名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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夕陽の教室(白馬×快斗)
※軽め日常話です(..;)
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連休を挟んで丸一週間、黒羽が戻ってきた。

何事も無かったように窓際の自席でうたた寝に興じる姿は、これまでとなんら変わりない。



〝今日はこれからお父さんのお弁当作って届けなきゃならないの! あとは宜しくね!〟

HRが終わるやいなや中森さんは僕に向かってそれだけ言い残し、慌ただしく駆け去って行った。僕のリアクションを待たずに。

その様子を見ていたクラスメートたちもクスクス笑い、あるいは僕の肩を叩き、三々五々と教室を出て行く。

そして陽が傾き、空がオレンジに色付き始めた今。
僕は黒羽と二人だけになった教室で、本を読んでいた。一つ隔てた席で黒羽の微かな寝息を耳にしながら。

中森さんに託されたという名目があるにしろ、抱えている事件があるわけでもなく、たまには読書タイムを教室で過ごすのもよいかと自分に言い聞かせ───そろそろ一時間は経つ。

(うーーん…)

同じ姿勢で固まった体を解すために、僕は時折本から目を離し、背を伸ばしたり首や肩を動かした。

(やれやれ。〝お姫様〟のお目覚めはまだかな)

──この場合、例えるならやはり〝姫〟だろう。オテンバ過ぎて、とても手に負えないお姫様だが。

机に突っ伏した黒羽の横顔を、僕はそっとのぞき込んだ。

普段のやんちゃな少年の貌はそこにはない。
穏やかに伏せた長い睫の、きれいに揃った美しさに目を奪われる。柔らかそうなうなじ、僅かに綻んだ淡い彩の唇の形の可憐さと言ったら…。

オーバーではなく、僕の目が恋のために曇っているわけでもない。
黒羽は本当に美しいのだ。
限られた者しか──おそらく本人も──そのことに気付いていないだろうが。

(僕は…どちらの彼が好きなのだろう)

黒羽の持つ二面性は、絶妙なバランスによってかろうじて保たれている。
その均衡は常に危うさ脆さと背中合わせだ。
だから余計に目が離せない。

手が届きそうで届かない、解けそうで解けない謎。
そんな〝謎〟が傍(そば)に在るのだ。
夢中になるなと言う方が無理というものだろう…。


(………)

西陽が暖かい。
黒羽の寝息を聞くうちに、僕もいつの間にか眠気をもよおしていたようだ。腕を組み、背もたれに寄りかかる。
いつ目を閉じたのか…。


ふと気付くと、僕は席で座ったままうたた寝していた。
傾いた夕陽が校庭の向こうの木々に半分隠れている。

「あっ…!」

僕は自分に呆れてしまった。

黒羽がいない。

まるで最初から誰もいなかったかのように───教室には僕しかいなかったのだ。

「やられた…。ああ」

大きなため息を付く。

僕は何のために残っていたのか。

目覚めた黒羽に、何かひとこと言ってやろうと思っていたのに。

『ふん』と鼻で笑われ、『あーよく寝た』『あばよ』とそっけなく去ってゆく後ろ姿を、ただ見届けたかっただけなのに。

それすら逃すとは…。

(情けない)

僕は探偵としてだけでなく、クラスメートとしても〝彼〟を捉えることが出来ないのだ。

───不意にすうっと寒気を覚える。

太陽がさらに傾き、教室に射し込んでいた陽がなくなったのだ。
慌てて立ち上がると、急に立ったためかクラッときて机に手を着いた。

〝ガタガタ〟と、机や椅子の音がやけに大きくがらんとした教室に響く。

本当に、ため息しか出ないとはこのことだ。

僕はノロノロと鞄を持ち上げた。
車の送迎はしばらく前からやめている。虚しいこの想いを抱え、自分で帰るしかない。

「はあぁ…」

もう一度ため息を付いたその時、突然《ガラッ》と大きな音がして、僕は驚いて飛び上がった。
見回りの先生かと思い、慌てて振り向く。



「やーい、ドッキリ成功!」


「・・・く、黒羽くん!?」


ドアのところにいたのは先生ではなく、去ったと思っていた黒羽だった。

「帰ったのでは、なかったんですか」

「テメーがいつまでも起きねぇから、待ってたら腹が減っちまって」

「な…、ま、待っていたのは──」

僕の方、だったのだ。
逆の展開に呆けた頭がついていかない。

「はははっ、白馬、ほっぺた。服の痕が付いてるぜ」

「ええ?!」

僕が焦って口元を押さえると、黒羽は文字通り腹を抱えて笑い出した。

「ギャッハッハ!アハハハハ!」

「く、黒羽くん、嘘ですね!キミはまったく…」

腕組みしていたのだから、頬に痕が付くわけないのだ。

「ほらよ!」

ポン、と白い何かを下手で投げられて、思わず受け止める。文句を言う隙もない。

──温かい…?

「肉まん。やるよ。テメー寝ながらお腹グウグウいってたぜ」

「また嘘ですね! いつもお腹を鳴らしているのは君でしょう! まったく君は、いつもいつも…」

「食うのか帰るのか、どっちだよ」

「食べながら帰ります!」

黒羽はまた大笑いした。

かなわない。

からかわれた僕も、一緒に笑った。






20191028
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※冒頭は『紺青の拳』〝一週間後〟という設定で書き始めたのですが、ちょっとクドいかなと思い、それっぽいト書きを省いた結果〝からかい上手の黒羽くん〟的なただの日常ヨタ話になりました(..;)。
白快久しぶりなので肩慣らしということでお許しを_(._.)_


●拍手御礼
「ウルトラキッス」「黒の鎖」「別れの季節」へ拍手ありがとうございました!


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