名探偵コナン・まじっく快斗の二次BL小説。同ジャンル諸先輩方の作品に触発されております。パラレルだらけですが基本は高校生の新一×快斗、甘めでもやることはやってますので閲覧は理解ある18才以上の女子の方のみお願いします。★印のカテゴリは同一設定で繋がりのあるお話をまとめたものです。up日が前のものから順にお読み下さるとよいです。不定期に追加中。※よいなと思われたお話がありましたら拍手ポチ戴けますと至極幸いです。コメント等は拍手ボタンよりお願いいたします! キッド様・快斗くんlove!! 《無断転載等厳禁》

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蔦の絡まる家 II《2/2》
カテゴリ★3/4組
※白馬くん視点にて
──────────────────


「ええか白馬、工藤も黒羽も、見付けたらとにかく家から引っ張り出すんやで」

「わかりました」




工藤邸の玄関に鍵はかかっていなかった。
服部が扉を開けると、とたんに屋内の冷気が這い出てくる。

確かに非日常の気配を感じた。僕も服部に毒されてしまっているのだろうか。
しかし背後で服部が扉を閉ざすと、その気配はより一層濃いものになった。

「服部くん、何か挟むなりして扉を開けておいた方がよいのでは」

「んな暇あるかい。早よせい」

立ち止まった僕の背を押し、服部は階段へ向かった。そして数段駆け上がると振り向き、再び僕を急かせる。

薄暗いエントランス。
静まり返った邸内。
違和感は強くなる一方だ。 

もしも。
もしも服部くんまでが、何かに囚われているとしたら。
何かの力が服部くんに影響を及ぼし、僕をも此処へ導いたのだとしたら…。

「コラ白馬、さっさとせいっちゅうとんじゃ。一人やったら工藤と黒羽を同時に連れ出せん。せやからおまえを連れてきたんやで!」

「ええ。わかってます」

僕は気を取り直した。

「二人は工藤くんの部屋にいるんですね?」

「ああ。だが気ィつけい、あの部屋は〝巣窟〟やで」

「〝幽霊〟の…ですか」 

服部は否定しなかった。

二階に近付くにつれ、さらに暗く、冷気が強くなる。まだ外は明るいのに。通常なら階上は階下よりも熱気が籠もるはずだというのに。

得体の知れぬものにじわじわと浸食されてゆくような感覚だ。時間経過も平衡感覚も、立っているはずの足下さえ覚束ず曖昧になってゆく。

此処は本当に工藤家の邸内なのか…?

服部は工藤の部屋と思しきドアの前で僕を振り向き、頷くと無言でノブを回した。
ドアが開く。


───意外にも、ドアはあっさりと開いた。


中は真っ暗なのではと身構えていたが、それは考え過ぎだった。部屋の中には明かりが点いていた。

『あー服部! なんだよ~さっきは飛び出してっちゃってさ。工藤、服部のやつ戻ってきたぜ』

黒羽の声だった。
僕はほっと息を付いた。
服部が〝おう〟と応えながら中に入ってゆく。二人を外に連れ出すと言っていたさっきまでの勢いは消えている。服部も中の様子に安心したのだろうか。

そうか…。
冷えすぎはやはりエアコンの故障に過ぎないのだ。工藤の部屋が〝霊の巣窟〟だなどと、そんなことがあるわけないのだから。
つまりこれは服部が僕に仕掛けた〝ドッキリ〟だったのだ。自分が感じた恐れを僕にも体験させようと、僕を引っ張り出したのだろう。

「やあ。おじゃまするよ」

平静を装いつつ、僕は服部の後に続いて工藤の部屋に入った。
僕を見て黒羽はどんな顔をするのか、工藤の反応はどうなのだろうかと思いつつ。




「………」



中は、暗かった。

廊下から見た時は明るかった。それなのに。

「服部くん…?」

『ここや、白馬。ほんまトロいのぉ』

服部の口調は変わらない。
しかし、せいぜい数メートル先にいるはずの服部の姿は朧にしか判らず、その輪郭は徐々に闇に溶けつつあった。


ゾワリ。…ゾワリ。


部屋の入り口で躊躇っている僕の腕に、脚に、何かが纏わりつく。


そんな、馬鹿な…。

いや、もう否定できない。

此処には〝何か〟がいる。

常ならぬ何ものかが、淀み、留まって黒羽たちを取り込んでしまっている──。


『白馬じゃん。服部、連れてきてくれたんだ』

『おまえの親父さんの頼みや、断れるかい』

『ははは…。ありがとう、白馬……』

黒羽。服部。最後は工藤の声か。
工藤の声は特に覇気がなく、病んでいるかのように弱々しい。

『こっちに来いよ、白馬』

『なにボケッと立っとんねん』

『白馬…頼む。中に入って、この窓を開けてくれないか』


「………」


このとき、工藤の言葉を聞いて僕は理解した。漠然とではあったが。
これが現実かどうかは後で考えよう。
とにかく今はこの三人の言葉に従わなければならない───僕までとり憑かれてしまう前に。

一歩闇に踏み込むと、強い冷気に全身が包み込まれた。脚が思うように動かず、もつれて倒れそうになる。

負けるものか。
僕は懸命に堪え、前進した。

〝窓を開けろ〟と工藤は言った。絡まった蔦が僕らを呼ぶように揺れていた、あの窓を。



───せっかく集まったのに。


───おまえも来ればよいのに。


どこからか僕の行動を非難するかのような声が響く。
その中に密やかに囁くような、ひとりの男の声があった。
 


───もう少しです〝守護者〟よ…。



誰だろう。僕を〝守護者〟と呼ぶのは。

この部屋を開放するために、黒羽と工藤を解き放つために、その誰かが服部を呼び寄せ、さらには僕を此処に導いたのか。

立ち止まってはならない。
数歩足を進めるだけで息が切れる。
伸ばした指先がようやく布が触れ、硬い物に突き当たった。

窓だ。

僕は手探りでカーテンを開け、窓の鍵を解いた。両開きの窓は普段から閉めっぱなしのためなのか、軋んでなかなか開かない。外の蔦が絡まって邪魔をしているのか。

僕は念じた。黒羽の父に向かって。

さっきの声は黒羽の父に違いない。
きっと黒羽の父が黒羽を救うために、服部や僕をここへ導いたのだ。

力を貸して下さい。僕に。

黒羽を取り戻すために───!!




バァン!!




さっと眩しいオレンジの陽が部屋に差し込んだ。

ざざぁっと、辺りがざわめく。

蔦だ。窓や壁に絡んだ蔦が、まるで窓を開け放つのを嫌がるようにざわめいている。

僕は祈りながら、さらに力を込めた。


彼らを放してください。どうか──!!



窓が大きく開いた。
温かい外の空気が流れ込むと同時に、屋内の冷気が一気に薄まる。
蔦は窓から剥がれ、ところどころ千切れて散ったようだ。
僕も夕陽の熱に包まれた。

部屋の中を振り向こうとしたとき、さっきの声が再び耳にこだました。

それは甘く優しく…どこか儚い男の声。





───ありがとう…〝守護者〟よ。


───君のように強い守護を持つ友が〝あの子〟の側にいてくれて、私は嬉しい。


「あなたは、誰ですか? もしや黒羽くんの…」


───私を呼んではいけません〝守護者〟よ。


僕は目を閉じたままだった。
外があまりに眩しくて、目を開けていられなかったのだ。


───申し訳ありません…。私がこの屋敷の主人にうっかり名を呼ばれてしまったために、此処に〝場〟が出来てしまったのです。


「〝場〟…?」


───はい。そして私を装った者の悪戯で〝あの子〟まで…。

───私には、この部屋に〝場〟を留めておくのが精一杯でした。しかしそうしているうちに場の力が増し、私自身が封じられそうになってしまった。

───私は此処を動けなくなった。あとはこの屋敷の主人に近しい者を呼び寄せ、頼る以外ありませんでした。


僕は声の主の姿を見ようとした。だが目が開けられない。
無理に目を開けようとして僕は眩暈を起こし、崩れるように床に膝を着いた。


───私には見えました。窓を開け放ったあなたの背に、大きく広げられた白く輝く羽根があるのが…。

───〝守護者〟よ、本当にありがとう。どうか〝あの子〟をお護り下さい。〝あの子〟を見守ってやってほしい。私の代わりに…これからも……。


〝守護者〟だって…。僕が?

僕には羽根があるのか……。


意識が遠のいてゆく。
寒暖の差のあまりの大きさに、体も意識もついてこない。

僕はおそらく笑っていたと思う。
たとえ役回りが〝守護者〟だとしても、僕は黒羽の傍らにいることを声の主に託されたのだ。

僕は妙に納得していた。自然と受け入れられた。
少しばかり、切ない想いもあったけれど───。











─・─・─・─・─・─・─・─・─







「───というのが、僕の見た夢です」

「ほれみい。幽霊はホンマにおるっちゅうこっちゃ。正真正銘ここは〝幽霊屋敷〟なんや!」

「ちぇーっ。どうせなら俺も幽霊に会いたかったな。つまんねーの。よく覚えてねーんだもん」

僕ら四人は一階のリビングルームに移動していた。
工藤の部屋に入ったところで僕は立ち眩みを起こし、脚をもつらせ昏倒して───そして三人に階下へ運ばれた…ということのようだった。

工藤の部屋はエアコンが壊れていて熱風しか出なくなっていた。それなのに工藤も黒羽も何故そんな〝暑い部屋〟に留まっていたのかという疑念は残るのだが。

「工藤くん、体調は? 薬は効きましたか」

「ああ、ありがとう白馬。おかげで治まったよ。寝込んでるうちに部屋の温度が急に上がって、熱中症になってたんだと思う。服部もそうなんだろ」

「ちゃうわ。俺が来たときは家ん中キンッキンに冷えとったんやで。熱中症になるわけないやろが。冷凍保存されとったくせに」

「だから二階のエアコンは壊れてたんだってば。窓開けて風を通してたのに、いつの間にか閉じちゃったんだよな。服部が一度出てったあと、俺も居眠りしちゃって気が付かなくて。服部だって具合が悪かったんだろ」

「俺は単なる寝不足や。黒羽、おまえかて幽霊一歩手前やったんやで。不気味に笑いよって俺の腕をこうガシッとやな…、ほんで工藤はほぼ幽霊やったんや。足半分消えてたんちゃうかな」

あはは、と工藤と黒羽が笑う。
僕も手にしたアイスティーをストローで飲みながら微笑んだ。

不可思議な体験を、己の体調不良が招いた『夢』だったと各自が思おうとしている。
しかし───内心は実際に起こった事だと、口にはしないが四人とも考えているのではないだろうか。

おそらくは、確かめようとすることこそが禁忌なのだ。
怖れず、忌まわず、荒らさず、否まず。ただそっとしておくことが、常ならぬものたちへの畏敬につながる。
そうして人は古(いにしえ)から目に見えない幾多のものと共生してきたのだ。

だからきっと工藤は家に絡んだ蔦を、必要以上に剥がすことはしないだろう。
黒羽も、その存在を密かに信じ、感じていたとしても、亡父を困らせるようなことはしないはすだ。

服部も、僕も。

そう、僕らはこの家に招かれたのだから。

この蔦の絡まる家に。







20160730
──────────────────




※例によってもやもやっと終わらせましたスミマセン。いろいろ反故もありますがスルーします(汗)。やたらupに時間がかかってしまって…実は夜中書いてるときにミシリと不意に音がして、ちょっとドキッとしたらそのあと夜書けなくなってしまったんです…なんかコワクて。イイワケですが本当です~(*_*;
このお話で一番書きたかったのは、光る翼を広げた〝守護者〟白馬くんの後ろ姿でした。大天使ハクバル?的な(^^;)。お粗末様でしたー!


★拍手御礼
「月光という名の真実」「空耳」「同棲未満」「蔦の絡まる家」へ 拍手ありがとうございました(^_^)ノ

ほのみ様★拍手コメントありがとうございます!! 快斗くんカワイイっすよね~♪ 伝わってうれしいですっ(o^^o)ノ。


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