通過し、副館長に変装して予告時間を待った。
上手く行き過ぎてコワイ。てか笑いが止まんねえ。
どんな最新式警備でも電源がなけりゃ役には立たない。幾重にもセーフティーをかけ、予備電源・自家発電を用意したところで怪盗キッドの前には全てが無駄だったって事を証明する。
むしろアナログな中森警部の方が厄介なんだけどなぁ。それも今回は現場にいない。こんな楽なシゴトは久し振りだぜ!
──────月に翳せばすぐ判る。
俺はそのまま屋上に出た。館内の者は全員眠っている。
油断がなかったとは言い切れない。
ジュエルを取り出し月に翳した時、背後に気配を憶えて俺はハッと振り向いた。
「動くんじゃねえ。怪盗キッド」
「……!」
凶悪な気配。全身に戦慄が走る。
警察ではない。誰だ。
「俺だよ。憶えてねえか。久し振りだな」
抑揚のない醒めた声。
俺は目を見開いた。
暗闇から歩み出た男の腕にサイレンサーが握られている。
なぜ… なぜ、こいつが?!
「怪盗キッド。おまえを殺してやる」
月明かりに照らされたその男は、紛れもなくあの男─────〝ジン〟だった。
怪盗 VS 暗殺者《2/2》へつづく
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※怪盗キッドがジンと過去一度だけ対面しているのは 2012.1.7 up の「インターセプト」です。ご参考までに…m(__)m
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