リハビリ《C 3/3》R18
(新一×快斗)
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扉を開けた時の、快斗の青ざめた顔。
俺に見られたくなどなかっただろう。傷だらけの顔で。傷だらけの肌を晒して……。
「…工藤……くどうっ……」
「快斗」
しがみついてくる快斗を抱き起こした。それでもさっきより落ち着いている。
シーツの上に向かい合って座り、脚を開かせようとしたが、俯いたまま快斗が首を振る。
頭を抱いて宥めると、ようやくおずおずと快斗が脚を動かした。手を添えて、俺の左右に片足ずつ投げ出させる。
そのまま左腕で肩を抱いた。
「指…挿れるぞ。塗ってるから…そのまま…動くな」
快斗が唇を噛む。
肩が大きく上下して、吐く息が熱い。快斗が息を吐くタイミングで一つ、二つと続けて挿れていった。
ハッとしたように快斗の体が反応する。
挿し入れた指が収縮する快斗の体に締め付けられた。
(ああ…!)
後ろが侵される感覚を、どうしても体が恐れてしまう。工藤だと分かっていても、凌辱を刻まれた体が忌まわしい記憶ばかりを再生させる――。
ゆっくり指を動かしながら快斗が慣れるのを待った。焦ると苦しめてしまう。
「あっ…、工藤!」
不意に堪えきれなくなったように快斗が震え、さらに締め付けがきつくなった。
「快斗…目、開けろ」
快斗が首を振る。
「大丈夫だ、目、開けろ」
もう一度言い聞かせるように言うと、快斗が睫を震わせながら瞼を僅かに持ち上げた。
口付ける。押し当てて、そっと包んで涙で濡れてる顔中を唇で拭った。
『しょっぺー』と俺がつぶやくと、快斗が溜息をついて僅かに微笑んだ。気のせいか強張っていた体の力も少し抜けた。挿し入れた指をさらに深くする。快斗が俺の首に掴まってきたので、肩を抱いていた左手を放し、その手で快斗の中芯を探った。
快斗が『あっ』と小さく叫ぶ。みるみる膨らんだ自分を恥じるように頭(かぶり)を振った。
後ろに俺の指を含んだままで混乱してるんだろう。快斗は息を火照らせ動くに動けないもどかしさに声にならない嗚咽を漏らして喘いでいた。
透明な雫が湧き出る先端を丸く数度なぞると快斗が小さく声を漏らしてびくびく震える。焦らさずに一気に全体を強く先から付け根へと包むように握りしめた。
「―――あ、あっ……!!」
快斗が背をシーツに沈ませる。
自分の腕で顔を隠すように覆うのをどけさせた。
「快斗…こっち見ろ」
「……無理」
「ちゃんと見なきゃダメだ」
「…………」
熱く腫れた瞼を快斗が重たそうに開く。何度か瞬きして、やっと俺の方へ瞳を動かした。
「工藤……」
「そうだ。…いくぜ」
快斗の後ろに俺を押し当てると、快斗が瞳に隠せない怯えを浮かべて目を見開いた。
「あ……!」
そのままゆっくり埋め始めた。顔を背けて声を押し殺している快斗の腕を辿り、両手の指を絡める。
「快斗…大丈夫だから、力抜け」
「で、できな…、あっ」
「快斗…!」
快斗が揺れている。上手く力が抜けたと思うと、次の瞬間きつく締め付けられて俺も思わず声をあげそうになった。
上体を倒して快斗の胸元に口付ける。そうして目を堅く閉じた快斗の名を繰り返し呼び続けた。
やがて、ふっと快斗の体の強ばりが解ける瞬間が来た。それを逃さず押し進めると、快斗が首を仰け反らせて大きく喘いだ。そうして俺はようやく最後まで俺自身を快斗の中に埋めきることが出来た。
快斗の眦(まなじり)から涙が伝っている。胸が痛んだ。快斗に少しでも歓びを与えてやりたかった。
「快斗…動くぞ。あまりキツかったら言え」
「――だ、いじょう、ぶ……」
快斗は気丈に返事をした。
「よし……」
ゆっくりと強弱をつけて俺は律動を開始した。
工藤だ。覚えてる。
これは工藤だ。俺の中で、いま工藤が動いてる。工藤の熱い塊が、俺の中を探って…深く、奥を突いてくる――。
「…あ、あ、ああっ!」
「快斗…!」
快斗が俺を感じてる。
以前の快斗の反応だ。快斗。そうだ、俺だ――!!
「あっ、あ、くど…う……!」
一気に上り詰めた。
全身が火のように熱くなる。
快斗を俺だけのものにしたくて、気がつけば俺は加減も何も忘れてただ夢中で快斗を突き上げていた。
「快斗……ウアアッ…!」
最後は俺の声の方がでかかった。
快斗の胸の上に倒れ込んで、荒い呼吸に喘いでいると、背を抱かれて我に返った。
「あ…。かいと……」
俺の方が赤くなっていた。
あれだけ快斗を気遣っているつもりだったのに、最後は自分だけ夢中になってしまった。俺のバカ。
「快斗…ワルい、俺」
「大丈夫……」
快斗は微笑んでいた。
無理に…じゃなくて、本当に穏やかな――優しい微笑みだった。
「快斗!」
俺は嬉しくなって快斗の首に飛び付いた。そんで、顔中にキスした。ほんの少しイジワルしておでこのタンコブにも。
快斗がクスクス笑った。
「なんだよ」
「だって……工藤、声でかかった」
「ば、バカヤロー!」
「うそ。……ありがと。工藤」
快斗の表情が違う。確かに違う。
「快斗……」
「なんか…全部吐き出したら…スッキリした。ラクんなった気がする」
だったら――本当にいいのだが。
「これからまた何度でも抱いてやるよ」
「……結局やりたいだけじゃん」
「バカ。ちげーよ」
それからウトウトして、夜中に起き上がって二人一緒にシャワーを浴びた。たっぷりいちゃついて、素直に笑う快斗の可愛さを俺は心行くまで堪能して――そして眠った。もちろん快斗と並んで。
もう絶対離さない。
白馬……テメー今度会ったらキッパリはっきり言ってやる。
『快斗に手を出したら許さねぇ』。
やっと、やっと取り戻したんだ。
俺の……俺の、快斗――。
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《エピローグ》
「黒羽くん、おはよう」
「白馬」
「先日は失礼。おかげでまだ腫れが引きませんよ」
白馬が自分の額を指で指し示す。
「言っとくけど、それ1カ月以上かかるぜ」
「エッそんなに?」
「ハハッ。ザマーミロ」
少し黙り込んだ白馬が俺をじっと見て微笑んだ。
あっ、と思ったら白馬の手が伸びて俺の左手を掴み、貼ってあった絆創膏をビッと剥がした。
「てっ。何すんだよ!」
「なんだ。たいした疵じゃないじゃないですか」
「………」
「こんなもの、もういらないでしょう。とっくに完治してますよ」
「…白馬」
白馬はそのまま背を向け教室に入っていった。
チャイムが鳴る。
俺も慌てて教室に走り込んだ。
20120105
[9回]