◎年末ぷち白快SP◎
メビウスの月(白馬×キッド)
カテゴリ☆噂の二人《番外編》
※白馬くん視点。
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凍える夜。冴えた夜空に白く浮かぶ半月を、僕は自室の窓から見上げていた。
こんな夜は思い浮かべる…白い姿の怪盗を。僕の恋人である彼の〝もう一つの姿〟を。
もし僕が彼にとっての禁忌の扉を押し開けようとしたら、どうなるだろうか。
手に入れた想いを、僕は失うことになってしまうのだろうか。
「黒羽くん…、どうすれば僕は真に君の力になれるだろう?」
そしてまた答えのない堂々巡りの輪に陥る。
この無限の輪を抜け出すためには、僕は今よりもっともっと〝力〟を付けなければならない。
何があろうと、何が起きようと、君が君自身を見失わないよう。無闇に彷徨わぬよう。君を護り通せるだけの〝力〝を。
「…頭を冷やそう」
英国の友人へ向けたメッセージを打っていたのに、気付けば月を見上げて溜息ばかり付いていた。
家の者に見つかると心配するので、僕はこっそり裏門から外へ抜け出した。
昨日の雨が路面に残り、早くも凍り始めている。夜道は所々街灯を映し白く煌めいていた。
───逢いたい。
足が勝手に彼との思い出の場所を目指している。彼がいるはずもないのに。
電話してみようかと思いながら、それも出来ない。こんな中途半端な気持ちで深夜に君を呼び出すほど、僕は身勝手にはなれない。
どうしているだろう。
もう布団に入って眠っているだろうか。もしや次の〝仕事〟のために何か企てているのだろうか。
よもや危ない真似をして、どこかで独りうずくまり動けなくなってはいないだろうか…。
急に不安になる。
一度よくない想像をすると、後はどんどん悪いことばかり考えてしまう。
もし、彼を失ったら…。
そんな事まで想像し、交差点の赤信号で立ち止まった僕は振り払うように首を振った。
四、五十分ほども歩いて、結局来てしまった。いつか彼と演劇の稽古のあとに訪れた河原の堤防。
ここは彼の家に向かう途中にある。ここを越えたら、もう彼の顔を見ずには戻れなくなってしまうだろう…。
気は済んだ。帰ろう。
僕は踵を返した。
大丈夫、彼は無事だ。僕が心配することなど何もない。人に助けを請うことなど彼は考えもしないだろう。
言うなればこれは僕の〝片想い〟なのだ。
ただ僕が淋しいだけ。
僕がいなくても平気な彼を恨めしく思う気持ちの裏返し。頼って欲しい、僕を求めて欲しい、僕に逢いたいと思っていて欲しいという─── 一方的な願いに過ぎない。
〝ふぁさ〟
衣擦れの音がした。
堤防の上から。
「こんな凍てつく夜に何をなさっているのです、白馬探偵」
「………」
どきりと大きく胸が鳴り、歩き回り温まった体が熱くなる。それでも手足は冷たく、頬も強張って声が出ない。
月光を背にこちらを見下ろすシルエット。
揺れるモノクルの紐飾り。
緩やかにたなびく長いマント…。
「…み、こそ…、なぜ……」
上手く話せない。
頭がぼうっとして、幻かと疑う。
「おそらく、白馬探偵と同じです」
「………」
同じ…?
「怪盗が探偵に逢いたいなんて、可笑しいでしょう? でも、そう思えば思うほどじっとしていられなくなってしまって」
「キッ…ド…」
「頭を冷やそうと、夜空を一っ飛びしてきたところです。まさかここであなたにお逢いできるとは───」
僕はぎこちなく腕を伸ばした。
脚は固まってしまったように動かなかったから、キッドに向けて懸命に手を伸ばした。
怪盗は小首を傾げると、小さく笑ったようだった。
そしてマントを翻し、あっと言う間に僕の目の前に舞い降りた。
微笑む怪盗の瞳は、僕の大好きな〝彼〟の瞳に間違いなかった。
僕は夢中で怪盗を抱き締めた。
僕の大好きな、僕の…恋人を。
20141230
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※ひゃーあっという間に年末! ◎ぷちSP◎なんて小見出し付けましたが残り明日しかないじゃん~という自分で首締め(>_<)。出来ればあと一つ、ショートでもいちゃラブ白快upしたいです。
…それにともなって年内にと言っていた『リバース』フォロー編は年始に繰り越しで(汗)。言い訳長くてすみません!
※それにしても アニメまじ快1412、白馬くん出番少なくないですか…(+_+)?
●拍手御礼
「ドリームキャッチャー」「フェアリー・ナイト」「クリスマス・ツリー」へ、拍手ありがとうございました!(^^)!
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