トラベル/トラブル《2/4》(新快前提 3/4組)
カテゴリ★トラベル(新快)
※新一くん視点から…。
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「そんなら窓下の複数の足跡はなんやっちゅうんや?!」
服部が白馬に食い下がる。
「すぐ東には帝丹高校があるんですよ。この家の敷地は校内と校外を結ぶ生徒たちの抜け道になっているのでしょう」
「おい工藤、ほんまか」
「…クラスの奴に〝近道した〟って話を聞いたことはある。ここがそうなら……」
「抜け道がこの家の敷地だけとは限りませんが、隣家の住人がこの庭から生徒が出てくるのを実際に見たことがあると言っています。つまり」
白馬が一度言葉を切って視線を巡らす。現場である二階の一室に集まった服部、俺、高木刑事の三人に向かって。
「外部の犯行に見せかけるため密室は密室ではなくなっていた。家人は何らかの理由があって口裏を合わせ偽証しているのでしょう。さらに事件とは無関係な窓下の足跡が混乱を誘った……。不自然に重ねられた事象が偶然にも単純な真実をあたかも難解な〝トリック〟のように見せかけていたのです」
関係者を再聴取すると言い、慌ただしく去っていく高木刑事と警官たちを見送って、俺はため息を付いた。焦りが招いた俺のミスリードが原因だ……。
服部はまだ釈然としない様子だ。
「結局他殺やのうて自殺いう結論かい。なんで家族が偽装までせなあかんかったんかいのう……。にしても白馬、遅刻なんぞしたことあらへんような優等生が、ようここが生徒の抜け道やってさらっと見抜きよったな」
「ふふ。ワトソンくんがいますからね。今日の僕には」
「ワトソン……?」
服部が白馬に問い返す言葉を聞いて、俺は顔を上げた。
「そうですよ。頭の回転も、逃げ足も早いワトソンくんです」
「………」
白馬が俺をじっと見ていた。
「行きたまえ、工藤くん。誰か待たせているのじゃないのかい。そこを折れた先に僕の家の車がいます。駅まで乗ってゆくといい」
「なんや? 後生大事にバッグ抱えとる思うたら…用事があったんかい、工藤」
「…………」
俺は白馬に頷き、服部にはまた連絡すると告げて駆け出した。
「白馬、えろう気前がええやんか」
KEEP OUTのテープを背に、キャップのつばをくるりと後ろに回し服部がニヤリと笑った。
「仕方ありませんよ。〝彼〟は本当にこの週末を楽しみにしていたんです。本人は普段通り過ごしていたつもりかもしれませんが、何か特別なイベントがあるのだという事は様子を見れば僕には一目瞭然でした」
「ほんなら、そのためにここへ来たんか? 工藤のために」
「工藤くんではなく〝彼〟のためですよ。ここで起きた事件に君と工藤くんが向かったという情報を得たのでね。案の定待ちぼうけを喰らって泣きそうな顔で駅の近くを歩いているところを見つけて拾ってきたのです」
「えっ? アイツもおるんかい」
「ええ。適当に理由を付けて引っ張ってきました。ここが帝丹高校への〝抜け道〟だということは、彼がすぐに気付いたんです」
「はぁ~なるほどのう……。しかしココロの広いこっちゃ。わざわざ工藤とアイツの仲をとりもったるとは」
───キキキキキ、ガシャン!!
「な、なんやっ」
事故?!
エンジンを激しくふかす音。僕と服部は顔を見合わせた。
「どうしたんです!!」
僕の家の車の後部がベコリとへこんでいた。運転手のじいやがへたり込んでいる。
「坊ちゃま……当て逃げです!!」
「怪我はないか?」
辺りを見渡す。人影はない。工藤は……彼は?!
「二人はどこへ行ったんです?!」
「そ、そこから急に車が出てきてぶつかったんです! そのまま行こうとするのを、外に出ていた坊ちゃまのご友人が制止しようとして…でも車は止まらず、真っ直ぐ坊ちゃまのご友人に向かって」
「轢かれたのかっ」
「い…いいえ! 私は腰を抜かしてしまって……目を開けたら、坊ちゃまのご友人は車の屋根に掴まっていて、車は加速してそのままあっちへ…! 後から来たもう一方は、何か叫んで走って追い掛けて行きました」
「なんだって?! どんな車です?!」
「黒のワンボックスでした」
近隣の住人が音に驚いて顔を出してきていた。
服部が再びグイッとキャップを被り直す。
「二人してトラブルに巻き込まれよったらしいな、あいつら」
「そのようですね…」
「よっしゃ、オレも一肌脱いだろか!」
トラベル/トラブル《3/4》へつづく
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※途中のいいわけ……(@_@) とにかく『トラブル』編なので、簡単には新快を旅立たせないよう粘ります~。突っ込みどころありありですが、どうか目をお瞑り下さい! (>_<)(>_<)
[8回]