名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
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プロムナード《3/3》
カテゴリ★17歳
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ターンするごとに会場の手拍子や拍手が大きくなる。

工藤も…やっぱり俺が女だったら……なんて思ってるのかな。
いくら完璧に化けても。俺は俺なのに。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


黒マスクの工藤と女性に変装した黒羽のペアが注目を集めるダンスフロア。喝采を送る客人たちの輪の中から、そっと抜け出てきた人物がいた。

その人物とは。
N医大名誉教授の娘婿。すなわち、このパーティーにおける主役の身内であり、僕らに今回の依頼を持ち込んだ本人である。

僕は会場の隅の目立たぬ場所で娘婿の前に歩み出た。
『あっ…、探くん』と娘婿が僕を見て立ち竦む。
僕はいたって穏やかに微笑みかけた。

「どちらへ? ご主人。もうすぐお義父上のスピーチと花束贈呈ですよ」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・



気が付いたら、曲が終わっていた。

ぎゅっと工藤に抱き寄せられて体が熱くてどきどきして、俺はようやく我に返った。

拍手に応えて工藤が俺の手を掲げて客達に軽くお辞儀をする。俺も慌ててスカートの裾を摘まんでバレリーナがするような(片足を後ろに回し軽く腰を落とす)挨拶をした。

ふと息を付いて顔を上げ、何か違和感を覚えて目を凝らす。

笑顔の客達の後方。
背を屈め、足早に行き過ぎる一人の男。
人の顔を盗み見るように目配せをして─────。

「!」

男は俺の視線に気付いていなかった。
テーブル席の椅子に置かれた女物の小ぶりなポーチをさっと掴んで上着の中に入れる。

「快斗!」

工藤の声が聞こえたが、俺はもう飛び出していた。
客達の隙間を縫い、最短距離を駆けてドアの前で男に向かい合う。
男はギョッとした顔で俺を見て立ち止まった。

正装してはいるが男の服はシワが目立ち、不自然にポケットが膨らんでいる。なにより全身から場にそぐわない賎しさが漂っていた。
舌打ちした男が『どけ』と怒声をあげながら俺に向かってくる。半歩体を回転させて避けつつヒールを出して男の足を引っ掛けた。
男が前につんのめる。その背に肘を打ち込んだ。
ぐえっ、とこれまた品のない声を上げて男が敷物の上に突っ伏した。

きゃあ、どうした、と異常に気づいた近くの客達がざわめき始める。転がった男のポケットからは財布やカード入れがこぼれ落ちて散乱していた。

「この人、泥棒です!」

俺が叫ぶと、男は起き上がりざま盗んだ財布を拾い遮二無二にドアに向かって突進した。

バァン!!!

男が開けようとしたドアが反対側から勢いよく開く。ちょうどドアの角が男の顔面にヒットした。
男が鼻を抑えてひっくり返る。
脳震盪でも起こしたのか、呻き声を上げて男は床にうずくまった。

「服部…!」

ドアを開けて現れたのは片手にトレイを下げたウェイター姿の服部だった。

「アラ? なんでや。〝ターゲット〟ちゃうやん。誰や、このオッサン」

「快斗、服部」

マスクを外した工藤も寄ってきた。

「とんだ珍客が紛れ込んでいたようだな。受付が席を離れた隙にでも入り込んだんだろう。コイツは警察に引き渡す。バンケット狙いの置き引き常習犯ってとこか」

─────ねえ、もしかしてこの人、高校生探偵の…。

─────ウェイターの子も見たことがあるわ、確か、西の。

そんな客達の囁き声が聞こえてくる。

窃盗の現行犯をとっ捕まえた俺たちは騒ぎがこれ以上大きくならないうちに慌てて廊下へ出た。

少しすると、主役の感謝のスピーチが会場から聞こえてきていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


─────なぜ、こんなことを。

僕が問うと、娘婿は俯いてしばし沈黙した後、こう言った。

〝先生があんまり高潔に過ぎるから〟。

そこには長年溜め込んだ負の感情が滲んでいた。
部下として仕え、また入り婿として日々身近に過ごす中で、他人には伺いしれぬ鬱屈した感情が膨らんでしまったのだろうか。
医師として崇めるように抱いていた〝尊敬の念〟がいつしかマイナスの方向へと歪み、それが卑屈さとなって、自身の能力への周囲の過小評価に対しての怒りとなっていたのかもしれない。

─────ですが、お義父上は、おそらく脅迫者はあなただと薄々察しておられたようです。

そう告げると、娘婿は肩を震わせ『私はあの家を出ます。探くん、こんな事をして本当にすまない』と言った。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



工藤が娘夫婦に予めパーティーの間父親の側を離れないよう指示していたのは、娘婿が脅迫者であると目星をつけていたからだったのだ。
娘婿は義父や妻の側から迂闊に離れる事が出来ず、ダンスフロアに皆の視線が集中したあの時になってようやく動いた…という事らしい。

それを白馬も服部も解っていた。
つまり、探偵どもは三人とも脅迫者が娘婿であると最初から見抜いていたのだ。

「そうすっとさ、あの夫婦は離婚とかになっちゃうわけ…?」

翌日ミーティングに集まった阿笠邸で俺が訊くと、白馬がまさか、と笑った。

「だって父親を脅してた犯人が自分のダンナだったなんてすげーショックなんじゃねえの、フツウ」

「脅迫といっても、いずれも漠然とした内容のものばかりで実害はなかったそうですし」

「それでも怖かったから相談に来たんだろ。昨日だって何をやらかす気でいたんだか」

「夫君のポケットから出て来たのは爆竹ですよ。天井に近い設営用の小窓から火を点けて投げ入れ、少しばかり騒ぎを起こそうとしたようだ」

「爆竹を…?」

ガキの悪戯じゃん。

「ええ。ですから本当に深刻な被害を及ぼそうと思っていたわけじゃない。もともとは人の良い大人しい人物です。鬱積した感情を発散させる術を持たず、自身の劣等感の対象である義父を〝脅迫〟する事で密かに溜飲を下げていたのでしょう」

「まぁでも、そうは言ってもな」

「教授は察していたからこそ警察に通報しなかったんですよ。奥方も内心はもしかしたらと思って悩んでいたようです。夫君はかなり前から鬱病のようになっていたそうだから」

「じゃあ…つまり、どうなるんだ?」

「どうもなりませんよ。元のサヤです。大丈夫、和解出来るでしょう。昔から仲のよい夫婦だったそうですし、教授も娘夫婦を気遣って力になりたいと言っています。引退を決めたのも娘婿への配慮だったんですよ」

なんだかな。それであの教授一家のわだかまりが薄れていくのならいいけれど。
俺は半分納得し、半分どーなんだろと思いながら探偵三人を見渡した。

「で…、おまえら、いつから解ってたんだよ」

「娘婿が脅迫犯だったって事ですか? 最初に夫君の言動を見聞きした時ですね」

「そうやな。目の焦点合っとらんし、そわそわして汗ばかり拭きよって落ち着かへんし、話は曖昧やし。推理するまでもないで」

「義父が警察に通報しないのには何か訳があると思ったからさ。もしかしたら犯人は身近な人物で、心当たりがあるからじゃないかって思ったんだ」

白馬と服部と工藤が何でもない事のように言う。
探偵の慧眼ってやつなのか。
俺は…正直気が付いていなかった。
少し悔しい気がして黙り込むと、服部がハハハと笑った。

「黒羽、おまえ自分が〝探偵事務所〟の一員やって意識がまだちょいと薄いんや」

「そうだな。依頼人が訪ねてきた時、快斗だけ席を離れて窓際にいただろう。あれじゃ細かい表情の変化を見たり、話の内容をチェックして推理するためのヒントを得ることは出来ない」

「協力はするけど…ってスタンスですからね、今のところ黒羽くんは。それでも僕らにとっては十分ですし、実際君の変装による潜入が果たした今回の実績は大きい」

「…へん。どうせ俺は探偵じゃねーし。おだてたって何もでねーぜ」

コンコン、とドアがノックされる。四人で一斉に振り向くと、宮野さんが顔を覗かせていた。

「工藤服部白馬探偵事務所に依頼の問い合わせよ。電話番号聞いておけばいい? 昨日のパーティーに来ていたK株式会社取締役社長のご夫人ですって」

さっそくの新規顧客だ。
事件は伏せてあるが、飛び入りの窃盗犯を捕まえた話は口コミで広がっているらしい。

「ねえ、それよりあなたたち」

宮野さんが腕組みしてこっちを睨んでる。何でいつも不機嫌そうなのかな? イイセンいってるのにもったいない。

「何かもっといい探偵事務所名を考えなさいよ。 長くて取り継ぐのが面倒!」




新たな依頼には近日中に白馬と工藤が対応し、内容によっては連絡を取り合い、また四人で集まろうという話になった。
白馬に迎えの車が来て、服部がそれに便乗して帰って行った。

工藤と二人になって、さっきまで賑やかだった部屋が急にしんとなって、なんだか淋しく感じてしまう自分がいた。

「どこ行く、快斗」

「どこって…俺も帰るんだよ。ミーティング終わったし。それに」

「なんだ」

「当たり前みたいに名前で呼ぶな」

「だめか? 名前で呼んだら…」

工藤が眉を曇らせるのを見て、俺の了見が狭くて悪いこと言ってるような気になってしまう。

「…まあ、別に。その方が呼びやすいならそれでもいいけど…」

「本当か。それならこれからも快斗って呼ばせてくれ」

「……………」

なんだかコソバユクて、こっ恥ずかしくて、顔中が熱くなる。

オレんち寄ってけよ、面白い本があるんだ。そう言って俺を誘う工藤の頬もなんだか少し赤く見えた。





20131104
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《いいわけなあとがき》
※まとまりきりませんがこの辺でやめときます(汗)。白馬くん&服部くんのシーンがあったのを端折っちゃいました~(x_x)。白馬くんと服部くん、最後は新快を二人にしてあげたんですね(^^;)。
※快斗くんがキッドであることは探偵連中にバレバレなんですが、暗黙の了解的にその事については棚上げになってるという状況です…ツゴウイイ←(^。^;)。


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「月光という名の真実」「悪夢」「堕落」「拷問」「決意」「easy」「プロムナード1・2」へ拍手下さった皆様、ありがとうございます(^^)!!!  
ちょっと懐かしいブログ初期のお話も読んでいただけて嬉しいです~。

★あゆみ様、簡潔にしてストレートな感想コメントありがとうごさいましたっ。すごーく、嬉しいです~(*^^*)!!


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