嘘と嫉妬(白馬×快斗)
※昨日は新快イチャだったのに、なぜコッチがこうなる…(+_+)??
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「黒羽くん、話があります」
久しぶりに土曜の真っ昼間から白馬の部屋に遊びに来たら、半眼になった白馬が迫ってきた。
「な、なんだよ。コエエ顔して」
「来て下さい」
言葉は丁寧でも、意訳すると『来いアホンダラ』って感じだ。
「いま来たばっかじゃん、どこに行くんだよ!?」
ギロリと上から見下ろされ、たじたじとなる。どうしたんだ…コイツ?!
あ、廊下の向こうに立っているのは。
「おや…探坊ちゃん、お友達とどちらへ?」
「ばあやさん!」
「シアタールームにいるから、出てくるまで放っておいてくれるかい、ばあや」
「はい、ごゆっくり。お茶をお持ちしましょうか?」
「上で飲んだからいらないよ」
「あ、あの、ばあやさ…っテテ!」
掴まれてる手首をぎゅーっと絞られた。
「ああ……」
行っちゃった…ばあやさ~ん…(T。T);
シアタールーム…って言ったよな。
つまり、密室。防音。
よからぬ想像が働く。
オイオイオイオイ、昼間っからこの勢いでナニやらかす気だコイツ~~っ(@@)??
新設らしきシアタールームに俺を引っ張り込もうとする白馬と、ドアの前でバトル勃発する。
〝交差点を横断するのを嫌がって腰を落とし主人に嫌だと主張するワンコ〟のように、俺は白馬に首を振って腰を落として抵抗した。
しかし逆効果。
掴まれた手を不意に放され、俺は後ろにひっくり返って腰と背中と後頭部をしたたかに打っちまった。
イテテと呻いて後頭部を両手で抑えてうずくまる俺を、白馬は肩に担いで持ち上げた。
「な…なななにすんだよっ。降ろせっ、白馬!」
「おとなしくして下さい」
低く告げる白馬の声は静かなだけ余計迫力があって、そうでなくても戦意喪失していた俺は体を硬直させるしかなかった。
シアタールーム内の小さな明かりだけ点けた白馬は、バタン!ガチャン!と頑丈そうな扉を閉めて鍵を下ろした。
うああ、どうなるんだ俺~?!
ぼすんとソファーに背中から落とされ、すぐに跨ぐように白馬が乗っかってくる。
「ちょっ…白馬、あのさ…部屋の使い方、間違ってない?」
「僕がなぜこんなに苛立っているか、心当たりがあるでしょう」
「なんだよ?…知らねーよ」
「それじゃあ訊きます。君は浮気をしているのですか」
「はあっ??」
あまりに突拍子もない事を言われ、俺は口をパクパクさせた。
「答えられないんですか、君は…」
「ち、違うって! 何のことだよ?!」
「二日前の夜、僕は街で見かけたんですよ。君が見知らぬ青年と連れ立って歩いているところを」
「ええっ」
「何か話してくれるかと思って、僕は昨日ずっと待っていたんです」
「フ…フザケタこと言うんじゃねえ!」
「昨日の帰り……僕は君に訊きましたよね。木曜の夜、君がどこで何をしていたのか」
「……え、えーと、そうだっけ」
「その時、君は〝早く家に帰ってゴロ寝した〟って言ったんですよ…、僕が…僕が君の浮気現場を目撃していたとも知らずにね!!」
「違うって言ってんだろ!!! おまえ妄想ひどすぎるぞ!」
「狼狽えて逆に僕を非難するなんて、怪しいです」
「それは…だって、いちいち説明すんのメンドクセー事ってあるだろーが!」
─────白馬が見た青年っていうのは。
寺井ちゃんに紹介された新進のマジシャンだ。親父と縁(ゆかり)がある人で、息子さん(俺のこと)に会って話がしたいとかで呼び出されて一緒にお茶して。
と早口で説明したけど、白馬のヤロウ聞く耳持たない。
「そしてその後は、どうしたんです」
「どうもこうも…一時間くらい話して、すぐ別れたよ!!」
「信じたいですが、信じ切れません…。スーツ姿の、とても素敵な人だった。君の背に手を回して」
「あ、あのな…白馬。おまえ、俺がウワキとかすると思う?」
「君は…分かっていなさ過ぎる!」
「なにをだよ?!」
「自分がどれだけ魅力的かって事です!!」
・・・・イヤイヤイヤ。
「そ…そんな事ないって」
「君は無防備過ぎるんです! たとえ君にその気がなくても…」
「き、聞いてりゃなんだよ、その気がなくてもとか、自分の身くらい自分で守れるし! だいたい見かけただけで浮気だとか、俺と俺のオヤジの知人に失礼だぞ!」
「ふ。言いましたね…。自分の身くらい自分で守れるって…?」
「・・・ば、か、やっ、やめろよ…!」
ガバッとシャツを引き上げられ、その勢いで喉に腕を入れられる。
「ぐえ、白馬っ、いい加減にしろぉ!」
「…僕は自分でも知らなかったんです」
「なにを…?」
「自分がこんなにも独占欲が強く、嫉妬深い人間だったって事をです」
……君が他の誰かと楽しげに笑いあっているのを見るだけで、僕は胸が苦しくなる。
ハラハラして。いらいらして。君を連れ戻したくなるんです。
なのに君は知らん顔だ。
素知らぬ顔をして、僕の知らない人間とも平気で僕の見ている前でじゃれ合ったりする。
僕が何も感じないとでも…平気でいるとでも思ってるんですか?!
僕は君が好きだ。誰も君に近付けたくない。誰にも触れさせたくない。君に僕以外の誰も見て欲しくない…!!
今の僕は嫉妬に狂った愚か者です。分かっています。
分かっていても……この灼けるような思いから逃れられない!
黒羽くん…。僕は…、僕は…。
黒羽くん…!!
「あー、怖かった。あのままヤラレちゃうかと思ったぜ、白馬…」
「すみません。君の肌がとても綺麗な事に気付いて、危うく正気に戻りました」
「……ど、どういう意味だよ」
「僕と繋がってから今日まで、誰も君に触れてないと分かったからです」
「・・・・・」
「綺麗ですよ、黒羽くん。そしてここからは、嘘をついた分のお仕置きです」
「ええっ?」
「せめて昨日ちゃんと〝知人に会ったんだ〟と君が素直に答えてくれていれば、僕はここまで嫉妬に苦しまなくて済んだんです」
「俺のせいかよ!? ヒデエ!」
「優しくしますから」
「うう」
白馬の怒りが収まって誤解が解けてよかったけど。
シアタールームのソファの上で家の人に隠れてこっそり重なり合って。なんかすごい背徳感だ。
怪盗である事を隠している俺が今さら背徳感もないけどさ。
ごめん、白馬。
その新進マジシャン、実は怪盗キッドの協力者だった人の孫なんだ。
会ったのは、オヤジが昔その協力者に託したマジックの〝ネタ〟を俺に渡すため。
そして、別れ際に実は〝誘われた〟んだ…その人に。もちろん速攻断ったけどさ。恋人がいるって言って。
カッコイイ人だったけどな…。
でも断っといて良かった…。
万が一その人の魅力にフラついて流されてたら、今頃白馬にこのソファーの上でコロされてたな。
気をつけようっと。
白馬の焼きモチ、半端ねえ~!!
20130426
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※うっひょー、白馬くん崩壊しててスミマセンでしたぁー(@@)!!
[23回]