名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
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連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
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風のメロディ(怪盗キッド)
カテゴリ★デジャヴ
※有希子さん視点。
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中秋の名月とはよくいったものだ。

満月は明日だけれど、今夜の月も十分に明るく美しかった。

一人でこの街を歩くのは久し振り。私はウィンドウ・ショッピングを楽しみながら午後を気ままに過ごした。
カフェで隣り合ったおじ様に所望されてサインをして差し上げたり、ロスで締め切りに追われている優ちゃんに〝頑張って〟とメールしたり。

途中で旧友たちと合流しディナーをとったら、すっかり遅くなってしまった。
新ちゃん心配してるかしら…?

急いで帰ろうと思ったけれど、通りかかった米花センタービル前で私は立ち止まった。
このビルの展望レストランは私たち夫婦にとって大事な大事な思い出の場所だ。懐かしいな…。

ビルの上には丸く膨らんだお月様が輝いていた。
雲一つ無い夜空に燦然と浮かびあがった月の姿は眩しいほど明るい。

綺麗だわ。

美しい月に心がときめいた。
月は何故こうも美しく、謎めいていて人の心を動かすのだろう。

私はなんだか少しだけ月に近付いてみたくなった。




泥棒気分でこっそり扉を開けた。
米花センタービルの屋上から見る街の灯りと、天にぽかりと浮かぶ月との対比がとても綺麗。

だけど、どうせならやっぱり一人じゃなくて優ちゃんと来たかったな。
もう一度月を見上げた。気のせいか地上から見るよりもほんの少し大きく見える。


「………」

月を何かが横切っていた。

「うそ…」

何か飛んでいる。

飛行機じゃない。

近付いてくる。

近付いてくる。

白い三角の翼が、輝く十四夜の月を背にして─────。




風と衣擦れの音に我に返った。

目の前に降り立った怪盗は白い翼をマントに変えて風に靡かせ、私に向かって微笑んでいた。シルクハットを指先で押さえて会釈する。

〝こんばんは、マドモアゼル・有希子〟

〝あなたにお逢いできて光栄です〟

怪盗は恭しく礼をして私の前にかしづいた。

「……怪盗キッド…? 私を知ってるの?」

私の問いに、怪盗はクスリと笑って頷いた。

〝ええまあ〟

〝あなたの息子さんには、いつも手を焼かされています〟

〝あなたから、少し加減をして欲しいと息子さんにお伝え願えませんか?〟

クスクスと笑う怪盗。
若い。
きっと新ちゃんと同じくらいだ。

手を伸ばせば届きそうなほど近いが、怪盗の姿は侵しがたく、私は一歩も動けなかった。動けばこの夢が覚めてしまいそうで。

〝今宵あなたにお逢い出来たのも美しい月の導きでしょう〟

〝あまりに月が明るく美しいので、つい飛びたくなってしまったのです〟

「えっ。じゃあ予告は出していないの」

〝はい。今夜はただ飛びたくて飛んでいただけですので〟

「まあ、本当に月のおかげね! 私もここに来たのは月に近付きたかったからなの。怪盗に逢えるなんて素敵!!」

嬉しくなって、私はその場でくるりとターンしてお姫様気分でスカートを軽く摘まみ怪盗紳士に礼を返した。

小首を傾げた怪盗のモノクルが揺れる。

白い手袋の洗練された指先が差し出された。


どきっ。


心臓が跳ねる。
まるで幼い少女のように。
どきどきして、止まらない。

指先が震えてしまっていたけれど、私は差し出された怪盗の手に自分の手をそうっと預けた。

あ。

ふわり。

くるり。

怪盗の手にリードされて、くるくる回る。
心を爪弾く風のメロディ。輝く月明かりのライトに照らされた魔法のダンス。

続けてターンをすると、怪盗のマントが風を孕んで大きくふわりと膨らんだ。


〝マドモアゼル…名残惜しいのですが、私はもうお暇(いとま)を〟

はっと気付いて振り向くと、怪盗はすでに屋上の柵の上に立って私を見て微笑んでいた。
ポケットに片手を差し入れ、もう片方の手でシルクハットを掴み、モノクルの飾りを揺らして。
優雅な怪盗紳士の微笑みはどこまでも謎めいていて、見る者の心をときめかせる。

〝楽しいひとときをありがとうございました〟

〝ではマドモアゼル、ごきげんよう────〟

「怪盗キッド!」

私の呼びかけに、怪盗の口元が綻ぶのが分かった。

胸がきゅんとなる。

飛び立った怪盗の翼はあっという間に遠ざかっていった。



私はどれくらい呆然と月を見上げていただろう。

何故だか涙が零れていた。

切なくて。嬉しくて。





20130919

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※同カテゴリ『警戒警報』の続編でした…。

●拍手御礼!「ミスター・ローズ」「不協和音」へ、拍手感謝です~っ(^^)/

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