名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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2011年8月26日よりブログ開始
2012年5月GW中にカテゴリ分け再編&アクセスカウンター設置
2013年5月 CONAN CP SEARCH 登録
2013年6月 青山探索館 登録
連絡先:hamanosuronin★gmail.com(★を@に置き換え)
Script:Ninja Blog 
Design by:タイムカプセル
 

絶体絶命(白馬×快斗)
※白馬くん視点。
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この地区では一番高い40階建ての総合商業ビル。
正面エントランスの自動ドアに、僕は両手を押し当てた。

押し開くように力を加えると、僅かに隙間が開いた。指を差し入れる。
ドアを手で引き開け、中へと入った。
案の定、ビルは停電していた。
怪盗キッドはこの屋上に間違い無くいる。

僕はあらかじめこの地点に待機していた。今夜の風向きとキッドのこれまでの逃走経路の傾向から、このビルかもしくは300メートル先のマンションのどちらかにキッドが立ち寄ると踏んだのだ。

そしていま怪盗キッドはこのビルの屋上を選んで降り立ち、流れる雲間から月明かりが射すのを悠然と待っている。誰も屋上には上ってこないと油断して。

非常灯だけが点るエレベーターホール横のドアを開け、僕は非常階段を駆け上り始めた。

40階。一気に駆け上がる自信はなかった。文武両道の工藤新一や服部平次とは僕は違う。あくまで頭脳派であることを自認している。
スポーツはそれなりに経験しているが、最近では娯楽程度にイギリスでポロを嗜んでいたのが精々だ。体力勝負に自分が向いてないこと位は重々承知していた。

だが。
怪盗キッドがこのビルの屋上にいるのだ。

その事が僕のアドレナリン分泌を決定的に促していた。
運動器官への血液供給が増大し、心筋収縮力が上昇。呼吸におけるガス交換効率の上昇をも引き起こす。
いや、そんな生理的現象の説明など不要だろう。とにかく今夜怪盗キッドに対峙する権利を僕だけが得ようとしている。
僕はたとえようもなく高揚していたのだ。



─────19階。……20階。

ようやく半分。

手すりを掴み、腕の力で体を引っぱるようにして上る。それでも脚に澱む疲労物質が体内のアルカリ濃度を下げエネルギー源のATPを働かなくさせてゆく。身体的な疲労をいったん意識してしまえば体は重くなるばかりだ。

息が苦しい。脚が持ち上がらない。

汗が目に入ったらしい。目が沁みる。ハンカチを取り出して汗を拭く余裕もなく、僕は手の甲で汗を振り払ってなおも痺れる足を持ち上げた。

心臓が荒く胸を打ち、地震かと思うほどにぐらぐらと目が回る。
僕にこんな無茶をさせられるのは、この世で君一人しかいない。怪盗キッド…!!

だが、僕はついに35階と36階の間の踊場に倒れ、手を着いてしまった。
懸命に耐え続け上ってきたが、その踊場でバランスを崩した僕は態勢を保つことが出来ずにつんのめってしまったのだ。

苦しい。脚が動かない。
あと五階だというのに。
諦めてはだめだ。ここで自分を甘やかしている数秒の間に怪盗キッドは飛び去ってしまうかもしれない。
上るんだ。苦しくても、なんとしても。ここで諦めて自分を許せるか?
否。

僕は唸り声を上げながら再び起き上がり、脚を持ち上げた。怖ろしくゆっくりとしか脚は動かなかったが、それでも止まることだけはもう決してすまいと自分に強く言いきかけせ、僕は気力だけで鉛のように重い体を引きずるようにして一段、また一段と屋上に向かって上り続けた。



扉を開けて屋上に出ると、涼しい風が吹き付けていた。呼吸すらままならず、踏み出した僕の脚は段差の衝撃を吸収出来ずにガクンと折れた。
僕は結構な勢いで無様に屋上に転がった。
転がりながら、それでもキッドの姿を求めて視線を巡らせた。もはやその姿に手を伸ばす余力もないというのに。


どこだ…、どこにいる…キッド!!


ひゅうひゅうと肺が悲鳴をあげ、心拍は爆発しそうに激しく揺れ、コンクリートに打ち付けた膝が酷く痛んだ。
しかし霞む目に飛び込んだ姿に、僕はそのすべてを忘れて息を呑んでいた。


キッド────ではない。


あれは。


あれは……!


ようやく上体だけを起こした僕を見て、屋上の端に佇み微笑んでいたのは。そこにいたのは、白い姿の怪盗ではなく。

学ラン姿の。
僕と同じ江古田高校の学生服を着た。


「黒羽…くん─────!!」



屋上の柵に寄りかかり、黒羽快斗は『よー白馬』と軽く手を挙げ僕の呼びかけに返答した。

「探偵っておまえか。待ってたぜ」

「君、は……、なぜ、何故、君が…ここに…!」


問わずとも解っている。

怪盗キッドは黒羽快斗なのだ。

しかし、なぜ。
よりによってどうして今、素顔に戻って僕を待ち受けていたのか。

呼吸も整わないまま掠れ声でようやく発した僕の問いに、黒羽は悪びれる様子もなく笑った。

「へへ、前に言ったろ? 俺、怪盗キッドのファンなんだよね」

柵から身を起こし、月を見上げる横顔。

「俺さ、キッドの逃走経路にヤマ張ってここに来てたんだ。学校からまっすぐ」

僕を振り向いて続ける。

「停電する前にエレベーターで昇って、キッドが飛んでくるのを待ってたんだよね。そしたらさ」

得意気な顔をして。僕の想いなどお構いなく。

「本当に怪盗キッドが現れたんだ。ハンググライダーで飛んできて…スッゲーかっこよかったぜ!」

「君は…怪盗キッドを見たというのですか。では、キッドは……」

「この宝石を」

ポケットに手を突っ込み取り出す仕草。開いた黒羽の手のひらには、キッドが先刻E美術館から盗み出した筈のビッグジュエル〝デスパレート・ブルー〟が乗せられていた。

「もうすぐ探偵がここへ来るはずだから、探偵に返してほしいってキッドが置いていったんだよ」

「……よくも、そんな────」

平気な顔で嘘をつく。

怪盗キッドは自分ではないか。
僕がキッドの正体を君と見破っている事を知っていて、よくもぬけぬけとそんなデタラメを。

僕は得体の知れぬ怒りに任せて立ち上がった。
脚は重く、まるでゾンビのようにふらついたが、それを別人の体のように遠くとらえていた。

黒羽はジュエルを手にしたまま、もう片方の手をポケットに差し込み僕を見つめている。その表情は学校で見せるいたずらな少年のものと変わらない。

〝怪盗はおまえのくせに〟

〝探偵が来るから、返してほしい…だって?〟

〝人を馬鹿にするにも程がある…!〟

そうと意識せぬまま、僕は黒羽に掴みかかっていた。

細い喉に指を掛け、ふらつく自分の体重をのせるように。
仰け反る黒羽の上体が屋上の柵から飛び出し、癖の付いた髪がふわふわと揺れるのを僕はまるで映画の中の映像のように瞳に映していた。

抵抗しない黒羽は夢に現れる幻と同じだった。
現実感は完全に失われ、僕はただ黒羽の細い首に食い込む自分の指の感覚に陶然としていた。

憎いのか。僕は、憎んでいるのか?

手に入らないもの。求めても届かないもの。目に見えているのに。掴んでいるのに捕まえられない〝白い姿の幻〟を。

く、と、微かに黒羽が身じろいだ。

その時、黒羽が手にした深海の色をしたブルーのジュエルが輝いた。黒羽がその手を持ち上げている。
〝デスパレート〟という名を持つ貴石。
僕にとっては〝手詰まり〟の。
黒羽にとっては〝絶体絶命〟の────。





「うっ、…ごほ…っ…!」

月は雲間に再び隠れていた。
気が付けば僕と黒羽は折り重なるように倒れ込んで、黒羽は苦しそうに咳き込み、僕は眩暈に喘いでいた。

僕は─────何をしようとしていたのだ。
制御不能の激昂に理性を吹き飛ばされ、黒羽を手に掛けようとしていたのか?
馬鹿な。理性を失った探偵は、もはや探偵とは呼べない。僕はなんという事を…!

黒羽がゴロリと横に体を返した。まだ咳をしながら、黒羽は手にしたジュエルを放さず握り締めている。
僕も体を起こした。屋上の縁に寄りかかり、呆然と座り込んで。



遠くパトカーのサイレンが聞こえていた。



どのくらいそうしていたのか、我に返ると目の前には〝デスパレート・ブルー〟が差し出されていた。

「黒羽…くん……」

呼びかけてから、僕は自分が何を言うつもりなのか分かってないことに気が付いた。
糾弾しようとしているのか。謝罪しようと思ったのか。それとも。

「大丈夫か…白馬」

「……………」

黒羽の声に澱みはなかった。
僕に首を絞められ殺されかけたというのに、その瞳には恐れも訝しみもない。心配気に見開かれ、ただひたすら僕の瞳を覗き込んでいる。

しかし黒羽の制服の喉元に自分の指の痕がくっきり残っているのを見て、僕の精神はとうとう崩れ落ちた。

雲が切れ月明かりが射すのがあと少し遅ければ、取り返しのつかない事になっていたかもしれない。
そうまでして僕を欺こうとする黒羽の覚悟に僕は敗北したのだ。
嗚咽しながら僕は黒羽を抱きしめた。黒羽の命を。
僕の腕の中で黒羽も泣いているようだった。
それを確かめる勇気は、とうに失われていたけれど。





20130924

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※毎度漠然とした内容でスミマセン。お題『絶体絶命』でした。こんな白馬くんイジメな展開にする筈ではなかったんですが(汗汗)。次でフォロー予定(*_*;


●拍手御礼!「風のメロディー」「パーフェクトムーン」「魔法の塔」へ拍手&コメント、どうもありがとうございましたーっ(^^)/

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