名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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★拍手御礼
本日のコメント欄に「サカナ嫌い2」拍手御礼レスを追記させていただきます。林檎様、まき様、ありがとうございました!

マゴウコトナキ(コナン&キッド)
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「今晩は、名探偵。お誘いいただいて光栄です」

にこりと口元だけで笑った怪盗は、ショーの疲れも見せず相変わらず隙のない視線でオレを見下ろした。

今夜も怪盗キッドのショーは大盛況だった。
見事なマジックで警察を翻弄し、観客の喝采を浴びて、ヤツは鮮やかに姿を眩ませた。

そしてキッドが盗んだはずのジュエルが発見され、現場検証班だけを残し警察が引き上げる頃……オレはスケートボードで前回キッドに逢った高層ビルへと向かった。
そこにキッドを呼び出しておいたから。

毛利探偵事務所のWebページの片隅に、他者には意味不明な数字の羅列を────キッドへ向けた暗号を、オレはこっそり忍ばせておいたのだ。



扉を開けると、すでに着ていた怪盗は、あと数日で丸くなる月を頭上に振り向いた。

「キッド、よく気が付いたな。おまえがあの暗号を見つけるかどうかはオレの賭けだった」

「見逃すはずがありません。私にとって名探偵を取り巻く情報は最も注意を払うべき……」

「バッカやろー!」

オレは真っ直ぐ怪盗に向かって飛び込んでいった。左の手でマントを掴んだ怪盗が俺を見つめて片膝を着く。
コドモの体のオレをキッドは無言で抱き止めて、広げたマントで包み込んだ。

温かなキッドの胸に、しがみつく。
スーツから覗く青いシャツに顔を押しつけて、もう一度〝バカやろう〟とオレはつぶやいた。


何度追いかけて、何度ヒラリとかわされただろう。
何度助けられ、何度その手に抱き上げられただろう。
何度触れ合い────何度離れがたさに時を忘れただろう……。

目を閉じて温もりに包まれていると、怪盗のシャツの奥から少し速い鼓動の音が伝わってくるのに気が付いた。
そう思うと、余計に自分もドキドキした。

「…キッド」

「なんでしょう」

「今日こそ逃がさねーからな」

「お誘いを受けたのですから、逃げやしませんよ」

「うそつけっ」

「………」

「誰が信用すっか。嘘ばっかつきやがって。どーせまたオレを適当にあしらって、適当なとこで逃げ出す気だろ」

「あしらうなど………」

「いい加減、オレに正体見せろ!」



───── それは告白だった。


伝わるかどうか、判らなかったけれど。



夜風が頬に触れた。
怪盗がオレの肩を掴んでそっと体を離す。そして、オレの目を覗き込んだ。
あの時の寂しげな微笑みを浮かべて。

「名探偵……。私には────」

オレは怪盗から目を逸らした。

拒絶されるのか。やはり。

いくら伸ばしても、オレのこの小さな手では……怪盗の心を掴むことは永遠に出来ないのだ。
そう思うと情け無くて、涙が出そうだった。

「……私には、まだ…すべてを明らかにする自信がないのです」

「え……?」

怪盗が立ち上がり、一・二歩オレから離れる。そしてシルクハットのつばを掴み、姿勢を正した。

「それでもよろしければ」

「キッド……」

オレは息をのんだ。
シルクハットをとった怪盗の柔らかそうな髪が揺れた。

ポン、と煙幕が弾ける音がして。

立ち尽くすオレの前に、淡くなる煙幕の中から現れたのは────。


黒衣の…まだ年若い、ほっそりした体つきの少年。
どくんと大きく鼓動が胸を打った。

「おまえ…が、おまえが………キッドなのか…?」

「はい」

少年は微かに肩をすくめた。

「お見知りおきを。名探偵」

キッドの声だった。変装ではない。

さっきまで白い怪盗が立っていた場所に、いま少年が立っている。モノクル越しではない少し寂しげな蒼い二つの瞳をオレに向けて。

「えへへ。ダメだな、俺。名探偵にそんな顔されたら、我慢できなくなっちゃったよ」

「キッド…」

「あーあ。〝怪盗〟失格だぁ」

「キッド…!」

「俺、黒羽快斗ってんだ。名探偵……いや、工藤新一くん。よろしくな」


〝くろば…かいと… 〟


瞼が熱くなるのを感じながら、繰り返した。
もう一度。くろば、かいと。

キッドはニッコリ笑って頷いた。
『そーだよ、工藤』と言って。


キッドが本当の姿を現してくれたのが嬉しかったのか、それとも〝工藤〟と呼ばれたことが嬉しかったのか。
とにかく、オレはもう前がよく見えなくなった。

せっかく黒羽が側にいるのに、オレの視界はぼやけて夢の中のようにどんどん曖昧になっていった。

キッドがそうしてくれたように、黒羽に優しく包むように抱き締められて。
〝工藤〟と囁く声を耳元で聞いて……その声も震えて掠れているのに気が付いて。

すべてでなくてもいい。それでも今夜怪盗が許してくれたのは、まごうことないオレへの返答だった。
オレが求めていた〝真実〟に、違いなかった。







20121028

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