名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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疑心暗鬼《新一サイド》(新一×快斗)
※昨日up 快斗サイド『自業自得』のつづきです (*_*;
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読み返していた推理小説のページをめくろうとして、オレは指を止めた。

カーテンが揺らいだように感じたのだ。


「…………」

振り向いたが変化はなかった。
部屋にはオレ一人。ドアも窓も閉まっている。
机に置いた腕時計の針を横目で見ると、夜11時を回っていた。

ため息を付く。
快斗と電話で話してから三日が経つ。あれから連絡はない。来週まで大人しく待つしかないのだろうか…。

本の続きに戻ろうとしたが、一度快斗の事を思い浮かべたら、文字を目で追っても内容がまったく頭に入らなくなってしまった。気を取り直して同じページを最初から読み返したが、やっぱりだめだ。

チクショウ。
オレは諦めて本を閉じた。

快斗……。
恋人なのに、恋人のつもりでいるのに、オレの方から逢いに行けないなんて。

〝探偵が怪盗の日常に近付くなんて野暮だぜ〟

快斗はそう言ってオレから逢いに行く事を許さない。
だけど…だからって、ただ待ってるだけなんて。

自分が快斗にどう思われているのか、時々判らなくなる。ポーカーフェイスで隠したアイツの堅い心の扉の奥は、いったいどうなっているんだろう。
もしかしたら、オレはアイツにとって暇潰しの相手でしかないんじゃないだろうか。

そんな筈はないと─────密かにくすぶる疑念を、抱き合うたび、アイツの素直さや熱さを知るたびに打ち消してきた。だがこうも逢えない日が続くと、どうしても不安になる。
オレが想うほど快斗はオレを想ってくれてないんじゃないかって。
ただ〝探偵〟をからかって愉しんでるだけなんじゃないかって……。


「こんばんは」



「…わあっ!」

オレは座っていたチェアから仰け反って腰を浮かした。
いつの間にかオレの目の前に快斗が立っていた。

「か…、か、快斗っ! おま…っ、どこから??!!」

「相変わらず名探偵はイイねぇ、リアクションが。マジシャン冥利に尽きるよ」

形のいい歯並びを見せてケケケと笑う。
心臓バクバクになりながら、オレは立ち上がるとぶつかるように快斗を抱きしめた。今の今まで疑心暗鬼に陥るほど逢いたかった恋人が、やっと来てくれたのだ。

「苦しいって、工藤」

「来週まで待てねえって思ってたとこだったんだ…!」

「今日はやんねーよ。ちょっと顔見に寄っただけ。すぐ帰る」

「なんで?! あの日かよ」

「アホ。…ったく名探偵はセッカチでいけねー」

「おまえが待たせ過ぎなんだよ。ずっと何やってたんだ」

「怪盗にそれ訊く? 探偵に言うわけないじゃん」

俺の耳元に温かな吐息を吹き当てながら、快斗が小さく笑う。

「おまえなぁ、人を待たせるのもいい加減にしろよ! 次は待ってないでオレの方から逢いに行くからな」

「やめてくれよ。カッコわりぃ」

「カッコなんかどうでもいい。オレはおまえをちゃんと捕まえたいんだ!」

半分叫ぶように言うと、なぜだか快斗の気配が変わった。

「…工藤」

「なんだよ」

抑えた快斗の声にドキッとする。
何か言おうとして、快斗が躊躇っている。
やな予感。すぐに膨らむ疑心暗鬼。まさか…別れ話とかじゃないだろうな。

体を離してこわごわ快斗の顔を覗き込むと、快斗はオレから目を逸らした。

「…………」

掴んだ快斗の両腕。その両方の手首に黒いリストバンドが付けられていた。
何気なく目を向けた途端、快斗が動いた。オレの手を振り払おうとするように体を返す。
左手は外れたが、右手は離さなかった。
快斗の表情が強張る。

「快斗……どうした?」

「何が」

「リストバンド、初めて見た」

「そっか? ネタ仕込むのに使えるから、最近時々付けてんだ」

顔を上げた快斗がへへ、と笑う。
気のせいだろうか…。どこか快斗の様子がおかしい。

「んじゃ、またな」

掴んだオレの手を解こうとする快斗を、離さずに強く引いて振り向かせた。

「来たばかりだろ」

「放せって。また来るから」

「帰さない」

「手、放せ!」

「手首どうかしたのかよ」

「どうもしねえよ、このバカ探偵っ」

リストバンドに手を伸ばしたら、快斗がいきなり暴れ出した。

「快斗!?」

「帰るって言ってんだろ!」

もがく快斗の肘がオレの脇に入った。

「イッ…てえ!」

息を詰まらせながら、オレは体全体で快斗を押した。快斗が後ろ向きにベッドに倒れ込む。

「工藤っ…!」

快斗がオレから逃れようとすればするほど、余計に頭に血が昇って抑えが利かなくなった。

なぜ、暴れるんだ。

何を隠そうとしてるんだ。

どうしてオレにすべてを見せてくれないんだ。

オレが心配して待ってた間、おまえはいったい何をしてたんだ…!




はあ、はあ、はあ……。

俯せになった快斗の背に重なってベッドに倒れ込んだまま、苦しくて喘いだ。

頬や顎が痛い。何発か快斗にぶん殴られた。オレも快斗を殴り返した。気が付くと、快斗のリストバンドの片方はオレが握りしめていた。

突っ伏した快斗の左手。リストバンドが外れた下には、肌色のバンテージが巻かれていた。
バンテージは端が捲れ、瘡蓋になった疵が少し見えていた。

「……くどう」

掠れてくぐもった快斗の声。重なった体は服の上からでも熱い。

「もし……おまえに何かあったら、俺が助けるから」

「……え?」

「もし…俺が工藤の目の前で死んでも、工藤のせいじゃないから」

「なに…?」

「もし、おまえが死にそうになったら、俺が代わりに死ぬから」

「何の話だ? 何を言ってんだ、快斗」

「工藤……」

快斗が頭を持ち上げ、背中越しにオレを見る。目が赤くなっていた。

「だから…もし俺になにかあっても、それはおまえのせいじゃないから」

「快斗…!?」

「工藤…ごめん。俺、おまえが好きだ。出来るなら、本当はずっとおまえの側にいたいんだ…」

快斗が何を言っているのか解らなかった。何を訊いても、快斗は理由を言わなかった。
嬉しくて、切なくて。愛おしすぎて。ただ抱き締めることしか出来なかった。


朝になれば、今度こそオレの胸に巣くっていた〝疑心〟という鬼は消えているに違いない。
快斗…オレもおまえが好きだよ。
何があっても、絶対おまえを離さない。

手を繋ぎ、顔を寄せ合って、出来ることなら溶け合ってしまいたいと願いながらオレたち二人は眠りに就いた。

安らかに伝わる、互いの温もりだけを信じて─────。






20130312


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