名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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〝カイトウ・きっと〟事件
(中森警部&怪盗キッド)
※カテゴリどうしよー(*_*;
────────────────────────────────

「快斗くんじゃないか。どうしたんだ、こんな時間に」

大通りを渡って駅に向かう途中、突然肩に手を置かれてビックリして立ち止まった。

「おじさん…!」

中森警部だった。
幼なじみの青子の父親であり、怪盗キッド〝初代〟からの仇敵。

「日付が変わるぞ。こんな遅くまで遊び歩いとるとは感心せんな」

警官の注意というよりも親類の子を案ずるような声に、思わず頭をかいた。

「すみません、友達と映画観てたら遅くなっちゃって。もう帰るところです」

そして誤魔化す。
本当はこの先の高層ホテルに〝仕事〟の下見に行ってきた帰りだ。

「おじさんこそ、何してるんです?」

「ん? ああ、ちょっと〝捜しもの〟をな」

言葉を濁しつつ、視線はさっきから満遍なく周囲に注がれている。

「そっか…、仕事なんですね。犯人捜しなら手伝いましょうか?」

「馬鹿言っちゃいかん。早く帰りなさい!」

冗談が通じる状況では無かったらしい。
大きな手で背中をグイッと駅の方向へ押し出された。

こっちを見ている中森警部に走り出しながら手を振った。

─────その時。

微笑んでいた警部の目つきが急に変わった。
一点を睨んで踵を返す。
警部の広い背が人波の中へ紛れて消えた。





当初は、それほど騒がれるような事件じゃなかった。事件というより、面白おかしくワイドショーが取り上げるようなB級ネタ。

怪盗キッドをもじった〝カイトウ・きっと〟と名乗る一連の愉快犯の事だ。

この一月ほどの間に、23区内(特に山手線主要駅周辺)で頻発している複数犯による軽犯罪事件。
しかし、ここ最近の犯行はエスカレートし、もはや愉快犯とは呼べないタチの悪さが目立つ。
覆面強盗まがいの事件を起こしたり、気に入らない対応をした店を〝きっとやっつけます〟などとネットで予告し、果ては本当に襲って店内をめちゃくちゃに壊した画像を〝○○征服〟とタイトルを付け匿名サイトに投稿したりする。

ここまでくると名前をもじられた方も気分が悪い。

この事件がやっかいなのは、実行犯が不特定多数である事だ。
日々の鬱憤をこんな事でしか晴らせない奴らがゲーム感覚で人や店を襲い、それを凱旋報告のようにネットに投稿する。その誰もが〝カイトウ・きっと〟と名乗る。
その名を借りれば、互いの名も知らぬ不特定多数の中に紛れてしまえるのだ。

そうして〝カイトウ・きっと〟は今も増殖を繰り返しているのかもしれなかった。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「君、待ちなさい」

追跡に気付いているらしい男に、路地を折れたところで呼び掛けた。

男はチラッと振り向くと半分フードに隠れた陰気な顔を歪ませた。どうやら哄ったらしい。

────あんた、テレビで見たことあるぜ。警視庁捜査二課の警部さんだろ。怪盗キッドにいっつも逃げられてる─────。

この手の雑言には馴れている。その通りなのだから、仕方ない。

「私の身分を知っているなら話は早い。職務質問だ。君、名前は? ここで何をしている?」

────なにって、歩いてるだけだろ。悪いことしてねえのに名乗るのは嫌だね。

警官を前にして、いやに落ち着いている。のらりくらりと言い逃れするつもりらしい。はっきり指摘して態度の変化を探る。

「本当にそうかな。君は〝カイトウ・きっと〟の〝本体〟じゃないのか」

男が身構えるように向き直った。
当たりか。
街頭が逆光になり、男の口元しか見えなくなる。

─────へえ…なにか証拠あんの? 誤認逮捕だったらエライ事だぜ、警部さん。

「君を調べるための根拠ならある。任意同行願う。すぐにパトカーが来る」

─────言っとくけど、オレは〝きっと〟事件ではどんな細かいやつでもちゃんとアリバイがあるぜ。

「そんなもの意識して用意せん限り、普通はすぐに『ある』とは言えんだろう。君がやったのは犯罪煽動、犯罪教唆、証拠隠滅だ。実行しとらんのだから、そりゃあアリバイは一通りあるんだろうがな」

─────よくわかんねえけど、そんなんで逮捕の理由になんの?

「ああ、なるね。匿名サイトで面白おかしく〝カイトウ・きっと〟の話題を振り、第三者に犯罪を起こさせるよう仕向けて、さらに次々現れる〝カイトウ・きっと〟の素性が公にならないよう、ハッキングの腕を振るってネット上で彼らをフォローする。君がいるから〝カイトウ・きっと〟は捕まることなく増え続けているんだ」

─────へへぇ。なんでオレがそうだって分かるのかなぁ。

「君はいわば〝放火犯〟だ。小さな付け火をして、燃え上がるのをほくそ笑んでこっそり見に現れる。これまでに何度か〝きっと〟の現場に足を運んだだろう。野次馬を撮影した複数箇所の画像の中に君がいた。今夜もそんなところか」

─────ふーん、そこまでバレちゃってんのか。困ったな。

「!」

真後ろにもう一人現れた。
どっちがどっちか判らない、似たような風体の男。

─────惜しかったねえ、警部サン。〝きっと〟の〝本体〟って実は一人じゃないんだよねー。

─────面倒だからここでやっつけちゃう?


「おまえら、いったい…」


─────オレがさあ、ひとりでノコノコ動き回ると思う? んなわけないっしょ。こんな時のために頼りになる相棒がちゃんといるわけ。

─────ネットってケイサツが一番苦手な分野だもんな。遅れてんだよ、アタマ古いっつーか。ネット民を馬鹿にしてっから、こんな風に足をすくわれんだよ。

「言っただろう。すぐにパトカーが来る。二人ともおとなしくするんだ!」

─────間抜けなケイサツに、誰が捕まるかよ。

バチッ! 背後で火花が散った。スタンガン。正面の男の手元がキラリと光る。

─────ケケケッ、無能なケイサツはくだばれ! 〝カイトウ・きっと〟の鉄槌だ!

─────あんたをぶっ倒してネットに曝せば、ますます〝きっと〟が有名になるぜ!

武器を構えた男二人が、前後から同時に殺到する。やるしかない。
舐めるな、青臭いガキどもが!

─────うわっ!

前方の男が手を何かに弾かれ、怯んだように立ち止まった。すかさず後方から迫る男の腕を掴み、振り向き様足を払って腰に乗せ、くるりと回転させた。

いてえっと叫んだ男が路面に倒れ、七転八倒する。

「おとなしくしてろ! 肩を脱臼させただけだっ」

前方の男は? 逃げられたか。






ひゅう─────。






一陣の風が吹き抜けた。

覚えのある怜悧な気配にハッとする。



な、に…?  



「差し出がましいとは思ったのですが」


詠うような声。

前方の男が、いつの間にか路上に昏倒していた。
その脇にトランプが一枚突き刺さっている。


まさか…?!


「か、怪盗キッド!」


緩やかに靡くマントのシルエット。
頭上の窓の手すりに立つ白い姿は、紛れもなく奴だった。

「キッド…!! 何故、貴様が?!」

「お疲れ様です、警部。しかしチームプレーが本来の警察の姿、スタンドプレーはいただけません。パトカーを呼んでなどいないのでは?」

「う、うるさいっ。こいつが〝本ボシ〟だと判ったらすぐに呼ぶつもりだったんだ!」  

クスクスと怪盗が笑う。

何をむきになって怪盗に弁明しとるんだ、わしは。
カッカと頭に血が昇る。
だが、これは足下に倒れ込んでる連中に対するのとは全く違う感覚だ。血が湧く。

「怪盗キッド、そこを動くな!」

「残念ですが、今宵はもう失礼いたします。とんだ寄り道をしてしまいました。警部にはまた近日お目にかかる機会がありますので…。その時をお楽しみに」

「なにいっ?! 待たんか、キッド!!」


ポン、と吹き出す煙幕。


〝中森警部……私に似た名をかたって悪さを繰り返す不届きな連中を、一日も早く一掃して下さいますよう…〟


「キッド!!!」



気付けば、路地にパトカーのサイレンが近付いていた。お節介な怪盗が、わしのふりをして通報したのか。
まったく、キッドのやつめ。余計なことばかりしおって。

呻いている二人を拘束し、スタンガンの電源を切り、証拠品としてビニール袋に入れた。

「………?」

路地の隅に、光るものが落ちていた。
ナイフだった。刃渡り5.5センチ以上ある。立派な銃刀法違反だ。
キッドのやつ、わしに向かってきた男の手から、このナイフをトランプ銃で撃ち落としたのか…。

覚えとれ、キッド。この借りは倍にして返してやるからな!!






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



終電を逃してしまった俺は、仕方なく家に向かって歩いていた。

途中でお巡りさんに職務質問されないように気をつけなきゃ。

立ち止まって大きく一度伸びをしてから、俺は駆け出した。





20131013

────────────────────────────────



※お、お粗末様です…(*_*;    
中森警部とキッド様の話をと思って書いてみたんですが、なかなかまとまらず~、突っ込みどころありありですが、エピソードの一つという事で軽く流して下さいませ(汗)。

●葉さまへ、聴きましたよ~! 返信は下記コメントにて♪

●拍手御礼!
連続でいろいろ拍手いただきました。どれも思い入れがあって嬉しいのでタイトル羅列しちゃいます。
「決意」「噂の二人」「ダブルムーン」「花言葉」「黒の鎖」「窮地」「禁断」「呪縛」「ホワイトブロッサム」「言伝」「生け贄」「嘘と嫉妬」「囚人」「袋小路の〝名探偵〟」「二人/新一と快斗」「エピソードX」「睡魔」「左手」「未明の道」などなど…うれしいです! ありがとうございました!!!!! (^^)/

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