寓話
カテゴリ★インターセプト3
※つなぎ的内容です(*_*;
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「だめ。いろいろ試してるけど、ヒントが〝pandora〟だけじゃ漠然とし過ぎてるわ」
キーボードを叩くのをやめ、灰原は肩を竦めてオレと白馬を振り向いた。
灰原を助け出してから三日が過ぎようとしている。
オレは白馬に頼み、灰原を白馬研究所に匿ってもらっていた。阿笠博士は灰原を連れて帰りたかったようだが(灰原も本当は戻りたそうだった)。
「あの夜の〝pandora〟の羅列は誰の仕業だったのかしら…」
「灰原を連れ去ったのが〝バーボン〟と呼ばれる奴なら、バーボンが灰原を誘き出すためにやったんじゃないのか」
安室透と名乗り、何食わぬ顔で毛利探偵事務所の助手をしていた黒ずくめの奴らの仲間────バーボン。
ジンの身を抉るような鋭いオーラとは違う。明るく笑う瞳の奥に時折り滲んだ暗い影。それは真逆に揺れるバーボンの印象としてオレの中に残っていた。
あの笑顔は飄々と装った〝安室透〟のものでしかなかったのだろうか。
だが、バーボン次第では蘭たちにも危害が及んでいたかもしれないと考えるとゾッとした。
そのバーボンも、灰原を攫ったあと行方を眩ましたままだ。
「そうね、バーボンかもしれない。〝探り屋〟の彼なら組織上層部にも通じているし、仕掛けにも長けてる。だけど何故〝pandora〟だったのかしら。APTX4869の事を指しているのかと思ったけど、違うようだし 」
「そう思う理由は?」
「私が閉じ込められていた研究室に出入りしていたメンバーは3人いたけど、彼らの会話には一度も〝パンドラ〟の名は出てこなかったわ」
「────パンドラとはギリシア神話に出てくる人類最初の女性の名ですよね」
壁に寄りかかり、ここまでオレと灰原の会話を黙って聞いていた白馬が呟いた。
灰原が頷く。
「傲慢な人間たちに怒った神々が、人間に災厄をもたらすために遣わしたのがパンドラよ」
「〝パンドラの箱〟か…」
あまりに有名な寓話だ。
パンドラが開けた箱の中から様々な〝災厄〟が人間界に放たれてしまう。そして人間は生まれながらにして業を背負う罪人となった…。
「怪盗キッドにも関係があるんでしょうか」
今度はオレを見て白馬が訊いてくる。
「そう、例えば怪盗キッドが探し求めていたのが〝パンドラ〟というビッグジュエルだという可能性はありませんか」
「それはオレも考えた。だが、アイツからは一度も」
一度も〝パンドラ〟という名を聞いたことがない。
いくら訊いても、快斗はキッドの目的について一言も答えなかった。
目を閉じると、高層ビルから見下ろした、あの気の遠くなるような景色が甦った。
─────ジンたちの目の前で、キッドの翼を託してオレと灰原を逃がしたのだ。
快斗が無事とは考えにくい。
一刻も早くなんとかしなければ…!
オレの背を押したバーボンの、バーボンに変装していた快斗の手の感触を思い出し、オレは手を強く握り締めた。
「精度を増したAPTX4869は今も奴らの手にあるわ。従わなければ灰原哀に関わった人間を消すと脅迫されていたし、メンバーには以前から研究に関わっていた科学者もいたから、誤魔化すのは難しかったの」
「どうしますか、工藤くん。こうしている間にも黒羽くんは…」
「一か八か、打って出よう」
「打って出る?」
「そうだ。快斗を取り戻すためならオレはなんでもする。警察やFBIを欺くことになっても」
「いいでしょう。僕も同意見だ。事態は一刻を争います。君が動かなければ、僕一人でも始めるつもりでした」
「二人ともそんなこと言って、どうするつもりなの?」
「まずは鈴木財閥の力を借りるんだ。白馬、灰原も、協力してくれ」
20140302
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※消化不良で、途中でぶった切る感な終わり方してスミマセン(x_x)。動きのない回になってしまい、言葉を選ぶのにも四苦八苦…これだけ書くのにやたら時間がかかってしまいました。さらにまだ会話があったんですが今回はカットです。次はもっと動かしたいです~(>_<)。
●拍手御礼
「〝ゆきこぞう〟と〝独り言〟」「雨の夜」「下弦の月」「開かない扉」「堕落」「Love cuffs」「共鳴」「ウルトラキッス」「黒の鎖」「頭痛」「ラブラブ・スモール」、さらに カテゴリ★トラベル、★インターセプト 、 ★ファーストステージ の各話へ…拍手ありがとうございましたーっ(^^)///
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