名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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《痣(あざ)》(2/2)
(新快前提)白馬→快斗
――――――――――――――


白馬が怖かったわけではない。

だが。

(背を見せて、走って逃げ出すなんて……)

情けない。

四方を囲まれた狭い部屋で、目の前を塞ぐように立たれた時、不意に鼓動が速くなって汗が噴き出した。


あれから一週間と少し。
頭では切り放しているつもりでも、散々に荒らされた体は勝手に怯えて震え出す。

通り過ぎた事だと何度も自分に言い聞かせる。

誰にも頼れない。自分で乗り越えるしかないのだ。



―――――――


僕はあれからずっと黒羽を観察していた(特にトラブルがなくても以前からそれは同じなのだが)。
怪我の理由を知りたい気持ちは強かったが、先日の黒羽の様子を思い出して自制していた。時折黒羽と目が合う事もあったが、黒羽はもちろん黙して語ることはない。

そうしているうち一日ごとに黒羽の顔の痣は薄れ、それに伴って笑顔が増えた。周囲の友人達とも屈託なく騒ぎ、たまには幼なじみの彼女とも一緒に下校している。全く以前のままの黒羽に戻ったようだ。
ただ、左手の包帯はサポーターに変わってはいたが、外される様子はなかった。




「…白馬」

「今日は逃げないんですか」

放課後の屋上。

部活の生徒達がグラウンドを駆け回っている。時折風に乗り、体育館からホイッスルの音も聞こえてくる。よく晴れた日の夕刻だった。

屋上で一人、黒羽は金網に寄りかかって佇んでいた。

「最近よくこうしていますね」

「……ああ」

どうした風の吹き回しか、今日はまともに僕の言葉に返事を返してくる。嬉しいような不思議なような気持ちで少し間隔を開けて脇に立つと、黒羽も自分で不思議だったのかこちらを見て小さく苦笑いをした。

いかん。

たったそれだけでときめいてしまう。僕に心が向いてないことが分かっていても。僕にとってはどこまでも罪な相手だ。

「俺…白馬に礼を言おうと思ってた」

「僕に?」

「黙って見ててくれて、ありがとな」

「何のことです」

「いや、何でもない。俺行くわ」

そう言ってまたすぐ目の前から去ろうとする。
僕は思わず――今を逃したくなくて――歩を踏み出し、行き過ぎようとした黒羽を抱き寄せた。

拒絶されるだろうと思ったが、黒羽はじっとしていた。俯いていて表情が判らないのがもどかしかったが、僕にとっては初めての抱擁で――舞い上がるなという方が無理だった。

腕に抱いた鳥の脆い羽が傷まぬように…そんな思いで、僕はひたすら包むように黒羽を抱き締めた。温もりと、微かな震えを感じながら。


「…白馬、俺、もう行く」

「キスはさせて貰えませんか」

「探偵はやだよ。こりごりだ」

つまり工藤と同じ探偵の僕もごめん被(こうむ)るという事か――。

「工藤くんと何があったんですか」

「何もねーよ。何でも知ろうとすんなよ。せっかく礼言ったのに」

じゃあな、と向こうを向いて言うと、黒羽はあっという間に目の前から消え失せてしまった。切ない想いと風に揺れていた柔らかな髪の記憶と、儚い温もりだけ残して。


黒羽にとって高校生活という日常が彼自身の均衡を保つためにどれだけ大切かはそばにいて見ていればわかる。それを守ってやりたい。

そして願わくばそう遠くない日に、もう一度抱きしめたい。僕にとって謎に満ちた彼を。黒羽快斗を――。




20111001



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