呪縛《2/3》(白馬×快斗)
※つづきは快斗くん視点より。
────────────────────────────────
放課後。俺は悪友たちと校庭の隅っこでスリーオンスリーをやってた。
帰宅する生徒たちが足を止め、少しずつ人集りができる。
強い視線を感じて振り向いた。
生徒たちの人垣の後ろに、頭一つ高い白馬が立っていた。
「わっ」 「危ねっ!」
よそ見してたら、相手チームのヤツにマトモにぶつかっちまった。俺は手を着いただけで済んだが、相手のヤツは派手にすっ転んだ。
「ぐああ、痛ってええぇ~。快斗ぉ…オレ様を止めるために、よくも」
「ち、ちげえよ!! ゴメン、わざとじゃ」
わかってるよ~快斗。
悪友はコソコソ言ってニカッと笑った。
「せっかくギャラリーが増えてきたから、盛り上げなきゃと思って」
「んだよ…人をワルモンにして」
「あっ、イテテ。やべマジ足ひねった」
立てるけど、動き回るのはちょっと…、どうする? 仕方ねえ、切り上げるか…とか話をしていて、周りの人垣が散り始めた時。
「仲間に入れてもらえませんか」
は?
俺含め六人でいっせいに声の方を振り向いた。
白馬だった。げ。マジ?!!
「皆さ~~ん! 白馬くんがプレーしますよお!! 戻ってきて下さぁあい!!」
ア、バカ、と俺が止めようとした時にはサービス精神旺盛な悪友が大声を張り上げていた。
「え~っ?」「 きゃあー! 白馬くーん!!」
「…チッ」
思わず舌打ちしちまう。
あっという間にさっきまでの倍にギャラリーが膨れ上がる。どおすんだよ、これっ。
「女子の皆さんの前で白馬と対等もしくはそれ以上に活躍すれば、あなたの人気も即あーっぷ!」
「何が即アップだよ。絶対俺たち敵役じゃんか」
足を捻った悪友は調子良くワハハと笑って、それはおまえら次第だろ。ホレ頑張んな! と言って自分はちゃっかり腰を下ろして観戦体勢に入った。
白馬が制服の上着と学生鞄を通りかかった青子に預けている。
「お手柔らかに」
「白馬、おまえスリーオンのルール知ってんのかよ」
「シュートを決めればよいのでしょう」
柔らかな前髪をかきあげ、ふっと横顔で笑う。なんかカチンときた。
ま、いっか。とりあえず5分やってみて、白馬が使えねえか、これ以上ギャラリーが増えて運動部に迷惑かけるようなら撤収だ。
白馬のヤツ…どんなつもりか知らねーが、学校でだって探偵なんかに負けっかよ。
さっきの悪友が手をパン、と叩く。ゲーム再開!
オフェンスの俺たちはパスを素早く回して速攻でゴール下へ。バウンドパスを受け取ってシュート!!
「あっ」
長い手が横から伸び、邪魔される。白馬! わあっと歓声が湧く。
こ、この~。油断したっ。もう一度パスが回ってくる。横っ跳びしながらシュート!
─────よっしゃ入ったぁ! へへん。
攻守交代。トップからのスタート、白馬が右手にパスする。一度渡ったボールを仲間が白馬にすぐ戻す。ドリブル出来んのかコイツ?と思ってるうちに白馬がその位置からシュート体勢に入る。
なにいっ…。
まさかの白馬のロングシュート。誰も付いてなかったので、ノープレッシャーで放たれた白馬のシュートボールは─────
高く弧を描き、リングに触れることなくスポン、と、網を揺らしてゴールに吸い込まれた。
どっかーん、と大歓声が巻き起こる。
うあああ、うるせえっ、気が散るっ!
白馬の野郎っ、油断させやがって…やるじゃねえか。
白馬チームの他の二人も、白馬がバスケ出来ると判ってがんがんパスを回し始めた。
「快斗、ゴール下!」
「おう!」
高さがなんだ! テクニシャン快斗様を舐めんじゃねえっ。
白馬がプレッシャーをかけてくる。んなもん〝へ〟でもねえぜ!
ジャンプしようと屈んだ時、なにかを踏みつけた。
「?!」
がくっと膝が落ち、バランスを失う。ボールを手にしたまま、斜めに崩れ落ちた。
スローモーションのように白馬の顔が目に入った。俺をじっと見詰めて…明るい茶の瞳が、どんどん大きくなる─────。
おい、どうした! 先生らしき声がする。
すみません、ゴール下で僕の足に乗ってしまって…。これは白馬の声だ。
薄く目を開けると、目の前が暗かった。
瞬きする。
暗いのは誰かが俺を間近で覗き込んでるからだ…。近えな。誰だよ。
〝キッド、君は大丈夫なのか?〟
─────え…?
記憶が混乱する。
目の前にいるのは白馬探。
今は、いつだ…?
俺は今、怪盗キッドなのか…?
「快斗!! しっかりして!」
「あ…」
「快斗! よかったぁ、気が付いたみたい」
青子の声。
腕を掴んで抱き起こされる。白馬だ。
あー、黒羽は先生が保健室に連れていくから大丈夫! みんなもう解散! 帰った帰った!
「…………」
俺は膝を着いて、自分で立ち上がった。
ポンポンと、誰かに背を叩いて土を払い落とされる。
快斗、無理しないで。 青子の声。
黒羽くん、すまない。 白馬の声。
少しじっとしてろよ、快斗。 悪友たちの声。
こら黒羽、おんぶするから動くな。 先生の声。
俺は全部無視して、自分の荷物をひっつかむと走り出した。
俺の名を呼ぶ青子の声がした。
頭がぼーっとして、くらくらしていた。
ぼーっとしたまま、白馬の前にいてはいけない気がした。
呪縛《3/3》へつづく
────────────────────────────────
※アレレ…慣れないバスケシーン書いて脱線しました。もう一回追加です(汗)。タイトルに添った話に戻さないと…(+_+);;;
[9回]