幻の彗星
カテゴリ★インターセプト3
※快斗くんサイド
─────────────────────────────
一万年という長大な周期で銀河を駆けるボレー彗星。その存在が発見されてから地球に接近するのは、もちろん今回が初めだ。
そして一万年後に再び同じ軌道を巡って太陽系を訪れる確率は果てしなく低い。
あまりに軌道が広大すぎて、本来は彗星と呼べる範疇にないのだ。
しかし発見者のボレー氏が〝彗星〟と名付けたために、通称として彗星の名を冠している──といことらしい。
簡素なベッドに伏せったまま、鬱々と思考の沼に沈む。
怠い。
さっきウォッカが部屋に来てから、そろそろ一時間経つ。
起き上がらなければ。
そう思いながら、また瞼を閉じてしまう。
パンドラさえ見つけ出して壊せばいいと思っていたから、ボレー彗星の事を詳しく調べてはいなかった。
ボレー彗星が発見されたのは25年ほど前だ。
対してビッグジュエル〝パンドラ〟の伝説の発祥はいつ頃か分からない。
そもそもパンドラの伝説は世間一般に知られていない。限られた一部の者達だけが知る伝承だ。
「………」
〝パンドラ〟の伝説は、ボレー彗星発見の前からあったのだろうか?
もしかしたら、ボレー彗星は〝パンドラ〟の奇跡をより強調するために、後から付け加えられたのではないだろうか。
奇跡のビッグジュエルと、幻の彗星…。
パンドラが満月の夜に生むという奇跡に、誰かがボレー彗星という〝期限〟を造った。
何のために…?
そして何百回と繰り返した疑念に、また足元を掬われる。
〝パンドラ〟は本当に存在するのか?
親父は、なぜ〝パンドラ〟を追っていたんだろう……。
なぜ……
・・ー・・・・・ー・・・・・ー・・
「あなたは、あの少年のことを知っているのでは? ベルモット」
『オールド・パル』。
ライ・ウイスキー、ドライ・ベルモット、カンパリを併せた〝古い仲間〟という意味を持つカクテルだ。
バーテンダーが仕上げたグラスを手に取ると、ベルモットは呟いた。
「その答えならイエスよ。バーボン」
やはり。
しかしベルモットは、詳しい話をする気はさらさらないようだ。続きの言葉を待っている僕をちらりと見て口元だけで微笑う。
「バーボン、あなたホントはどっち側なの?」
「どっちとは?」
「しらばっくれないで」
「それはあなたでしょう。あなたは〝いつからこの組織にいる〟のですか? FBI捜査官を消すことを条件にコードネームを手にしたあなたは、元々はいったい何者なのです」
「…それを訊いてどうするつもり? 暇つぶしならもっと別のコトしましょ、バーボン」
「呼び出したのはあなたですよ。それじゃ言いましょう。〝パンドラ〟争奪に組織が関わるよう仕向けたのは───ベルモット、あなたなのではないですか」
・・ー・・・・・ー・・・・・ー・・
それにしても異様な怠さだ。
なんとか体を起こして、ベッドに腰かけた。くらくらする。
「!」
突然、勢いよくドアが開いた。
ウォッカだと思ったが、ジンだった。
「来い、〝K〟。もたもたするな」
「………」
立ち上がる。チカチカと視界が瞬いて目の前がスッと暗くなった。
立ち眩みか。情けない。ふらりと一歩傾いだ腕を、強く掴まれた。
ハッと顔を上げると、ジンの顔がすぐそばにあった。
鈍色の瞳。殺げた頬。
どくんと心臓が鳴る。
───今なら、ジン一人だ。
「どうした。俺を殺ろうとでも思ってるのか」
「……」
だめだ。
今はまだ、死ねない。
「クッ。無理だと解ってんなら、すぐに悟られるような目をするんじゃねえ」
さも可笑しそうに哄笑うと、ジンは俺に背を向け、前を歩き出した。
20141019
─────────────────────────────
※バーボンとベルモットのシーンは同カテゴリ『標的 II』から繋がってます。
別タイトルにてつづけます…(*_*;
●拍手御礼
「カルマ」「月蝕II」へ拍手ありがとうございました(^^)/
★1412様、いつも拍手コメ&応援ありがとうございます。遅くなり、心配おかけしてスミマセン。アニメまじ快1412、三回目も楽しかったですね(^^)/〝邂逅〟きっとやると思います! 楽しみに待ちましょう♪ ♪
原作も夢の「まじっく快斗 5巻」が見えてきて本当に嬉しいです。今週サンデーのプチツボはマフラーして寒そうに白い息をしてた白馬くん!かわいかった~(^^)!!
[9回]