moonlight 新一×快斗

奇跡の月と運命の彗星《6》
カテゴリ★インターセプト４
※赤井さん/哀ちゃんサイド。
─────────────────────────────


目標は湾岸に一際高く聳え立つ交易センタービルの屋上。

だが、向こう半分が海という立地のビルを超える高さの建造物は、近隣にはなかった。

かろうじて射程ぎりぎりに在る、ほぼ同じ高さのこのビルだけが、唯一安定してターゲットを捉えることが出来る場所だった。

ただし、目標の屋上出入口壁面が僅かに被っていて一部が死角になる。
加えて間に林立する一段低いビル群の看板や航空障害灯のポールも、針の穴を狙う射撃の遮蔽物となっていた。

ジンは、ちょうどその〝遮蔽物〟の陰に立っている。
こっちの位置を見切っているとしたらさすがだ。

「どちらにしろ〝ボウヤ〟…いや、工藤くんのGoが出るまでは」

待つという約束だ。原則として。

ザザッというノイズがイヤホンの奥を衝く。

「ジョディ、どうした」


───シュウ、たいへんよ！！ ボスが、ジェイムズがやられたわ。今、遺体が搬送されて……ああ、なんてこと！


「ボスが？ 落ち着けジョディ。ボスはどこにいたんだ？！」


───交易センタービルから少し離れた路上で…駐車した自分の車の中よ。ひとりでいるところを狙われたらしいわ。防弾の窓が少し開いてて…たぶんその隙間から。ああ、でもボスが殺されるなんて！


ほう…〝ボス〟ジェイムズが殺された。
さすがにこれは予測できなかった。
手を下したのは、もしかしたら。

「ジョディ、交易センタービル周辺は固めてあるんだろうな」


───もちろんよ。中森警部が、ビルから出てくる者は一人残らず確保しろって指示してる。キャメルたちも十数人拘束したと言ってるわ。


「よし。とにかく今は現場に集中するんだ。頼むぞ」

ジョディとの回線を切ると同時に、頭も切り換える。
700ヤード超の狙撃だ。この風に加え、微かな吐息の震えすら集中力の邪魔になる。

息を整えつつ、ふと夜空を見上げた。
月に向かうように真っ直ぐ尾を引く彗星を。

眩く輝く満月は、それはそれは美しかった。









・・ー・・・・・ー・・・・・ー・・

   






「あっちゃ～えらいこっちゃ。このビル、崩れたりせんやろなァ」

「大丈夫でしょう。幸いバンケットルームだから天井は高い。上層は一部がバックヤード兼倉庫、その上はもう屋上です」

「わかっとるわい、ちーと言ってみただけや。爆風は上に向かうさけな。で、逃げよった連中は中森警部に任せるとして…爆破犯は」

「犯行の目的によりますが、まだ潜んでいる可能性は高いと思います」

私は呆れ半分、白馬さんの横顔を見上げた。工藤くんといい、この高校生探偵たちのタフさと冷静さには驚かされる。
振り向いた白馬さんと目が合った。

「哀さん、息苦しくないですか」

「平気よ。降ろして」

「いけません。瓦礫に足を取られます」

「アッチチ、くそっ、灼けとるで」

金属のポールをハンカチでくるんで持ち直し、服部さんが顔を顰(しか)めている。

「バカね、そんなもの拾ってどうするの」

私の方を見た服部さんがいっとき真顔になり、そして白馬さんと目配せするのが判った。

「上やな」

「満月が最も天高く昇る時刻まで、あと18分26秒です。行きましょう」







20160208
─────────────────────────────



※引っ張ってスミマセン。あまり空けずに続きをupしたい…と思ってます(; ;)。



●拍手御礼
「ホワイト・メリー・クリスマス」「あけおめなべ」「どこまでも高い空」、そして カテゴリ★インターセプト 各話へ、拍手ありがとうございましたー(^^)/

拍手コメント御礼！！
●ちょこ様～コメントありがとうございます。今度の劇場版、とてもシリアスそうでドキドキしますね。キッド様不在なのが残念ですが、それでも初日に見に行くつもりです！ それまでに、ホント～～に ★インセプ、目途つけたいです(> <)。原作の動きとか気にしちゃうと混乱するので、開き直って進めます。よろしければもうしばらくお付き合い下さいませ(^^;)///

[5回]