後悔《1/2》(新一×快斗)
※普通の高校生BLパラレルな続編。快斗くんが特に純情なのがコンセプト、新一くんも比較的カワイめです。
※前回の『濡れ衣』翌日、新一くん視点にてスタート。
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サッカー部の仲間と居残り練して遅くなった帰り道。
仲間と別れて歩き出したら、いつの間にか目の前に学ラン姿の背の高い男が立っていた。
「工藤くん」
「白馬…!」
驚いて思わず立ち止まった。
「なんだよ、なんでおまえがここにいんだ? オレに用か」
白馬は頷くと、オレを促して歩き出した。
「実は……黒羽くんの事で君に頼みがあって来ました」
「快斗の?」
白馬がオレに、なんだろう。
快斗には昨日何度かメールを入れ、留守録も入れておいたが、折り返しの連絡はこなかった。今も携帯を確認したばかりだが、やはり着信はなく、これからまた電話しようと思っていたのだ。
「本来なら恋敵である君に縋るのは、僕としてもプライドが許さないのですが」
「前置きはいい。快斗がなんだよ!」
「黒羽くんに逢いに行ってやってくれないだろうか。できればすぐに」
「…………」
背後から走って来た車を一台やり過ごしてから、オレは訊き返した。
「おまえがそれを言いに、なぜわざわざ?」
「残念ですが、僕ではダメだからです」
オレの問いに横顔を曇らせた白馬がつぶやく。
「僕は後悔しています。黒羽くんをこんな形で苦しめるのは本意ではない」
「………」
「彼が好きです。その気持ちに偽りはありません。しかし…こんな事になってしまっては」
白馬が何を言っているのか分からなかった。オレは言葉を濁す白馬を残して駆け出した。
快斗に逢わなきゃならない。少しでも早く。快斗の笑顔を確かめたかった。
なかなか繋がらなかった電話が、やっと通じた。快斗の家にほど近い川の遊歩道まで来ていた。
「快斗! どうしてたんだよ」
『あ……ごめん、新一。マナーモードにしたままで…気が付かなくて』
快斗の嘘はすぐに判る。少し迷ったが、オレは率直に言った。
「ばーか。そんなわけないだろ?」
『…新一』
「いまどこだ? 家か? これから行ってもいいかな」
『えっ』
少し慌てた様子の快斗の声。
『でも、もう時間けっこう遅いよ』
「逢いたいんだ、すぐ行く」
『新一、でも俺、まだ家じゃないんだ』
「ドコにいるんだよ?」
『……………』
「快斗」
『…いま、川原の堤防の近く』
遊歩道から乗り出して快斗を探す。すぐ近くだ。だが暗くてよく見えない。
オレは大声で快斗の名を呼んだ。
「かいとー!」
『え…? 新一、どこにいるの』
「かいとー!ここだ!」
『新一?』
灯りの下に走り出てきた快斗が見えた。
「新一!」
「快斗!!」
快斗もオレを見つけた。オレは階段を走り降りた。快斗も真っ直ぐ走ってくる。
「快斗……見つけたぜ!」
「新一!」
ぶつかるように交差した快斗を抱きとめてぐるんと回して、それからぎゅぎゅーっと抱き締めた。
快斗がうえっと声を出す。
「新一、苦しい」
「ばーろ! オレの電話シカトしたバツだっ」
「ごめん、新一。俺……」
俯く快斗のオデコにオデコをコツンとぶつける。
「真っ暗だぜ。帰ろう、送るから」
「……うん」
家に着くと、快斗はオレの手を握って玄関の中へ引っ張った。
「いいのか? 」
オレの両親も快斗の母親も海外に長期滞在中で、お互い一人暮らしなのは知っていた。だけど快斗の家に上がるのはこれが初めてだった。
「ほんとは新一に逢いたかったんだ。でも昨日は電話できなくて」
はにかんだように笑って快斗がそう言った。だが、オレが本当に見たい笑顔とは違う。
「白馬が心配してたぜ」
「えっ」
「アイツ、今日オレんとこまで来てさ。快斗に逢いに行ってくれって」
「白馬が新一に?」
快斗が驚いた顔をした。
「オレは快斗に本当のことしか言わないぜ」
「…………」
「快斗?」
「俺は……新一に言えない事ばかりだ」
「快斗」
何があったんだ、と喉まで出かかったが飲み込んだ。問い詰めるような事はしたくない。快斗の肩に手を乗せて微笑んだ。
───ぎゅるる。
「げ」
突然腹の虫が鳴った。しかもめちゃくちゃ玄関の上がり框に響き渡った。
こんな時に超カッコ悪りぃーっ(@@)!!
「あはは。そうだよね、もう7時半だもん。新一も今日サッカーの練習だったんだろ」
オレのスポーツバッグを見て快斗が笑った。さっきよりもずっといい笑顔。結果オーライってやつ(^^;)。
「快斗も部活だったんだろ?」
「うん。そう言えば、なんだか急に減ってきちゃった。なんか軽く作るから食べよう!」
腹が減っては始まらない。
快斗に何があったのか、白馬が何の事を言っていたのか、まだ全く分からなかったけど、今日のところはこれでいい。
快斗のそばにいられれば。一緒にメシ食おう。そうすれば元気も出てくるさ!
二人で顔を見合わせて、それからオレは快斗に家の中へと案内された。
後悔《2/2》へつづく
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※ここで切ろうかと思いましたが、もうちょっとだけ続けます。さほどの展開はない予定…(*_*;
[2回]