名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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トラベル/トラブル《4/4》(新快前提 3/4組)
カテゴリ★トラベル(新快)

※快斗くん視点からの続きです。
───────────────────────────

真空の中を漂っているようだ。

俺を振り落とした車がハンドルを切って角を曲がろうとしているのを感覚で意識しながら、俺は宙を舞った。



落ちながら猫のように体をひねる。頭を下にして視線を巡らした。

大丈夫……公園の敷地の柵の上。いったんそこに足を着いて、跳ねれば公園内に着地できる───。

グアアッと何かのエンジン音が近付くのが判ったが、そっちを見る余裕はもう無かった。

柵の上に片足を着く。
同時に何かにぶつかって体勢が崩れた。

なんだ…っ?!

跳べない。
落ちる…!!


・・・どしゃっ。





・・・・・・・・・砂。

ぺっ。砂が口に入った。ぺっ。ぺっ。



胸が苦しい。


なんで……?

なにが、ぶつかったんだ?!

ちゃんと着地できるはずだったのに…。

ぎゅううと胸が締め付けられ、さらに苦しくなった。

声が聞こえる……。なに?

なんて言ってんだ?


か、い、と。


かい、と。

かいと………?




「快斗!!」

目を開けて驚いた。俺の下に誰かいて、そいつが俺の胸を抱くようにして締め付けている。
その腕が工藤のものだと解るまで、さらに数秒かかった。

「快斗! 返事しろっ」

「……工藤かよ」

「快斗!」

腕が放される。ゴロリとからだを返して、上体を起こした。

「無事か、快斗!」

「ばーろォ、どこが無事だ! テメーがぶつかってこなけりゃ、ちゃんと着地出来たんだよ!テメーのせいで砂だらけじゃねーかっ」

見ると、俺の下になっていた工藤の方がもっと砂だらけだった。左頭全部砂だらけ。

「…ぷっ。あはは」

「快斗…」

砂場の中で膝を付いて抱き合った。


きゃっ、きゃっ、と子供の声がして気が付くと、小さな子供を連れた母親が砂場の脇に立っていた。

だいじょうぶなの? キミたち…と心配そうに声をかけてくれながらも、目が興味津々だ。
見回すと、他にも犬の散歩をしてる年配の男性やサッカーボールを持った小学生たちが離れたところからこっちを凝視してる。道にはさっき俺を指さしたカップルまでいた。
慌てて立ち上がり、工藤が〝高校生探偵・工藤新一〟だとバレる前にその場から逃げ出した。工藤の手を引っ張って。



通りの向こうからパトカーのサイレンが聞こえてくる。空にはヘリコプター。
さっきまで俺が屋根に掴まってた黒のワンボックスカー、この様子なら中の連中が別の車に乗り換えてもじき捕まるだろう。

「よう黒羽! …なんや工藤そのツラ」

白いスクーターが寄ってきたと思ったら服部だった。服部にも笑われて、工藤が憮然としながら砂を払いおとす。

「工藤が飛び降りよったあと暴走車追っていったんやが、ギョーサン白バイやらパトカーが集まってきよってん。もうええか思うて戻ってきたわ。ノーヘルで捕まってもアホらしいし」

そうか…。
さっき宙に浮いてる時に聞こえたエンジン音は、服部がいま乗ってるこのスクーターの音だったんだ。スクーターに工藤を乗せて追いかけてきていたのか。

「強盗犯が乗ってたらしい、あの車。速報に出てる」

工藤が携帯の画面を見ながらつぶやいた。

「そんなとこじゃねーかと思ったよ。あの逃げ方」

三人で道端で話してたら白馬んちの車もやってきた。

「無事でしたか、三人とも!」

「白馬…。じいちゃんも大丈夫?」

運転席のじいちゃんもニコニコしている。車ぶつけられて真っ青になってたけど、停車中だし不可抗力だ。弁償してくれる相手じゃないだろうけど、白馬んちなら問題ないだろう。じいちゃんは悪くない。

白馬も車を降り、微笑んで近寄ってきた。

「スクーターも無傷のようで安心しました。持ち主の男性には工藤くんからよくお礼を言って下さい」

「そやな。傷でも付いたら工藤に弁償さすとこや。まぁオレの安全運転なら傷なんか付かへんけど」

「どこが安全運転だよっ!」

工藤が服部にキレ気味に突っ込んでる。
みんなで笑った。

───落ち着いてきて、やっと本当に状況が分かった。
車の屋根に飛び乗った俺を、スクーターで工藤と服部が追いかけてきていた。そして俺が車から振り落とされた時にちょうど追い付いて、工藤が俺を助けようとして飛び付いたのか……。
助けるっつーか、着地を邪魔されたんだけど。

やっと工藤に逢えた。
俺たちの休日、もう半日過ぎちゃったけど。

こほん。と、工藤がわざとらしく咳払いをする。

「事件は白馬の推理に沿って後は警察に任せればいい。快斗も無事だったし、そろそろ…」

工藤と目が合った。なんか頬が急に熱くなる。

「では行きましょうか、黒羽くん!」

グイッと白馬に腕をとって引っ張られた。

「え?」

「先ほどの駅前まで送りますよ。スピードは出せませんが車は動きますから。なんなら自宅まで送りましょう!」

「え、…え?!」

ぐいぐい白馬に連行される。振り向くと工藤は工藤で服部に捕まっていた。
服部が思いっきりニヤついている。



わかるで、白馬!!
いくらココロが広うても、この二人に目の前で赤うなって見つめ合ったりされよったら、そらあアタマくるわな。しゃーないわ。コイツら自業自得や。けけけ。

「工藤君のバッグです! ではごきげんよう!」

白馬が工藤の荷物を放り投げてよこし、ドアを閉める。走り出す車の窓から白馬越しに黒羽が泣きそうな顔でこっちを見とる。お情けでアイコンタクトくらいは邪魔せんといたろかい。

「ほんならオレらも戻るで工藤。スクーターの持ち主にお礼せな。菓子折りくらい買うてかなあかんで」

「ああ…」

行き過ぎる車の窓の奥から縋るように工藤を見詰める黒羽。泣けるシーンや。ざまぁみろやで。くくくく。



俺は快斗に口の動きで伝えた。

〝現・地・で・逢・お・う〟。

快斗は頷いた…と思う。

快斗───。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


トラブル続きだ。
やっぱり俺たちうまくいかない。
俺は白馬んちの乗用車のふかふか後部座席に背を沈み込ませてため息を付いた。

「砂だらけですね、黒羽くん」

「はらったんだけど……。ゴメンじいちゃん、車に砂落ちちゃうな」

「あとで掃除しますのでご心配なく。それよりボディのへこみがショックですよ。初めて車を傷つけてしまいました」

「じいちゃんのせいじゃないよ」

運転手のじいちゃんを慰めてると、白馬の視線がまともに横顔に当たってるのに気が付いた。

「……気が変わりました。このまま僕の家に行きましょう。今日は君を離さない」

「は? 何言ってんだよ白馬」

「君と二人になるチャンスですよ。僕にとってまたとない。決めました。今夜は僕の部屋にお泊まりなさい。逃がしませんよ」

「ふざけんな、じいちゃん停めてよ! 俺降りる!」

「じいや、いいから家に向かって下さい」

「は、で、でも坊ちゃま」

ここで押し問答してもじいちゃんを困らせるだけだ。俺は黙り込んだ。
白馬のやつ、何で今度はジャマすんだよっ。見てろ、絶対脱出してやる。俺を捕まえとこうなんざ無理なんだよ。

絶対に逃げ出す。

今日は約束があるんだ。

目的地まで必ずたどり着く。

逢いたいやつがいるんだ……。
バカやろうだけど、俺の下敷きになって砂だらけになったアイツに。

今日は絶対、逢いたいんだ。








20120715

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※なんとか4回で無理クリまとめました...。ハチャメチャな話にお付き合い下さいまして、ありがとうございました!


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